循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン|第10章環境危機への総合対応と持続可能な社会への移行
概要
第六次環境基本計画を軸に、環境保全、地域循環共生圏、グリーン経済、研究開発、国際協力、地域づくり、環境保健、公害紛争処理まで、政府の環境施策を広範に整理している。環境保全経費は2026年度に3兆2,835億円。環境ビジネスは2024年に市場規模約136兆円、雇用規模約296万人へ成長した。脱炭素先行地域、JCM、ESG金融、環境技術の実証、国際的なシナジー形成などを通じ、気候変動、生物多様性損失、汚染の同時解決と、地域・企業・金融・国際機関の連携を進めている。併せて、環境影響評価制度の改正、福島の健康管理、公害被害者の救済、環境犯罪の取締り、環境情報の公開を実施している。
要点
- 環境保全を国民のウェルビーイングと新たな成長の基盤に位置付けている。
- 地域・企業・金融・研究機関・国際機関をつなぎ、環境課題の統合的解決を進めている。
- 脱炭素、資源循環、生物多様性保全を技術開発と地域実装に結び付けている。
- 環境被害の救済、健康不安への対応、情報公開、国際ルール形成も施策対象となる。
概要
気候変動、生物多様性の損失、汚染という三つの危機を背景に、第六次環境基本計画は、環境保全を通じた現在と将来の国民一人一人の「ウェルビーイング/高い生活の質」を最上位の目的とした。自然資本を経済社会活動の基盤と捉え、環境収容力を守りながら経済社会を成長させる循環共生型社会を掲げている。
環境省は、科学的不確実性があっても対策を遅らせない予防的な取組方法を環境政策の原則として実施している。地域では、経済・社会・環境を統合する地域循環共生圏を、SDGsの実践と地方創生の基盤として展開している。2024年度のSDGs取組自治体割合は目標60%に対し実績66.5%となった。
政府全体では環境保全経費を取りまとめ、2026年度は3兆2,835億円となった。グリーン購入、環境配慮契約、環境表示、環境マネジメント、環境報告、ESG金融、税制、研究開発、監視観測、国際協力を相互に組み合わせ、環境政策を制度・市場・技術・地域の各層で進めている。
主要数値
- 環境保全経費(2026年度)
- 3兆2,835億円
- SDGs取組自治体割合の目標(2024年度)
- 60%
- SDGs取組自治体割合の実績(2024年度)
- 66.5%
- 大阪・関西万博の開催期間
- 2025年4月13日から10月13日までの184日間
- 環境ビジネス市場規模(2024年)
- 約136兆円
- 環境ビジネス雇用規模(2024年)
- 約296万人
- 環境ビジネス市場規模の2000年比
- 約2.2倍
- 環境ビジネス雇用規模の2000年比
- 約1.5倍
- JCM事業規模の目安
- 最大1兆円程度
- JCM排出削減・吸収量目標(2030年度までの累積)
- 1億t-CO2程度
影響
企業には、環境配慮型製品の調達基準、カーボンフットプリントや環境表示、環境デュー・ディリジェンス、温室効果ガス・自然関連情報の開示が求められる方向が示されている。環境ビジネスの市場と雇用の拡大は、環境保全と経済活性化、国際競争力、雇用確保を結び付ける効果を持つ。
地方公共団体には、再生可能エネルギー、公共施設のレジリエンス、地域資源の循環利用、住民参加を組み合わせた地域運営が期待される。地域循環共生圏は、地域課題を解決し続ける自立した地域と、地域間で支え合う自立・分散型社会の形成を目指す。
国際面では、JCM、環境インフラ、技術協力、多国間基金、国際環境条約、G7・G20・ASEAN等の枠組みを通じ、日本の環境技術と制度形成への関与を広げる。気候変動、生物多様性、汚染を別々に扱わず、政策間の相乗効果を高めることが国際協力の軸となっている。
住民には、環境情報へのアクセス、環境教育、放射線に関する健康管理、公害被害の補償・救済、苦情処理の窓口が提供される。公害紛争処理や環境犯罪取締りは、被害の解決と環境規制の実効性を支える。
詳細
グリーン購入法と環境配慮契約法に基づき、国や独立行政法人等が環境物品の調達と排出削減に配慮した契約を進めた。基本方針には非化石電力鋼材、繊維製品のカーボンフットプリント、認定プラスチック使用製品等を反映し、環境表示ガイドラインも2026年3月に改定した。エコマークは2026年3月31日時点で対象商品類型78、認定商品5万7,704となった。
研究開発では、蓄電池、水素、バイオものづくり、次世代半導体、CCUS、人工光合成、気候予測、衛星観測等を推進した。地域共創・セクター横断型事業では2025年度に40件の技術開発・実証を実施し、GOSAT-GWは2025年6月に打上げ、同年10月に定常運用へ移行した。
地域脱炭素では、2025年度までに脱炭素先行地域102地域、重点対策加速化事業171地方公共団体を選定した。2026年度以降2030年度までの5年間を新たな実行集中期間とし、再エネ導入、ZEB・ZEH、EV、蓄電池、公共施設の自立・分散型エネルギー設備を支援する。
国際協力では、JCMについて2030年度までの累積1億t-CO2程度、2040年度までの累積2億t-CO2程度の削減・吸収量を目標とした。環境インフラ海外展開プラットフォームは2026年3月時点で659団体が参加し、脱炭素インフラや案件形成を支援している。多国間資金では、第8次GEF増資期間の規模が53.3億ドル、日本の拠出は総額6.38億ドルとなった。
環境影響評価法の改正法と海洋再生可能エネルギー整備法の改正法は2025年6月に成立・公布された。2026年3月末までに922件で環境影響評価手続が実施され、2025年度には24件が開始、19件が完了した。福島では県民健康調査、線量測定、甲状腺検査、相談支援と情報発信を継続している。
環境教育・協働では、全国8か所のESD活動支援センターと環境パートナーシップオフィスを展開し、2025年度に環境教育・ESD実践動画26件を選定した。地球環境基金は392件の助成要望に対し161件、総額約5.7億円を決定した。環境調査研修所は29コース31回を実施し、修了者は1,354名だった。
公害・環境保健では、2025年度に公害等調整委員会へ26件が新規受付され、計62件が係属し、26件が終結した。2024年度の公害苦情は6万6,931件で、典型7公害は4万7,622件だった。2025年中の環境事犯検挙は5,290事件、廃棄物事犯は4,578事件で、不法投棄は50.4%を占めた。