循環経済行動計画に基づく今後の我が国の循環経済ビジョン|第9章包括的な化学物質対策の現状と制度・国際協力

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概要

化学物質による環境汚染と健康・生態系への影響を抑えるため、環境実態調査、化学物質審査規制法やPRTR制度に基づく管理、ダイオキシン類・農薬・PFAS等への対応、リスク評価とばく露モニタリング、子どもの健康調査、情報共有を進めている。国内では制度見直しや規制対象物質の追加、排出基準の運用、事業者への情報伝達を実施し、国際的にはGFC、POPs条約、水俣条約、OECD等を通じて規制調和、能力構築、モニタリング協力を推進している。過去の化学剤・有機ヒ素化合物による負の遺産についても、地域住民への支援、地下水監視、汚染除去、毒ガス情報の一元管理を継続している。

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要点

  • 化学物質管理を環境残留の把握から規制、情報公開、国際協力まで連続的に進めている。
  • 環境中の化学物質濃度は、全体として横ばいまたは漸減傾向を示している。
  • ダイオキシン類の排出総量は削減目標量を下回ったが、基準超過や指導は残っている。
  • 新たな懸念物質や複合影響への評価手法と科学的知見の整備を進めている。
  • 国内制度の運用を国際枠組みや地域協力、企業の自主的管理と結び付けている。

概要

産業活動や日常生活では多様な化学物質が利用され、焼却などに伴って非意図的に発生する物質もある。管理が不十分な場合、環境汚染を通じて人の健康や生活環境に有害な影響を及ぼし得るため、製造・使用・廃棄までのライフサイクル全体を対象に対策が組み立てられている。

対策の基盤は、化学物質環境実態調査、化学物質審査規制法、化学物質排出把握管理促進法、ダイオキシン類対策特別措置法、農薬取締法などで構成される。調査結果は規制対象物質の追加、リスク評価、排出量把握、管理改善の基礎資料として利用されている。

実態把握は初期環境調査、詳細環境調査、モニタリング調査の三体系で行われる。初期調査は指定物質の検討、詳細調査は優先評価化学物質のリスク評価、モニタリング調査はPCB等の残留性・蓄積性・長距離移動性が懸念される物質の経年把握を担う。

制度運用は、事前審査、排出量の届出と公開、環境基準・排出基準の適用、農薬登録基準の設定、段階的なリスク評価によって、物質ごとの性質とばく露経路に応じた管理を行う構造となっている。

国民、事業者、行政、研究者などが情報を共有し意思疎通を図るリスクコミュニケーションも対策の一部であり、データベース、ガイドブック、政策対話、専門家派遣を通じて意思決定を支援している。

国内対策は、2023年に採択された化学物質に関するグローバル枠組み(GFC)の国内実施計画や、POPs条約、水俣条約、OECDの活動と接続し、規制・評価・監視・能力構築を国際的に連携させている。

主要数値

2025年度の化学物質環境実態調査体系
3体系
2024年度初期環境調査の対象と検出
対象10物質(群)のうち5物質(群)を検出
2025年度の初期環境調査対象
6物質を調査
2024年度詳細環境調査の対象と検出
対象4物質(群)の全4物質(群)を検出
2025年度の詳細環境調査対象
3物質(群)を調査
2024年度モニタリング調査の対象と検出
11物質(群)のうち10物質(群)を検出
2025年度の新規化学物質事前審査
255件(うち低生産量新規化学物質124件)
PFHxS関連物質の指定に関する閣議決定
2025年12月
PRTR届出データの公表
2026年2月
2024年度ダイオキシン類の環境基準超過地点
公共用水域水質29地点、公共用水域底質1地点

影響

住民にとっては、環境中の残留状況、事業所ごとの排出データ、食品や環境からの平均摂取量、子どもの発達と環境要因に関する情報へアクセスしやすくなる。これにより、不安への対応と、地域での対話や合意形成の基盤が強化される。

