米の価格高騰を検証し、安定供給へ制度・生産政策を再構築|第4章食料安全保障と持続的な食料システムの構築

概要

食品アクセスの確保、食品産業の持続的発展、合理的な費用を考慮した価格形成、食品安全、食料消費と食・農のつながりに関する取組を整理する。買物困難者や経済的困窮者への支援、物流・技術革新、取引適正化、リスク管理、国産農産物の消費拡大、食育・和食文化の継承を通じ、平時と不測時の双方で持続的な食料供給を目指している。

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要点

  • 食品アクセスの課題は、物理的・経済的な両面で広がっている。
  • 食品産業の持続性を、農業、物流、技術、規格の連携で高める。
  • コストを反映した価格形成と取引適正化を制度面から進める。
  • 科学的な食品安全管理と、食育・地産地消による消費者参加を強化する。

概要

人口減少や過疎化、所得分布の変化を背景に、食料品の購入・飲食に不便を感じる人や、経済的理由で十分な食料を得られない人への対応が課題となっている。政策は、地域の支援体制、流通サービス、フードバンク、こども食堂を組み合わせ、平時から食品アクセスを確保する方向で進められている。

食品産業は国産農林水産物の主要な仕向先であり、農業と消費者をつなぐ安定供給の基盤である。食品産業の発展に向けて、農林漁業者との安定取引、流通合理化、環境負荷低減、先端技術、JASなどの規格・認証、事業承継が一体的に扱われている。

生産資材や原材料のコスト上昇が続く中、持続的な供給には、生産から加工、流通、小売までの費用を把握し、売り手と買い手、消費者が納得できる価格形成を実現することが重要である。食品安全では、科学的知見に基づくリスク評価・管理・コミュニケーションを通じ、農場から食卓までの安全確保を図る。

主要数値

食料品アクセス困難人口(2020年)
全国で904万3千人
フードバンク数(2026年3月末時点)
318団体
こども食堂数(2025年調査)
全国で少なくとも1万2,602か所
国産食用農林水産物の食品製造業・外食産業向け割合(2020年)
64.6%
食品等事業者の計画認定件数(2025年度)
54件
食料品製造業の労働生産性(2024年度)
7,386千円/人
農業生産資材価格指数(2026年2月)
127.7
農業交易条件指数(2026年2月)
110.3
食中毒発生件数(2025年)
1,172件
食品リコール公開件数(2025年3月末時点)
6,319件

影響

買物困難者や経済的困窮者に対する移動販売、支援バス、配送、食品寄附、食事提供の拡充は、地域で食料を得る機会を支える。災害などの不測時には、サプライチェーンの維持・強化とプッシュ型支援が、国民への供給継続に直結する。

食品産業と農林漁業者の安定取引、物流の標準化・デジタル化、モーダルシフト、AI・ロボットの活用は、供給力と生産性の向上に寄与する。認定制度や融資・税制・設備供用の支援は、企業の事業継続や地域農業との資源循環を後押しする。

コストを踏まえた取引が定着すれば、農業者や食品事業者の経営基盤が支えられ、長期的な供給の維持につながる。一方、消費者にとっては価格上昇への理解と家計負担の両方が課題となるため、価格の背景を伝える取組が求められる。

食品安全のリスク管理、表示、トレーサビリティ、リコール対応は、健康被害の抑制と消費者信頼の維持に影響する。地産地消、国産食材の選択、食育、和食文化の継承は、地域経済や食料システムへの消費者参加を広げる。

詳細

農林水産省は2023年度以降、「食品アクセスの確保に関する支援策パッケージ」を関係省庁と取りまとめ、全国キャラバンなどで地方公共団体や民間事業者への活用を促している。2011年度以降は市町村アンケートとポータルサイトによる情報発信を行い、買物支援バス、移動販売車、ドローン配送など地域ごとの対策を進めている。長崎県五島市では自動飛行型ドローンが医薬品、日用品、食品を離島へ配送し、注文はSNSに加えて電話やFAXでも受け付けている。

フードバンクやこども食堂には、未利用食品の提供、企業とのマッチング、政府備蓄米の無償交付などを組み合わせている。食品寄附ガイドラインは2024年12月に策定され、三重県の「みえ〜る」では2026年3月末までに945件、約41tの食品マッチングが成立した。こども食堂への備蓄米無償交付は2020年度から始まり、2024年11月には食育活動を支援するフードバンクも対象に加えられた。

食品等の持続的な供給を促す法律に基づき、農林漁業者との安定取引、流通合理化、環境負荷低減、消費者の選択支援を計画的に行う事業者の認定制度を設け、2025年10月に関連規定を施行した。認定計画には長期低利融資、税制特例、設備等の供用を行う。物流では2025年4月から荷主・物流事業者などに効率化の努力義務を課し、2026年4月から一定規模以上の事業者に中長期計画と定期報告を求める。

農林水産品・食品の物流に関する官民合同タスクフォースは、2030年度に向け、パレット標準化、デジタル化、商慣習の見直し、モーダルシフト・中継輸送を重点項目とした。卸売市場ではコールドチェーンや中継共同物流に必要な施設整備を支援する。技術面では、食品製造業の生産性向上に向けAIやロボットの研究開発、実証、普及を支援し、フードテックの官民投資ロードマップも検討している。

JASは品質だけでなく、取扱方法、生産方法、試験方法なども対象とする制度として活用を進めている。2025年度にはアーモンドミルクや日本茶普及推進専門員などの規格制定に向けた整理、トマト加工品や地鶏肉の見直しを行った。有機同等性では、2025年5月にEUとの畜産物・酒類、同年10月に米国・英国との酒類を対象に追加し、英国の畜産物についても2026年度からの発効に向け手続を進めた。

価格形成では、農業生産資材価格指数が2026年2月に127.7、農業交易条件指数が110.3となった。食料システム法に基づき、売り手・買い手双方に協議や協力の努力義務を課し、判断基準、指導・助言、勧告・公表などを定める。2026年1月には米穀、野菜、豆腐、納豆、飲用牛乳を指定飲食料品等とする省令を公布し、2025年10月からフードGメンが取引実態を調査している。

食品安全は、食品安全委員会によるリスク評価、厚生労働省・農林水産省・消費者庁などによるリスク管理、関係者へのリスクコミュニケーションで構成される。2025年度には有害化学物質43件、有害微生物15件を調査し、農薬32成分の再評価を開始した。カンピロバクター対策では、鶏肉の中心温度を75℃以上で1分以上加熱することなどを啓発している。

食品表示の適正化、栄養成分表示、アレルギー情報、米トレーサビリティ、内部記録の普及を進めている。2021年6月から食品リコール届出が義務化され、2025年3月末時点の食品表示法に基づく自主回収の公開件数は6,319件で、回収理由はアレルゲンが3,297件と最多だった。

食料消費では、2024年の1人1日当たりエネルギー摂取量が1,859kcal、2025年の1人当たり1か月食料消費支出が名目約3万1千円、実質約2万5千円となった。2024年の食品類EC市場規模は3兆1,163億円、EC化率は約4.5%、中食市場売上高は11.3兆円だった。物価高への対応として、商品券、電子クーポン、地域ポイント、お米券、食料品の現物給付などが行われている。

国産農産物の消費拡大に向け、米では2024年度の1人当たり年間消費量が53.4kgとなり、「おにぎりプロジェクト」を展開している。野菜は83.3kgで、1人1日350gの目標に近づける「野菜を食べようプロジェクト」を実施する。地産地消に取り組む消費者は34.9%、買物や外食で国産食材を選ぶ消費者は23.6%だった。

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