米の価格高騰を検証し、安定供給へ制度・生産政策を再構築|第2章持続的な農業発展と食料自給力の確保に向けた取組

概要

原油価格・物価高騰や農産物価格の上昇、農業者の減少・高齢化、農地・農業水利施設の老朽化、気候変動や病害虫のリスクを背景に、我が国の農業は生産性と供給基盤の同時強化を迫られている。令和6(2024)年の農業総産出額は10兆7,801億円、生産農業所得は3兆9,649億円となった一方、農業経営体数や基幹的農業従事者数は減少した。政府は、経営継承、新規就農、法人化、雇用・外国人材の確保、農地の集積・集約化、農業基盤整備、スマート農業、収入保険、流通合理化、女性参画、知的財産保護、安全対策、GAP、動植物防疫などを組み合わせ、持続可能な農業構造と食料自給力の確保を目指している。

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要点

  • 農業の持続性には、生産性向上と生産基盤の維持を同時に進める必要がある。
  • 令和6(2024)年の農業総産出額は10兆7,801億円だった。
  • 令和7(2025)年の農業経営体数は83万6千経営体、基幹的農業従事者数は103万6千人だった。
  • 農地集積、スマート農業、担い手育成、防疫・安全対策を政策横断で推進している。

概要

我が国では地域の気候や土壌に応じて米、野菜、果実、畜産などが生産されているが、原油価格・物価高騰、農産物価格の変動、気候変動、農業者の減少・高齢化が生産と経営に影響している。農業政策の中心課題は、限られた農地、人材、生産資材を有効に組み合わせ、土地生産性と労働生産性を高めながら食料自給力を維持することである。

令和6(2024)年の農業総産出額は10兆7,801億円で前年より13.6%増加した。米は2兆5,524億円で68.0%増、野菜は2兆5,510億円で9.8%増、果実は1兆112億円で5.4%増、畜産は3兆6,654億円で1.3%減だった。

令和6(2024)年の生産農業所得は3兆9,649億円で前年より20.5%増加した。全農業経営体の1経営体当たり農業所得は168万6千円、主業経営体では494万2千円だった。

産出額や所得は価格上昇の影響で増えたが、農業経営体と従事者の減少が続いており、経営規模の拡大、法人化、技術導入、農地の集積・集約化を通じた構造転換が不可欠となっている。

令和7(2025)年の農業経営体数は83万6千経営体で、令和2(2020)年より22.3%減少した。基幹的農業従事者数は103万6千人、平均年齢は67.7歳で、65歳以上が72万1千人、全体の69.6%を占めた。

後継者を5年以内に確保している経営体は3割未満で、新規就農者も減少傾向にある。農業経営・就農支援センターによる相談、継承計画、マッチング、就農資金、機械・施設導入支援などが、次世代の担い手確保策として位置付けられている。

主要数値

令和6(2024)年の農業総産出額
10兆7,801億円
農業総産出額の前年増減率(令和6(2024)年)
13.6%増加
米の産出額(令和6(2024)年)
2兆5,524億円、前年より68.0%増加
農業経営体数(令和7(2025)年)
83万6千経営体
基幹的農業従事者数(令和7(2025)年)
103万6千人
農地面積(令和7(2025)年)
424万ha
担い手への農地集積率(令和6(2024)年度)
61.5%
令和12(2030)年時点で確保すべき農地面積目標
412万ha
生産方式革新実施計画の認定件数(令和8(2026)年3月末時点)
120件
開発供給実施計画の認定件数(令和8(2026)年3月末時点)
50件

影響

消費者にとっては、米や野菜などの価格上昇が農業産出額を押し上げる一方、気象災害、病害虫、家畜伝染病による供給変動への備えが食料の安定確保に直結する。収入保険や農業共済は、生産者の経営継続を支え、結果として市場への供給を下支えする。

地域では、農地の受け皿となる法人や集落営農が規模拡大し、農地・水路の保全、雇用創出、加工・販売、地域産品のブランド化を担う。農地の減少や荒廃、農業水利施設の老朽化が進む地域ほど、担い手への集積と住民を含む共同管理の重要性が高まる。

