米の価格高騰を検証し、安定供給へ制度・生産政策を再構築

概要

令和6(2024)年夏以降、米は生産量が需要量を下回り、民間在庫が減少する中で、災害情報や購買増加を契機に品薄感が強まり、令和7(2025)年には小売価格が前年の約2倍に高騰した。政府は備蓄米の売渡し、輸入入札の前倒し、流通実態の緊急調査を実施し、統計と需給見通しも見直した。今後は、食糧法改正の検討による報告制度や民間備蓄、需要に応じた生産、輸出・米粉需要の拡大、水田政策の転換などを通じ、生産性向上と柔軟な供給体制の構築を目指す。

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要点

  • 価格高騰は、生産不足だけでなく、需要見通しと実績の乖離、流通把握や備蓄放出の遅れが重なって拡大した。
  • 備蓄米・輸入米の活用に加え、統計、需給予測、流通報告を改め、危機への対応力を高める方向が示された。
  • 供給基盤の持続には、農地・施設・技術の効率化と、主食用以外を含む需要開拓の両立が必要とされた。
  • 食糧法改正の検討と水田政策の見直しにより、需要拡大と需要に応じた生産を軸とする政策体系への転換が進められる。

概要

我が国の主食である米では、令和6(2024)年夏の端境期に、生産量が需要量を下回り、民間在庫が減少した。南海トラフ地震臨時情報の発表、地震や台風に伴う購買量の増加が品薄感を強め、令和7(2025)年に入って供給不安が広がった。

令和7(2025)年5月の小売価格は前年同月の約2倍となり、新米が本格的に出回り始めた同年9月以降も横ばいで推移した。相対取引価格は令和6(2024)年産が前年産比64.4%上昇し、令和7(2025)年産も令和8(2026)年2月時点で前年産比44.2%上昇した。

背景には、人口減少などによる需要の減少傾向を前提に生産・需要を見通していた一方、実際にはインバウンド、精米歩留りの悪化、家計購入量の増加などで需要が伸びたことがある。令和5/6(2023/24)年以降は生産量が需要量に不足し、民間在庫の取り崩し、集荷競争、新規調達やスポット市場での高値調達が価格を押し上げた。

主要数値

令和7(2025)年5月の米小売価格の前年同月比
約2倍
令和6(2024)年産の相対取引価格上昇率
64.4%
令和7(2025)年産の相対取引価格上昇率(令和8(2026)年2月時点)
44.2%
SBS米の輸入枠上限
10万t
令和7(2025)年の民間貿易による米輸入量
9万6,834t
令和4(2022)年産の生産量の前年産比減少
31万t減少
需要実績と需要見通しの乖離
23万t、39万t
一般競争入札による政府備蓄米の売渡し数量
約31万t
随意契約による政府備蓄米の売渡し数量
約28万t
加工原材料用政府備蓄米の売渡し数量
約5万t

影響

消費者は小売価格の上昇と品薄感に直面し、米の購入行動が変化した。家計購入量の増加は需要を押し上げ、国産米の需給逼迫を通じて価格形成にも影響した。卸売業者や小売・中食・外食事業者にとっては、調達ルートの多様化や高値でのスポット調達が必要となり、安定価格での販売が難しくなった。

輸入量の増加が続けば、国産の主食用米などの需要が減り、国内生産に影響する懸念がある。一方、米粉、輸出、酒造好適米などの需要を伸ばせれば、生産者の作付判断を多様化し、国内の生産基盤と関連産業を支える余地が広がる。

政策運営では、需要・生産・在庫を玄米ベースだけでなく精米ベースでも把握し、流通の多様化を反映した情報公開と迅速な備蓄運用が求められる。農業者が減少する中、少数の農業者がより多くの生産を担う構造への転換は、食料安全保障と地域農業の維持に直結する。

