循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン|第14章水・土壌・海洋・大気環境の保全と再生に向けた施策
概要
環境省の施策は、水循環基本法と水循環基本計画を基盤に、安定した水供給、上下水道の持続可能な再構築、流域単位の総合管理を進める。水質、地下水、水道、湖沼、閉鎖性海域、土壌、海洋ごみ、海洋汚染、大気汚染、騒音・振動などを対象に、規制、監視、調査研究、施設整備、地域連携、国際協力を組み合わせる。PFAS、薬剤耐性菌、マイクロプラスチック、気候変動、災害、光害など新たな課題にも対応し、デジタル技術や媒体横断的な窒素管理を活用して、健康、生態系、地域の暮らしを支える環境管理を強化する。
要点
- 水循環を軸に、環境媒体をまたぐ統合的な保全を進める。
- 監視・規制・施設整備・地域連携を組み合わせて環境リスクに対応する。
- PFASやマイクロプラスチックなど新たな課題の知見収集を強化する。
- 国際協力と技術展開を通じ、アジアの水・大気環境改善にも貢献する。
概要
水循環基本法に基づき、良好な水循環と水環境の維持・回復に向けた普及啓発を行う。2024年8月に閣議決定した水循環基本計画では、代替性・多重性による安定した水供給、施設再編と官民連携による上下水道の再構築、流域総合水管理を進める方針を示している。
施策の対象は、水質、地下水・地盤、水道、湖沼、閉鎖性海域、土壌、海洋、大気、生活環境に及ぶ。環境基準や排水規制などの制度運用に加え、常時監視、調査研究、施設整備、災害対応、地域活動、アジアとの連携を組み合わせ、健康被害の防止と生態系の保全を同時に目指す構成となっている。
水環境では、底層溶存酸素量、病原体、薬剤耐性菌、化学物質などの知見を蓄積し、気候変動や生態系変化を踏まえた管理へ広げる。大気環境では、健康保護に加え、短寿命気候汚染物質の削減と気候変動対策の相乗効果も考慮する。
主要数値
- 水循環基本法の施行年
- 2014年
- 水循環基本計画の閣議決定時期
- 2024年8月
- 温暖化対策の目標時期
- 2050年カーボンニュートラル
- 底層溶存酸素量の環境基準項目導入年
- 2016年
- 水道水の要検討項目に位置付けられたPFASの物質数
- 水道水の要検討項目に位置付けられた8物質
- 湖沼水質保全計画の指定湖沼数
- 11の指定湖沼
- WEPAの対象国数
- アジア地域13か国
- 瀬戸内法改正後のフォローアップ時期
- 2022年4月の改正瀬戸内法施行後5年をめど
- CCS事業の実施見込み時期
- 2030年代初頭
- 土壌制度小委員会の設置時期
- 2024年7月
影響
国民には、安全な水道水の供給、水質・大気汚染や石綿等による健康リスクの低減が期待される。水辺活動や星空観察などへの参加を通じ、環境保全への関心を高める機会も広がる。
企業には、排水、VOC、水銀、化学物質、プラスチックなどの排出抑制や自主的取組が求められる。環境省は、水環境改善モデル事業、プラスチックのライフサイクル全般にわたる資源循環、デジタル技術の活用、環境技術の海外展開支援などを進める。
地域・自治体には、湖沼や海岸の保全、地下水汚染対策、海洋ごみの回収、石綿情報の整備、事故・災害対応で多様な主体をつなぐ役割が広がる。政策運営では、リアルタイム監視、分析精度管理、行政手続のオンライン化を進める。
詳細
水質管理では、国と都道府県等が公共用水域・地下水を放射性物質を含めて常時監視する。工場・事業場排水、生活排水、市街地・農地などの非特定汚染源に対し、排水規制、水質総量削減、農薬使用規制、下水道・農業集落排水施設・浄化槽の整備を進め、暫定排水基準は必要に応じて見直す。地下水では有害物質の地下浸透規制、貯蔵施設の構造基準・点検、硝酸性窒素等の負荷低減を進める。地下水採取を抑制しつつ、地中熱・地下水熱の利用や技術的基準の見直しを検討する。
水道では、水源から蛇口までの一体的なリスク管理と水質基準の見直しを行い、PFAS、水質事故、自然災害による汚染に備える。PFASについては、水道水の要検討項目に位置付けられた8物質について、実態把握等を進める。湖沼では11指定湖沼の計画に基づく規制・下水道整備を進め、琵琶湖では水質改善と外来動植物対策を実施する。東京湾、伊勢湾、瀬戸内海では、よりきめ細かな海域の状況に応じた水環境管理を検討し、自然海岸、藻場、干潟、生物共生型港湾構造物の保全・再生・創出、覆砂や深掘跡の埋め戻しを進める。
土壌では、土壌汚染対策法に基づく調査・対策を進め、ダイオキシン類や農用地の汚染にも対応する。海洋ごみでは、流出量・分布の把握、インベントリ推計、生態系影響の研究、自治体等への回収・処理支援、海洋環境整備船による漂流ごみ回収、国際的な監視手法の調和とデータベース利用を進める。海洋汚染では、投入処分の許可、水バラスト設備の審査、流出油の防除を行い、海底下CCSの運用指針を整備する。
大気では、固定・移動発生源対策、PM2.5環境基準の再評価、光化学オキシダント・VOC対策、自動車排出ガス規制の検討を進める。そらまめくんによる速報値の提供、越境汚染・放射性物質の監視、AI等を含む機動的なモニタリングを推進する。石綿、水銀、酸化エチレンなどの有害物質対策、騒音・振動、悪臭、光害への調査・規制・技術支援も行う。媒体横断では、適正施肥、肥料・下水汚泥資源の利用、窒素酸化物等の排出回避、下水処理場の運転管理を進め、環境管理手続のオンライン化、分析精度管理、災害時の自治体連携を強化する。