循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン|第6章生物多様性国家戦略2023-2030の実施と自然共生社会に向けた取組
概要
2022年12月採択の昆明・モントリオール生物多様性枠組を踏まえ、我が国は2023年3月に生物多様性国家戦略2023-2030を閣議決定した。2050年の「自然と共生する社会」に向け、2030年ネイチャーポジティブを掲げ、地域、企業、自治体、市民が参加する保全・回復、持続可能な利用、自然とのふれあい、国土・海洋の管理、希少種・外来種対策、国際協力、データ整備を進めている。2026年2月公表の中間評価では、多くの行動目標が進展した一方、状態目標の進展は半数弱にとどまり、生物多様性と生態系サービスは全体として回復に至っていないと評価された。
要点
- 2030年ネイチャーポジティブの実現を国家戦略の中心目標に据えた。
- 施策は進展したが、生物多様性の損失と生態系サービスの未回復が続く。
- 地域・企業・自治体・市民を巻き込む制度と活動を拡大している。
- 保全、持続可能な利用、経済、観光、国際協力を横断して取組を進めている。
概要
2022年12月のCBD-COP15第二部で昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択され、我が国は2023年3月に生物多様性国家戦略2023-2030を閣議決定した。戦略は、2050年の「自然と共生する社会」を長期目標とし、2030年までに生物多様性の損失を止めて反転させるネイチャーポジティブを短期目標に掲げる。
ネイチャーポジティブは自然保護だけでなく、気候変動対策、資源循環、産業、消費、地域づくりなどを生物多様性の保全に貢献する方向へ変革する考え方である。関係12府省庁による中間評価では、2025年6月までの実施状況を対象に、行動目標の多くが進展した一方、状態目標の進展は半数弱にとどまった。
評価では、社会経済状況に部分的な改善が見られたものの、我が国の生物多様性は全体として損失し続け、生態系サービスも回復に至っていないとされた。行動の効果発現には時間を要し、行動規模が十分でない可能性も示され、産官学民の連携による取組の継続・加速化が課題となった。
主要数値
- 長期目標の実現時期
- 2050年
- 短期目標の期限
- 2030年
- 中間評価の公表時期
- 2026年2月
- ネイチャーポジティブ宣言・賛同企業・団体数(2026年4月時点)
- 1,100を上回る企業・団体
- 生物多様性地域戦略策定自治体(2026年1月1日時点)
- 47都道府県、187市区町村
- 地域生物多様性増進法の施行時期
- 2025年4月
- 自然共生サイト数(2026年3月時点)
- 569か所
- 陸域の保護地域等の割合(2025年8月時点)
- 約21.0%
- 海域の保護地域等の割合(2025年8月時点)
- 約13.3%
- 環境省レッドリストの絶滅危惧種数(2026年3月末時点)
- 3,587種
影響
企業には、自然関連リスク・機会の分析、情報開示、持続可能な調達、自然保全への投資を経営に組み込むことが求められる。TNFDの国内アダプター企業は2026年3月時点で219社とされ、企業活動は地域課題の解決や地方創生とも接続される。
自治体や地域には、地域戦略の策定、自然共生サイトや増進活動の管理、国立公園・森林・河川・湿地・都市緑地の保全、災害防止と自然再生を一体的に進める役割が広がる。住民や企業の参加を通じ、保全活動を地域経済、教育、観光、交流へ結び付ける効果が期待される。
政策運営では、行動量だけでなく生物多様性や生態系サービスの状態を継続的に測定し、データに基づいて施策を修正することが重要になる。自然環境の損失が続く現状から、分野横断の連携、取組規模の拡大、指標と調査研究の充実が必要とされている。
詳細
制度面では、地域生物多様性増進法が2025年4月に施行され、主務大臣の基本方針、活動計画の認定、手続のワンストップ化、規制特例を導入した。30by30目標に向け、保護地域とOECMを2030年までに陸・海の30%以上とする方針の下、自然共生サイトを認定し、2025年4月から法に基づく計画認定へ移行した。生物多様性見える化システムは2025年4月に試行、同年9月に本格運用を開始し、保護地域、自治体別の面積割合、生物種目録、自然共生サイトを表示・検索できる。
企業向けには、2025年7月にネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップを取りまとめ、企業価値向上事例、自然関連リスク・機会の分析資料、モデル事業、ビジネスマッチング、情報開示支援を実施した。消費面では環境認証、持続可能な調達情報、農産物の環境負荷・生物多様性の見える化を進め、改正クリーンウッド法を2025年4月に施行して、木材の合法性確認等を強化した。
国立公園では、13公園のステップアッププログラム、高付加価値の滞在観光、利用者負担、自然体験、施設整備、多言語化、ユニバーサルデザインを進めた。2026年3月時点で入域料の事例は20件、その他の利用者負担は119件、国立公園オフィシャルパートナーは153社・団体となった。森林、農地、水路、河川、湿地、海岸、藻場・干潟でも、生態系ネットワーク、自然再生、環境教育、持続可能な利用を進めている。
希少種対策では、2026年3月時点で国内希少野生動植物種458種、国際希少野生動植物種829種類を指定し、79種を対象に58の保護増殖事業計画を策定した。外来種対策では、特定外来生物162種類を規制し、ヒアリは2025年度に36件確認された。鳥獣管理では、ニホンジカ等の捕獲、クマ対策、感染症監視、侵入防止柵等を実施し、緊急銃猟制度は2025年9月に運用を開始した。
持続可能な利用では、みどりの食料システム戦略に基づき、環境負荷低減の認定制度、有機農業、GAP、農林水産業の脱炭素化を推進した。2026年3月末時点で生産者の計画認定は3万6,000経営体以上で、補助事業等への環境負荷低減要件は2027年度から本格実施する。国際面では、生物多様性条約第7回国別報告書、30by30支援、SATOYAMAイニシアティブ、BBNJ協定などを通じて国際協力を進めた。
基礎整備では、自然環境保全基礎調査、モニタリングサイト1000、生物多様性データの収集・公開、放射線影響調査、JBO4中間提言を実施した。JBO4中間提言は2025年10月に公表され、2020年を基準年とする300個を超える指標で状態を評価し、指標開発とデータ充実の必要性を示した。