循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン
概要
資源獲得競争の激化とリサイクル可能な資源の海外流出、焼却・埋立てを背景に、政府は循環経済を経済安全保障と産業競争力の基盤として推進する。2026年4月に取りまとめた循環経済行動計画では、重要鉱物や金属資源の再生材供給目標、再資源化拠点への2030年までの官民約1兆円投資、動静脈連携、不適正輸出対策、再生材需要の拡大、太陽光パネルとリチウムイオン電池への対応を進める。
要点
- 循環経済を経済安全保障と産業競争力の国家戦略に位置付ける。
- 重要鉱物・金属資源の再生材供給網をマクロとミクロの両面で強化する。
- 2030年までに官民で約1兆円の投資を目指す。
- 再生材の需要拡大と、廃棄・不適正輸出の抑制を同時に進める。
概要
世界的な資源獲得競争が激化する一方、日本では国内で発生するリサイクル可能資源の多くが海外流出、焼却、埋立てに回っている。公正な競争環境、リサイクル技術、資源循環ビジネスの事業性が十分に整っていないことが主なボトルネックである。
政府は、基幹産業が必要とする質と量の再生材を安定供給する再生資源供給サプライチェーンの強靱化を、危機管理投資と成長投資の中核と捉える。回収・分別の強化、再生材使用製品の市場拡大、関連制度の見直し、官民投資、社会構造改革を組み合わせ、事業者、地方公共団体、国民を巻き込んで循環経済を国家戦略として進める。
2026年4月の循環経済に関する関係閣僚会議第4回で、循環経済行動計画が取りまとめられた。計画は、重要鉱物・金属資源のリサイクルと再生材活用を、環境保全にとどまらない経済安全保障上の喫緊の課題として扱う。
行動計画の基本枠は、世界情勢と全体構造を捉えるマクロアプローチと、時間軸・緊要度に応じて現場から着手するミクロアプローチを両輪とすることである。
主要数値
- 循環経済行動計画の取りまとめ時期
- 2026年4月
- 再生資源供給への官民投資目標の期限と規模
- 2030年までに官民で約1兆円
- グリーン鉄市場の拡大ポテンシャルの時期と規模
- 2050年に約5億トン
- 鉄スクラップ高品位化処理能力の目標
- 2030年時点で約200万トン/年
- アルミ展伸材の再生アルミ原料由来比率の目標
- 2030年時点で国内生産量の約4割
- 電解銅の再生資源由来比率の目標
- 2030年時点で国内生産の約3割
- 永久磁石原材料のリサイクル由来比率の目標
- 2030年時点で国内供給原材料の約3割
- 高度再資源化事業の認定目標
- 3年で100件以上
- グリーン購入法の循環性基準導入期限
- 2030年度までに全ての特定調達品目へ原則導入
- グリーン購入法の取組開始時期
- 2024年度から取組を開始
影響
重要鉱物や金属資源を国内外の使用済製品から回収し、再生材として安定供給できれば、輸入依存の低減と産業の自律性・不可欠性の向上につながる。鉄、アルミ、銅、永久磁石を対象に供給目標を設定することで、製造業の原料確保と脱炭素化を同時に進める効果が期待される。
再資源化拠点や動静脈連携への投資は、地域に分散する小規模な資源循環産業の事業基盤を強化し、製造業が求める質・量・コストの再生材供給を後押しする。再生プラスチックの市場形成は、自動車などのものづくり産業に新たな需要と供給の連携をもたらす。
不適正スクラップヤードや不適正輸出への対策は、生活環境の保全と国内資源の流出抑制に関わる。100以上の都道府県等が国レベルの法制度を望んでおり、全国的な規制と水際対策の強化は、自治体間の規制逃れを抑える政策運営上の意味を持つ。
再生材を公的調達や環境ラベルで評価し、消費者、地方公共団体、民間部門の選択を促すことで、再生材の需要拡大と循環性の高い製品への転換を図る。太陽光パネルの大量廃棄やリチウムイオン電池火災への対応は、将来の処理能力と安全確保にも影響する。
詳細
メタルリサイクル推進戦略では、マクロ面で再生材確保を優先する重要鉱物・金属資源を抽出し、2030年までの供給目標を設定する。ミクロ面では、都市鉱山からの回収・分別・再資源化を進め、短期的な不適正スクラップヤード対策と、中長期的な同志国連携によるe-wasteの解体・選別後のe-scrap循環を整理する。再生資源由来製品の付加価値を高めるため、国際標準づくりにも取り組む。
鉄では、高品位鉄スクラップの技術開発と設備投資、低品位品の選別・高品位化、不適正ヤード・輸出対策を進め、2030年時点で高品位化処理能力約200万トン/年を追加確保する。アルミでは合金種選別と不純物除去を進め、展伸材の国内生産量の約4割を再生原料由来とする。銅ではe-scrap・銅スクラップの処理・調達と製錬事業を強化し、電解銅の約3割を再生資源由来とする。永久磁石では、原材料の約3割をリサイクルで賄う。
再資源化拠点の形成では、収集、分別、保管、素材選別、前処理、高品質化を担う静脈側への投資を支援する。予算、初期投資支援、脱炭素化支援機構等の官民ファンド、中小企業向け融資、リスクマネーを組み合わせ、2030年までに官民で約1兆円の投資を目指す。
2025年11月に全面施行された再資源化事業等高度化法の3種類の大臣認定制度を活用し、周辺生活環境の保全を前提に、廃棄物処理法上の許可手続等を不要とする特例で高度再資源化事業を創出する。説明会、意見交換、技術・財政支援を通じ、3年で100件以上の認定を目指す。再生プラスチックでは、容器包装由来の高品質化、マテリアル・ケミカルリサイクルの技術開発、集約拠点の実証、設備導入、需要喚起、認証スキームを進める。
循環資源の海外流出を抑えるため、廃棄物処理法等の改正を検討し、使用済鉛蓄電池の適正処理と不適正輸出防止を一体的に進める。バーゼル法の対象範囲と該否判断基準を明確化し、輸出傾向の分析、水際対策、関係機関との連携を行う。
グリーン購入法では、2024年度から取組を開始し、2030年度までに基本方針の全特定調達品目へ原則として再生プラスチック利用率等の循環性基準を導入する。2025年6月改正の資源有効利用促進法における認定製品等の取扱いは2026年度に検討し、エコマーク等の第三者環境ラベルを活用する。
太陽光パネルは、2030年代後半以降に排出量が年間最大50万トン程度となるおそれがある。環境配慮設計とリユースを促進し、現時点で費用差や全国的な処理体制が構築途上である課題に対応しながら、多量廃棄を行う事業者から段階的にリサイクル規制を強化し、住宅用を含む幅広い太陽光パネルが経済合理的にリサイクルできる環境整備を進める。
リチウムイオン電池対策では、2025年10月に関係省庁連絡会議を設置し、同年12月決定の総合対策パッケージに基づき、分別回収、処理施設での検知設備導入、廃棄物処理法上の制度対応を進める。国民・事業者には「賢く選ぶ」「丁寧に使う」「正しく捨てる、そして資源循環」の3つのCを示し、2030年までに重大火災事故ゼロを目指す。