循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン|第11章令和8年度の地球環境保全施策:脱炭素と気候変動適応
概要
令和8年度は、科学的知見と観測体制を基盤に、2030年度・2035年度・2040年度の温室効果ガス削減目標と2050年ネット・ゼロの実現に向け、省エネルギー、脱炭素電源、地域脱炭素、GX、住宅・建築物、産業、物流・交通など幅広い分野で対策を進める。排出量取引制度、GX戦略地域、企業のバリューチェーン排出量の算定、カーボンフットプリント、J-クレジットなどを通じて、投資・技術開発・行動変容を促進する。森林、農地、都市緑化、ブルーカーボンなどの吸収源対策、途上国支援、国際的な排出削減協力も実施する。さらに、極端な大雨や猛暑等への適応として、熱中症対策、農林水産業の適応技術、高温耐性品種、早期警戒システムの普及を進め、フロン類とオゾン層破壊物質についてはライフサイクル管理、生産・貿易規制、観測結果の公表を継続する。
要点
- 科学的観測と排出量検証を脱炭素政策の基盤に据える。
- 地域・企業・生活者を巻き込み、脱炭素化を経済成長と結び付ける。
- 技術実証、交通転換、森林・海洋の吸収源対策を並行して進める。
- 緩和策と適応策を国内施策および国際協力の両面で展開する。
概要
令和8年度の施策は、地球温暖化対策を中心に、研究・監視、排出削減、吸収源、国際協力、気候変動適応、オゾン層保護を一体的に扱う構成となっている。IPCCへの拠出や国内研究支援、人工衛星・航空機・船舶・地上観測によって科学的知見を蓄積し、各国の排出量報告とGOSAT観測に基づく推計値を比較して透明性を高める。
脱炭素政策は、1.5℃目標と2050年ネット・ゼロを見据え、省エネルギー、再生可能エネルギーや原子力などの脱炭素電源、公共部門・地域の脱炭素化、生活様式の転換を同時に進める方針である。制度の継続性と予見性を高め、排出削減、経済成長、イノベーションを併走させることが全体の軸となる。
GXでは、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を目指し、法改正とGX2040ビジョンを踏まえた地域制度、排出量取引、分野別投資を進める。対策対象はエネルギー起源CO2に限らず、メタン、一酸化二窒素、代替フロン、森林・農地・都市・海洋の吸収源にも及ぶ。
主要数値
- 2030年度の温室効果ガス削減目標(2013年度比)
- 46%削減
- 2035年度の温室効果ガス削減目標(2013年度比)
- 60%削減
- 2040年度の温室効果ガス削減目標(2013年度比)
- 73%削減
- 政府全体の2030年度削減目標(2013年度比)
- 50%削減
- 政府全体の2035年度削減目標(2013年度比)
- 65%削減
- 政府全体の2040年度削減目標(2013年度比)
- 79%削減
- 土地利用変化による温室効果ガス排出量の世界総排出量に占める割合
- 2割
- 早期警戒システム導入促進の官民連携協議会への参画企業数(2026年2月時点)
- 60社以上
- 本格稼働した排出量取引制度
- 2026年度から
- 政府実行計画の閣議決定時期
- 2025年2月
影響
企業にとっては、自社だけでなくバリューチェーン全体の排出量を算定・削減する対応が競争力や市場での評価に関係する。中堅・中小企業には、自治体、金融機関、経済団体が地域単位で伴走支援を行い、「知る」「測る」「減らす」の段階的な取組を後押しする。
生活者には、再生可能エネルギー、省エネ住宅、電動車、公共交通、低炭素製品などの選択肢が広がる。カーボンフットプリントや削減貢献量等の見える化は、環境性能を調達・購入の判断につなげ、デコ活は適応と緩和を含む行動変容を促す。
地域には、再生可能エネルギーの地産地消、脱炭素先行地域、浮体式洋上風力、水素供給、森林資源の循環利用、ブルーカーボンなどを通じた産業・雇用・地域経済への波及が期待される。一方、再生可能エネルギーの導入では環境への配慮と地域との共生が前提となる。
政策運営では、政府と地方公共団体がそれぞれ実行計画を通じて排出削減を実施し、国際的にはJCM、REDD+、AP-PLAT等を活用して途上国の緩和・適応、人材育成、情報基盤整備を支援する。国内の猛暑や大雨への備えと海外協力を結び付ける枠組みとなる。
詳細
実施方法は、観測データの蓄積・利活用、気候変動予測、影響評価、研究支援を組み合わせる。GOSAT、GOSAT-2、GOSAT-GW、GCOM-W、GCOM-Cを用いた衛星観測に加え、排出量推計技術の国際標準化を進める。脱炭素分野では、2025年5月改正法とGX2040ビジョンに基づき、GX戦略地域制度、2026年度から本格稼働した排出量取引制度、分野別投資戦略を運用する。
地域・建築物では、脱炭素先行地域と重点対策加速化事業、デコ活、公共施設への再生可能エネルギー、ペロブスカイト太陽電池、自家消費型設備、地域のエネルギー面的利用を進める。ZEH・ZEBの普及、ZEH定義の見直し、省エネ改修、HEMS・BEMS・FEMS、省エネ診断、ライフサイクルカーボン算定、低炭素型建材、省エネトップランナー制度も対象となる。
産業・技術では、DXを活用した省CO2化、設備導入、企業間のScope3削減、GaN・CNF製品、廃プラスチックや稲わらを活用する触媒、水素の地産地消型サプライチェーン、CCUS・カーボンリサイクル、人工光合成、浮体式洋上圧入CCS、モニタリング技術の開発・実証を行う。交通では、電動車、蓄電池のリユース、充電・水素充てん設備、ゼロエミッション船、水素燃料電池鉄道車両、CNP、SAF、モーダルシフト等を促進する。
吸収源対策では、再造林、特定苗木、国産材利用、建築物の木造化・木質化、農地管理、都市緑化を進める。ブルーカーボンでは、マングローブ林、塩性湿地・干潟、海草藻場・海藻藻場の保全・再生・創出に加え、沖合で生産・育成した海藻の吸収・貯留・算定評価の可能性を検討する。
適応策は、気候変動適応法と適応計画に基づき、影響評価、各府省施策への組込み、熱中症対策、農林水産業の高温耐性品種・技術、地方公共団体等への情報提供を進める。2023年6月設置の官民連携協議会を通じ、アジア太平洋地域で早期警戒システムの導入を強化する。フロン類はライフサイクル全体で排出を抑制し、オゾン層破壊物質と代替フロンの生産・貿易規制、観測・監視結果の毎年公表を行う。