循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン|第15章GFC国内実施計画に基づく包括的な化学物質対策
概要
2023年9月に採択された化学物質に関するグローバル枠組み(GFC)を踏まえ、2025年4月策定のGFC国内実施計画に基づき、製造・使用・循環利用・廃棄までのライフサイクル全体で環境リスクを最小化する取組を進める。法制度の運用、PRTR・SDSの見直し、農薬・水銀・ダイオキシン類への対応、情報共有・モニタリング・リスク評価、子どもの健康調査、PFASなど懸念課題への対応を実施する。企業の環境配慮設計や安全な代替品、製品含有化学物質情報の伝達も促進し、国内外の連携、人材育成、アジア地域支援を強化する。加えて、低濃度PCBの処理期限対応や旧軍毒ガス弾等の環境調査を進める。
要点
- 化学物質管理をライフサイクル全体で進める国内実施計画を軸に、法制度・情報・評価・国際協力を連動させる。
- 製品情報の共有、モニタリング、リスクコミュニケーションを通じて、多様な主体の自主管理と合理的なリスク削減を促す。
- PFAS、内分泌かく乱作用、複合影響、PPCPs、AMRなど個別の懸念課題について、物質ごとの知見収集と評価を進める。
- 低濃度PCBは令和9年3月末の処理期限に向け、関係機関と連携し、適正処理体制の確保に努める。
概要
2023年9月採択のGFCが示す戦略的目的に沿い、2025年4月策定のGFC国内実施計画に基づいて、国際的な観点から環境分野の化学物質管理を推進する。
取組の中心は、化学物質の製造から使用、循環利用、廃棄までを一体として捉え、環境リスクの最小化に向けた法的枠組み、制度的メカニズム、能力構築を整えることである。
GFCの戦略目標BからEに対応し、情報に基づく意思決定、懸念課題への対応、安全な代替品と持続可能な解決策、資源動員と協力を政策の各段階に組み込む。
制度運用だけでなく、政府、地方公共団体、事業者、研究機関、市民社会、産業界、学術界などが情報を共有し、役割に応じて管理と対話に参加する構成となっている。
主要数値
- GFC採択時期
- 2023年9月
- GFC国内実施計画策定時期
- 2025年4月
- エコチル調査の対象規模
- 約10万組の親子
- エコチル調査の詳細調査対象
- 約5,000人の子ども
- 低濃度PCBの処理期限
- 令和9年3月末
- 旧軍毒ガス弾等に関する閣議了解
- 2003年6月
- 旧軍毒ガス弾等に関する閣議決定
- 2003年12月
- G7札幌気候・エネルギー環境大臣会合
- 2023年
影響
事業者には、PRTR制度やSDS制度の見直し・適切な運用を通じて化学物質の自主的管理の改善を促し、製品含有化学物質や再生材に関する情報伝達、環境配慮設計、安全な代替品、在庫管理への取組を広げる方向が示されている。
行政や地域に対しては、排出・移動量、環境モニタリング、生体試料などのデータを正確性と信頼性に配慮して公開し、リスク評価や災害時の被害防止に向けた平時からの備えに活用する方針が示される。
市民や子育て世帯に関しては、リスクコミュニケーション、環境教育、化学物質アドバイザーによる人材育成、子どもの健康と環境に関する全国調査を通じ、情報理解と安全・安心な子育て環境の実現を支える。
アジア地域や途上国には、モニタリングネットワーク、日中韓の政策対話、技術支援、国際共同作業を通じて、化学物質対策能力の向上と制度・手法の調和を図る。
負の遺産への対応では、低濃度PCBの期限内処理と、旧軍毒ガス弾等による被害の未然防止を進めることで、保管・処理や環境調査に関わる機関の連携を強化する。
詳細
化学物質審査規制法では、一般化学物質等のスクリーニング評価と優先評価化学物質のリスク評価を継続し、関係省の合同審議会で進捗確認と進行管理を行う。水銀は、水銀による環境の汚染の防止に関する法律に基づく措置を講じ、条約の決議と法施行後5年の点検結果を踏まえて見直す。
農薬取締法に基づき、生活環境動植物の被害防止や水質汚濁に関する登録基準を設定する。既登録農薬は国内使用量の多いものから再評価し、長期ばく露影響のリスク評価導入と、生態リスクが高い農薬の河川水モニタリングを進める。ダイオキシン類は専用法に基づく対策を継続する。
製品情報では、chemSHERPAやIMDSに加え、製品含有化学物質と資源循環情報を扱うCMPの構築が官民協調で進んでいる。廃棄物処理・再生材製造事業者も含むRMPについては、その構築に向けた取組が進んでいる。業界ガイダンスの活用も促進する。
リスク評価では、優先評価化学物質から第二種特定化学物質まで段階的に対象を絞り、文献情報やモニタリング結果による初期評価も行う。結果に基づき、ライフサイクル各段階の管理方法を整合させ、資源循環、拡大生産者責任、環境配慮設計を推進する。
懸念課題は個別に対応する。PPCPsは生態毒性と環境中の存在状況の知見を充実させて環境リスク評価を進め、AMRは抗微生物剤の環境中残留状況の基礎情報を集め、人の健康と環境中の生物への影響を調査する。プラスチック添加剤等は条約策定に向けたINC等の交渉動向を踏まえて対応する。
PFASについては、エコチル調査、人体ばく露量モニタリング、環境モニタリングで知見を集め、必要に応じて関係省庁や地方自治体と共有する。内分泌かく乱作用ではEXTEND2022の試験法を用いた評価を加速し、NAMs、QSAR、トキシコゲノミクス、AOP等の開発・活用を検討する。
複合影響評価では、化学物質の構造類似性や作用機序の同一性に着目して知見収集と試行的評価を行い、行政向けガイダンスを作成して既存のリスク評価体系に知見を提供する。ナノマテリアルやアドバンストマテリアルについても知見を充実させる。
エコチル調査では、約10万組の親子を対象とする長期出生コホートを追跡し、学童期検査、約5,000人の子どもを対象とする詳細調査、生体試料の化学分析、遺伝子解析を継続する。
企業の取組を後押しするため、ESG投資等を通じて機関投資家が企業の環境面への配慮を投資判断で評価する動向を踏まえ、先進的な化学物質管理を行う企業が適正に評価される評価指標等の枠組みを構築する。政策対話、人材育成、環境教育、正確なリスク・便益情報の共有を通じて、関係主体の連携を強化する。
PCB廃棄物では保管事業者への普及啓発と関係機関の連携を進める。低濃度PCBは令和9年3月末の処理期限を見据え、期限内処理と適正処理体制の確保に取り組む。旧軍毒ガス弾等については、2003年6月の閣議了解と同年12月の閣議決定を踏まえ、環境調査と毒ガス情報センターによる情報収集・周知を継続する。