詳細

政府は令和7(2025)年6月に米の安定供給等実現関係閣僚会議を開催し、同年8月には価格高騰の要因と対応を検証した。令和7(2025)年3月に2回、4月に1回行った一般競争入札では、集荷業者向けに政府備蓄米約31万tを売り渡したが、同年5月上旬時点で小売業者や中食・外食事業者までの流通は約1割だった。そこで5月26日から随意契約を開始し、5月30日、6月11日、6月20日にも対象を広げ、約28万tを売り渡した。加工原材料用には8月1日から約5万tを売り渡した。

ミニマム・アクセス米では、年間77万玄米tの無税輸入枠を管理し、令和7(2025)年度の一般MA米の買入入札を同年6月に前倒しした。年間10万tを上限とするSBS輸入も、1回目の見積合わせを同年6月に前倒しした。政府備蓄米の在庫水準低下に備え、輸入機会を供給手段として活用する位置付けである。

流通の緊急調査では、令和6(2024)年産について、農協系統など集荷業者への生産者出荷が前年産比34万t減少する一方、生産者の直接販売などは48万8千t増加した。食糧法に基づく全届出業者の仕入れ・販売・在庫調査は回答率が約2割にとどまり、令和7(2025)年9月から、年間取扱数量300t以上で未報告の業者へのフォローアップ調査を実施した。

統計調査では、令和7(2025)年産から、過去30年の平年収量と比べる作況指数に替えて、直近5年中3年の平均収量と比べる作況単収指数を公表する。主食用収穫量のふるい目幅も1.70mmから生産者使用ベースの1.80〜1.90mmへ改め、白未熟粒、着色粒、胴割粒などの割合も公表する。生産者使用のふるい目幅ベースの令和7(2025)年産収穫量は718万1千tで前年産比10.2%増、主食用作付面積は136万7千haで8.6%増、10a当たり収量は526kgで1.3%増だった。令和7(2025)・8(2026)年産でデータ収集を試行し、令和9(2027)年産から本格導入を目指す。

需給見通しは、人口動態、直近の1人当たり消費量、インバウンド、精米歩留りを幅として反映し、とう精数量や歩留り実績で検証する方式に改めた。令和8(2026)年3月公表の見通しでは、同年6月末の民間在庫は玄米ベース221〜234万t、精米ベース197〜208万tとされた。令和8/9(2026/27)年の需要量は玄米ベース696〜711万t、供給量計932〜945万t、令和9(2027)年6月末の民間在庫は221〜249万tの見通しである。

食料システム法に基づく合理的な費用を考慮した価格形成に向け、令和7(2025)年12月からコスト指標作成等委員会で検討し、令和8(2026)年3月に米のコスト指標のイメージを公表した。生産性向上策として、農地の大区画化、共同利用施設の再編・合理化、直播栽培、再生二期作、高温耐性・多収品種への転換、流通共同化、長期契約による直接取引を推進する。

米粉では、令和6(2024)年度の需要量が5.6万tとなり、令和2(2020)年度より2万t増加した。輸出では、米、パックご飯、加工米飯、米粉、米粉製品の令和7(2025)年輸出量が約4.8万tで、直近5年間に約2.3倍となった。基本計画は令和12(2030)年に35.3万tの輸出量を目標とし、日本食の販促、商流・サプライチェーン構築、海外展開、大規模輸出産地の形成を進める。

食糧法の改正を検討しており、米穀取扱事業者の届出対象を広げ、在庫数量などの定期報告制度を創設することとしている。備蓄の保有目的を需要増による供給不足にも広げ、政府備蓄を補完する民間備蓄制度を創設することも検討している。また、需要減少を前提とした生産調整の規定を廃止し、生産者の需要対応努力、政府による輸出などを通じた需要拡大と需要対応生産の促進を明記することとしている。水田政策は令和9(2027)年度から、作物ごとの生産性向上支援へ根本的に見直す方向である。酒造好適米についても、生産者と酒造組合の情報交換や、生産性向上に取り組む生産者への支援を行う。

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