循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン|第8章水・土壌・海洋・大気環境の保全と再生に向けた取組
概要
水循環基本法や各種環境法令に基づき、流域管理、水質・地下水・土壌の汚染対策、湖沼・閉鎖性海域・海洋ごみ・放射性物質の監視、大気汚染や騒音対策を横断的に進めた。水質やPM2.5などで高い環境基準達成率が見られる一方、湖沼の水質、光化学オキシダント、地下水・土壌汚染、海洋ごみなど課題も残る。制度改正、モニタリング、施設整備、地域・企業・国際連携を組み合わせ、良好な環境を地域活性化や生活の質向上にも活用する方針が示された。
要点
- 水環境政策は流域単位の管理と地域主体の協働を重視している。
- 2024年度のBOD又はCODの環境基準達成率は88.6%だった。
- 湖沼、地下水、海洋ごみ、光化学オキシダントには継続的な対策が必要である。
- 監視・規制・施設整備・地域活用を組み合わせ、環境保全と地域の持続可能性を両立させている。
概要
対象分野は、健全な水循環の維持・回復、水環境の保全、土壌環境の保全、海洋環境の保全、大気環境の保全、媒体横断的対策、良好な環境の創出、基盤的取組に及ぶ。施策は、環境基準や排水規制などの規制、常時監視や調査研究、汚水処理施設等の整備、地域・企業・住民との協働、アジア地域との連携を組み合わせて進められている。
水循環分野では、2021年6月改正の水循環基本法と2024年8月閣議決定の水循環基本計画に基づき、2025年度に水循環アドバイザー制度、災害時地下水利用ガイドラインの改訂、官民の情報発信を実施した。
水質の評価では、2024年度の健康項目の公共用水域環境基準達成率が99.1%、BOD又はCODが88.6%であった。河川は93.9%、湖沼は50.8%、海域は78.2%で、湖沼の達成率が低い状況が続いた。
大気分野では、2024年度のPM2.5環境基準達成率が一般局99.5%、自排局100%だった一方、光化学オキシダントは一般局・自排局とも達成率0%で、課題の種類によって進捗が異なる。
主要数値
- 健康項目の公共用水域環境基準達成率(2024年度)
- 99.1%
- BOD又はCODの環境基準達成率(2024年度)
- 88.6%
- 地下水概況調査の対象井戸(2024年度)
- 2,721本
- 地下水概況調査で基準超過した井戸(2024年度)
- 153本、5.6%
- 汚水処理人口普及率(2024年度末)
- 93.7%
- 汚水処理未普及人口
- 約780万人
- 閉鎖性海域の対象数
- 88の閉鎖性海域
- 土壌汚染判明事例(2024年度)
- 1,194件
- 海洋汚染発生確認件数(2025年)
- 455件
- 光化学オキシダント注意報等の発令延日数(2025年)
- 47日、16都府県
影響
住民にとっては、水道水、河川、地下水、海岸、大気、騒音など身近な環境の安全性や快適性に関わる。PFOS・PFOAの水質基準化、PFAS情報の更新、放射性物質の継続監視、石綿飛散防止などは、健康リスクの把握と情報提供を通じて生活上の判断を支える。
地方公共団体には、流域水循環計画の策定、汚水処理施設の選択・更新、地下水汚染や地盤沈下の監視、海洋ごみの回収、騒音・悪臭対策など、多様な実務が求められる。国の助言、補助、ガイドライン、共同検討会は、地域の実情に応じた実施を支える。
企業には、排水・ばい煙・VOC・水銀などの排出管理、PFAS等の情報把握、海洋プラスチックの発生抑制、環境情報の開示、環境配慮型技術の導入が求められる。水辺や里海を活用した観光、地場産業、企業連携は、環境保全を地域経済や魅力向上につなげる契機となる。
政策運営上は、環境媒体ごとの規制だけでなく、窒素・りんの循環、気候変動、海洋酸性化、生物多様性、災害対応を横断して扱う必要がある。2024年9月に持続可能な窒素管理に関する行動計画を策定し、国際協力やデジタル技術、分析精度管理を含む継続的な管理体制を整えている。
詳細
流域では、地方公共団体等へのアドバイザー派遣、勉強会、計画策定・実施への技術助言を行った。下水処理水の再利用、雨水の貯留浸透・再利用、河川空間とまち空間を一体化する「かわまちづくり」、市民団体等による水質調査や全国水生生物調査も進めた。2025年11月のグッドプラクティス塾と2026年2月のCDPウォーター・環境省共催セミナーでは、民間の水循環活動や情報開示を促進した。
環境基準は公共用水域の健康項目27項目、地下水28項目を設定し、要調査項目は15項目を追加して222項目とした。相模湖、津久井湖、八千代湖の類型指定・暫定目標を2025年10月に見直し、生活環境基準の柔軟な運用に向けた検討も開始した。
汚水処理では、2026年度の概成を見据え、浄化槽、下水道、農業集落排水施設などを整備している。2025年7月の調査で約100自治体が集合処理から個別処理への転換意向を示し、2026年3月に最適化と広域連携の検討会を設置した。2024年度は約1,700市町村中約1,300市町村で浄化槽整備が進められた。
閉鎖性海域では、東京湾・伊勢湾・瀬戸内海を対象にCOD、窒素、りんの総量削減を行い、瀬戸内海では栄養塩類管理制度を運用した。2025年11月1日までの瀬戸内海の埋立て免許・承認は5,027件、13,782.7haであり、里海づくりでは2022〜2024年度に延べ41団体、2025年から8地域を支援した。
土壌汚染対策では、2024年度に1,680件の調査を行い、要措置区域は累計1,093件、形質変更時要届出区域は6,506件となった。農用地では基準値以上検出等地域が累計7,572ha、対策事業等完了面積が7,137haで、面積の94.3%に相当した。
海洋ごみ対策では、地方公共団体への財政支援、漁業者等が回収した漂流・海底ごみへの都道府県当たり最大1,000万円の補助、実態調査、マイクロプラスチック監視、回収・発生抑制技術の普及を実施した。2023年10月には関係14府県と環境省が瀬戸内海プラごみ対策ネットワークを立ち上げた。
大気分野では、PM2.5の注意喚起実施件数は2025年度0件、VOC総排出量は2000年度比で約6割削減され、燃料蒸発ガス回収機能付き給油所の認定は2026年3月末までに737件となった。電動車は、乗用車を2035年までに新車販売100%、8t以下の商用車を2030年までに20〜30%とする目標等に基づき普及を促進した。
監視・対応では、全国308地点で空間放射線量率を測定し、2025年の海上環境関係法令違反送致件数は649件だった。ALPS処理水は2023年8月に海洋放出が開始され、トリチウム濃度を1,500ベクレル/ℓ未満に希釈する方針の下、海水・魚類・海藻類を測定し、IAEA等との分析機関間比較も実施した。