循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン|第16章令和8年版環境白書にみる政府の総合的な環境施策
概要
第6章第1節は、第六次環境基本計画の進捗点検と環境保全経費の取りまとめを示す。続く各節では、企業・金融・税制によるグリーンな経済システム、ネット・ゼロ・循環経済・ネイチャーポジティブに向けた研究開発と社会実装、環境情報や環境影響評価、国際協力、地域づくり・人づくり、環境保健、公害紛争処理・環境犯罪対策を扱う。官民・自治体・市民・国際機関の連携、データと科学的知見の活用、資金支援、予防と救済を組み合わせ、環境保全と持続可能な地域・経済社会を支える施策を進める。
要点
- 環境配慮を企業経営、金融、税制に組み込む。
- 研究、データ、評価を政策と社会実装へ接続する。
- 国際協力と地域主体の参加を環境施策の実行力にする。
- 環境保全、健康被害の救済、公害の予防を継続する。
概要
第6章は、環境基本計画の実行を起点に、経済システム、科学技術、国際的取組、地域づくり・人づくり、環境情報、環境影響評価、環境保健、公害紛争・環境犯罪対策を一体的に整理する。対象は脱炭素、循環型社会、自然共生、安全確保に加え、環境負荷の低減、健康被害の救済、生活環境の保全に及ぶ。
第六次環境基本計画は2024年5月に閣議決定され、2025年度には中央環境審議会が関係府省へのヒアリング等により、重点戦略や個別施策の進捗状況を点検する。環境省は政府予算のうち環境保全に関係する予算を環境保全経費として取りまとめる。
施策の基盤として、環境関連情報の公開、科学的知見に基づく政策立案、研究開発の評価、環境影響評価、国際的な監視・観測、健康被害への対応、公害紛争処理などを組み合わせ、事前のリスク管理と実施後のフォローアップを行う。
主要数値
- 第六次環境基本計画の閣議決定時期
- 2024年5月
- 環境基本計画の施策進捗点検年度
- 2025年度
- 環境研究・技術開発の推進戦略の決定時期
- 2024年8月
- 環境影響評価法改正法の成立・公布時期
- 2025年6月
- GX戦略地域への脱炭素電源整備支援の開始年度
- 2026年度
- 地方公共団体実行計画制度改正法の成立時期
- 2024年6月
- 地方公共団体実行計画制度改正法の施行時期
- 2025年4月
- UNEA7シナジー決議の採択時期
- 2025年12月
- 追加的なプラスチック汚染をゼロにする目標時期
- 2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロ
- オープンデータ基本指針の改正時期
- 2024年7月
影響
企業には、環境経営、環境デュー・ディリジェンス、グリーン購入、環境配慮型製品・サービスの展開が求められる。環境情報の開示とESG情報への理解を通じ、企業価値の向上と環境分野への投資を結び付ける方向が示される。
金融機関や地域金融機関には、再生可能エネルギー、省エネ設備、バリューチェーンや地域の脱炭素化に資する融資を支える役割が生じる。自治体には、再生可能エネルギー、交通、資源循環、防災を地域計画と結び付け、地域の実情に応じて実施することが期待される。
住民、企業、NPO、学校、研究機関などには、環境教育、ESD、自然体験、ICT、対話と協働を通じた参加機会が広がる。多様な主体の学び合いは、持続可能な生活への行動変容だけでなく、地域コミュニティの対応力や課題解決力の向上にもつながる。
国際面では、日本の環境技術やインフラの海外展開が相手国・地域の環境改善と日本の経済成長に関係する。G7、G20、ASEAN、国際機関との政策対話や資金協力は、脱炭素、プラスチック汚染、水銀対策、国際的な環境ルール形成への関与を支える。
詳細
グリーンな経済システムでは、サービサイジングやシェアリングエコノミーなどの環境ビジネスを促進し、環境関連税制の効果を調査・分析する。金融面では、持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則、GXフューチャー・コンソーシアム、GGX Finance Summit、ESG金融ハイレベル・パネル、ESGファイナンス・アワード・ジャパンを活用する。脱炭素化支援機構はリスクマネーを供給し、GX推進機構は債務保証・出資等を担う。リース料補助、融資への利子補給、グリーンボンド調達費用への補助、グリーンファイナンスポータルによる情報発信も行う。
研究開発では、ネット・ゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブ、安全・安心に関する統合研究を進め、自然科学だけでなく人文・社会科学を含む総合知を活用する。複数課題を同時に解決する技術やトレードオフを抑える技術に重点を置き、AI、IoT、量子、先端材料、モニタリング、DX、経済安全保障に資する技術を研究開発へ活用する。
研究成果の社会実装に向け、規制・規制緩和、経済的手法、自主的取組、特区、環境スタートアップ支援、技術評価などを組み合わせる。産学官、府省、国と地方、異分野、アジア太平洋との連携を進め、ウェブサイト、シンポジウム、広報誌、見学会で成果を発信する。PDCAに基づき、事前・中間・事後・追跡評価を組み合わせて計画や資源配分を見直す。
データ基盤では、サプライチェーン各段階のデータ連携、Scope3算定ルールの共通化、排出量情報プラットフォーム、EEGSの機能拡充、TNFDデータファシリティ、国立環境研究所の環境情報基盤を進める。企業、投資家、金融機関、研究者などによる環境情報の利用を支援し、政策形成や行動変容に活用する。
国際協力では、JPRSI、都市間連携、JCMを通じて質の高い環境インフラを海外展開する。GCF、GEF、ADB、EBRD、UNIDO等の資金・機関と連携し、ASEAN諸国への脱炭素政策形成支援や第2回グローバル・ストックテイクに向けた協力を行う。2025年12月に採択されたUNEA7シナジー決議の実施を主導し、ESCAP、ADB、UNEP等とアジア太平洋シナジーレポートを取りまとめる。
地域政策では、地域循環共生圏、ローカルSDGs事業、地域プラットフォーム、地域トランジションを支援する。脱炭素先行地域と重点対策加速化事業を継続し、2026年度からGX戦略地域の脱炭素電源等の整備を支援する。LAPSS、REPOS、EADAS、自治体排出量カルテ、地域経済循環分析などを計画・事業形成に活用し、公共避難施設や防災拠点への自立・分散型エネルギー設備の導入も進める。
国土管理では、森林、農地、都市の緑地・水辺、河川、海をつなぐ生態系ネットワークを形成し、森林整備、環境保全型農業、持続可能な交通、廃棄物・生活排水施設の維持を進める。森林サービス産業、森業、木づかい運動、地域材・木質バイオマスの活用、災害に強い森林づくり、景観・歴史的環境の保全も対象とする。
環境影響評価では、建替事業と洋上風力発電事業について2025年6月成立・公布の各改正法を踏まえ、新制度運用を進め、EADASを通じて地域の環境情報を提供する。
環境保健では、放射線に関する健康管理・健康不安対策、健康被害の補償・救済、環境を経由した健康影響の予防に取り組む。具体的には、被ばく線量の把握・評価と健康影響調査、被認定者への補償給付・公害保健福祉事業、花粉症・熱中症・黄砂・電磁界・紫外線等の予防情報提供を進める。
公害紛争処理法に基づき、あっせん、調停、仲裁、裁定を実施し、地方公共団体の公害苦情処理には指導や情報提供を行う。環境犯罪対策では、産業廃棄物の不法投棄等を取り締まり、社会情勢に応じた法令見直しと事前抑止を進める。