企業には、新規化学物質の事前審査、PRTR届出、輸入禁止製品への対応、廃棄物処理業者への情報伝達、海外規制への適合など、サプライチェーン全体での情報管理と安全配慮が求められる。一方、環境配慮設計や代替物質、自主管理の取組は、投資家から評価される可能性がある。

地域行政や現場には、基準超過地点の確認、排出施設への命令・指導、土壌汚染地域の対策、土地改変時の環境調査、地下水モニタリングなど、地域特性に応じた継続的な監視と対応が必要となる。

政策運営では、測定結果と健康・生態リスク評価を規制や制度見直しへ反映し、内分泌かく乱作用、複合影響、ナノマテリアル、医薬品等、既存制度だけでは評価が難しい課題への対応力を高めることが重要になる。

国際協力の面では、日本の制度・測定技術・過去の経験をアジア太平洋地域や途上国の能力構築に活用する一方、EUやアジア諸国の規制動向を国内企業と共有し、国際的な規制調和と経済活動への対応を進めることにつながる。

詳細

ダイオキシン類について、2024年度の一日平均摂取量は体重1kg当たり約0.41pg-TEQで、耐容一日摂取量の4pg-TEQ/kg bw/日を下回った。2024年の排出総量は92g-TEQ/年で、削減目標量176g-TEQ/年を下回った。

一方、2024年度のダイオキシン法に基づく排出基準超過は、大気基準適用施設27件、水質基準適用事業場1件の計28件だった。法に基づく命令は大気関係6件・水質関係0件、命令以外の指導は大気関係520件・水質関係24件だった。土壌汚染対策地域は2024年度末までに6地域が指定され、対策計画に基づく事業が完了している。

農薬は農薬取締法に基づく登録が必要で、作物残留、土壌残留、生活環境動植物への被害、水質汚濁に関する基準を環境大臣が定める。2025年度は、生活環境動植物の被害防止に係る基準を14農薬、水質汚濁に係る基準を9農薬について設定または改正し、長期ばく露の評価手法も検討した。

2025年度には、環境リスク初期評価の第24次取りまとめを行った。健康・生態リスク初期評価は6物質、健康リスク初期評価は1物質、生態リスク初期評価は3物質を対象とし、詳細評価候補や追加情報の収集が必要な物質を抽出した。

優先評価化学物質は2026年4月時点で221物質が指定されている。2025年度までに65物質で一次評価の評価II・評価IIIに着手し、48物質で評価II等の結果を審議した。

リスクコミュニケーションでは、2025年度に化学物質アドバイザーを延べ22件派遣し、政策対話を2025年7月と2025年12月に開催した。PRTRガイドブック、かんたん化学物質ガイド、ケミココ、J-CHECK、NITE-CHRIPなどを情報基盤として提供している。

エコチル調査は2010年度から約10万組の親子を対象に実施され、約10万人から抽出した約5,000人には詳細調査を行っている。全国15地域のユニットセンターが追跡を担い、2024年度から13歳以降の調査を開始し、12歳の学童期検査も継続している。

化学物質審査規制法の見直しでは、2017年改正の施行後5年を経過した場合の見直し規定を受け、2024年9月に審議体制を設置した。合同会合で2025年6月13日に案がおおむね合意され、2025年7月22日に環境大臣への答申が行われた。

2025年4月策定・公表のGFC国内実施計画に基づき、政府内の連絡会議を通じて包括的な化学物質管理を進めている。POPs条約では2025年にクロルピリホス、中鎖塩素化パラフィン、LC-PFCA関連物質を廃絶対象へ追加する決議がなされ、国内制度への反映を審議した。

水俣条約は2013年10月に採択され、2017年8月に発効した。2024年12月には水銀使用製品の製造規制を実施するため施行令を改正し、沖縄県辺戸岬と秋田県男鹿半島の大気中水銀等のモニタリングを継続している。

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