令和7(2025)年の副業的・準主業経営体は農業経営体の72.5%、経営耕地面積の30.3%を占めた。多様な農業者を含む地域全体の生産活動が、農地と農村社会の維持に影響している。

企業には、スマート農業、農業支援サービス、加工・物流、知的財産、輸出などへの参入機会が広がる一方、農業法人の収益性や借入依存度には課題があり、経営管理能力、資金調達、人材確保の強化が求められる。

政策運営では、農地・生産基盤の数量確保だけでなく、データ活用、行政手続のオンライン化、防疫、安全、環境、女性参画を一体的に進め、地域ごとの担い手と資源の実情に応じて施策を運用することが必要である。

詳細

担い手確保では、経営継承に必要な機械・施設の導入や修繕、法人化、継承計画の策定、経営移譲希望者とのマッチングを支援する。令和5(2023)年の新規就農者は4万3,460人で、49歳以下は1万5,890人だった。農業高校は全都道府県、農業大学校は41道府県に設置され、令和6(2024)年度の農業大学校卒業生は1,755人、卒業後就農者は834人だった。

法人経営体数は令和7(2025)年に3万3,819経営体となり、令和2(2020)年から10.1%増加した。団体経営体は農産物販売金額の42.0%、経営耕地面積の28.3%を占めた。収入保険の加入経営体は令和7(2025)年に10万3,441経営体で、青色申告経営体の29.8%だった。

農地政策では、農地バンクが分散した農地を借り受け、担い手へ再配分する。令和6(2024)年度の借入面積は6万3千ha、転貸面積は7万2千ha、新たに担い手へ集積された面積は2万5千haだった。令和7(2025)年の農地面積は424万ha、令和6(2024)年度の耕地利用率は90.4%である。

農地の荒廃対策では、令和6(2024)年度に新たに発生した荒廃農地が2万4千ha、再生利用された面積が8千haで、令和7(2025)年3月末の荒廃農地面積は25万7千haだった。農業振興地域制度と農地転用許可制度により農用地を確保し、令和12(2030)年の農地面積目標を412万haとする。

生産基盤整備では、令和6(2024)年の水田232万haのうち、30a程度以上の区画整備済みが161万ha、1ha以上の大区画整備済みが15万ha、汎用化面積が112万haだった。老朽化した基幹的農業水利施設は、標準耐用年数を超過した施設が59.4%、基幹的水路が49.5%を占め、令和6(2024)年度の突発事故は1,886件だった。

スマート農業では、農業用ドローンによる農薬等の散布面積が令和6(2024)年度に119.6万haとなった。スマート農業技術活用促進法に基づき、生産方式革新実施計画と開発供給実施計画を認定し、税制・金融支援を行う。農業支援サービス事業者は令和7(2025)年に6,316経営体となった。

雇用・安全対策では、農業の雇用者数は令和7(2025)年に54万人、農業分野の外国人材は6万4,826人だった。令和6(2024)年の農作業事故死亡者数は287人、熱中症による死亡者数は59人で、令和9(2027)年1月以降に製造される乗用型トラクタには道路走行時のシートベルト着用が義務付けられる。

女性参画では、令和6(2024)年度の女性認定農業者は1万1,589経営体、認定農業者に占める割合は5.5%だった。令和12(2030)年度の目標は、農業委員30%、農協役員20%、土地改良区理事10%である。GAP認証取得経営体は令和6(2024)年度に7,414経営体だった。

防疫では、令和7(2025)年シーズンの高病原性鳥インフルエンザが令和8(2026)年3月末時点で15道府県23事例、およそ552万羽の殺処分対象となった。豚熱は累計25都県102事例、約44万頭が殺処分対象となっている。薬剤耐性対策では、令和9(2027)年の畜産分野の動物用抗菌薬使用量を令和2(2020)年比15%削減する目標を掲げる。

研究・付加価値向上では、AIや育種ビッグデータによる品種開発、農業データ連携基盤WAGRI、スタートアップ支援、GI登録、知的財産保護を進める。令和8(2026)年3月末の国内GI登録産品は167産品で、農林水産省知的財産戦略2030や、令和8(2026)年10月稼働を目指す次期オンライン申請システムにより、競争力と行政運営の改善を図る。

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