米の価格高騰を検証し、安定供給へ制度・生産政策を再構築|第5章みどり戦略で進む環境と調和した食料システム

概要

気候変動や資材調達の不安定化を背景に、農林水産省は2021年策定の「みどりの食料システム戦略」と2022年施行の「みどり法」に基づき、農林水産業の生産力と持続性の両立を進めている。2050年の農林水産業CO2ゼロエミッション化など14のKPIを掲げ、環境負荷低減の認定・支援、技術開発、有機農業、温室効果ガス削減、食品ロス削減、資源循環、再生可能エネルギー、環境負荷の見える化を展開する。農村の多面的機能については、共同活動や直接支払制度を通じた維持と国民理解の促進を図っている。

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要点

  • みどり戦略は、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する政策方針である。
  • 2050年に向け、CO2ゼロエミッション化や化学農薬使用量(リスク換算)50%低減など14のKPIを掲げる。
  • 2023年度の食品ロスは464万tで、推計開始以降の最少となった。
  • 環境負荷低減と農村の多面的機能維持を、技術、制度、地域活動の組合せで進めている。

概要

気候変動により高温、干ばつ、大規模洪水などの異常気象が頻発し、世界的な食料生産の不安定化や穀物価格の高騰と暴落が生じている。食料や農業生産資材の多くを輸入に依存する我が国では、安定調達が困難になるリスクが高まっている。

我が国の年平均気温は過去100年当たり1.44℃上昇し、世界平均の0.79℃を上回る。農林水産業では高温による収量減少や品質低下が発生している。

農林水産分野の2023年度の温室効果ガス排出量は5,103万t-CO2で、我が国全体の約5%を占める一方、メタンの約8割、一酸化二窒素の約5割を同分野が占める。

みどり戦略は、2050年までに、農林水産業のCO2ゼロエミッション化、化学農薬の使用量(リスク換算)50%低減、輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料の使用量30%低減、耕地面積に占める有機農業の取組面積25%(100万ha)など14のKPIを実現する方針である。

施策は調達、生産、加工・流通、消費の各段階を対象とし、行動変容、既存技術の普及、革新的技術・生産体系の開発と社会実装を組み合わせて進められている。

主要数値

みどりの食料システム戦略の策定年月
2021年5月
みどり法の施行年月
2022年7月
2050年目標:化学農薬使用量(リスク換算)の低減
50%低減
2050年目標:輸入原料や化石燃料を原料とした化学肥料使用量の低減
30%低減
2050年目標:有機農業の取組面積
耕地面積の25%(100万ha)
農林水産分野の温室効果ガス排出量(2023年度)
5,103万t-CO2
農林水産分野の温室効果ガス排出割合
我が国全体の約5%
みどり法の環境負荷低減事業活動認定経営体数(2026年3月末時点)
3万6千経営体以上
みどり法の基盤確立事業認定計画数(2026年3月末時点)
105の事業計画
化学農薬使用量(リスク換算)の低減(2024農薬年度、2019農薬年度比)
約19.9%低減

影響

生産者には、環境負荷低減事業活動の認定を通じて税制特例や融資特例などの支援措置が講じられる。環境保全型農業直接支払制度では、化学肥料・化学農薬の低減と温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動が支援対象となる。

食品企業には、持続可能な原材料調達、環境・人権への配慮、食品ロス削減、食品リサイクル、再生プラスチック利用などへの対応が求められている。官民のプラットフォームや情報共有の場も設けられている。

消費者は、「みえるらべる」による温室効果ガス削減への貢献度の表示、有機食品の利用、てまえどりや食べきりの呼び掛けを通じて、環境負荷低減や食品ロス削減に関する情報に接する機会を得ている。

地域では、有機農業の団地化、バイオマス利用、再生可能エネルギー、学校給食、農村文化の継承などが進められている。農業・農村は、水源涵養、洪水防止、生態系保全、景観形成、文化伝承などの多面的機能を発揮する。

政策運営では、気候変動への緩和と適応、環境負荷の削減、生産性の確保、食料システムの各段階における取組を並行して進めることが課題となっている。

詳細

みどり法では、環境負荷低減事業活動を都道府県が、基盤確立事業を国が認定し、税制特例や融資特例を講じる。2026年3月末時点で、環境負荷低減事業活動は3万6千経営体以上、基盤確立事業は105計画、特定区域は34道府県93区域である。

宮城県山元町では、2012年度からICTを活用した環境制御装置を備えた大型ハウスを整備し、東日本大震災で約95%の栽培施設が被害を受けた地域で、センシングに基づく加温・施肥、省エネ資材、紫外線ランプを組み合わせている。

環境保全型農業直接支払制度は、化学肥料・化学農薬を原則5割以上低減する取組と、温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動を支援する。2024年度の実施面積は9万1千haで、2027年度を目途に制度見直しが検討されている。

農業分野では2030年度に2013年度比1,176万t-CO2を削減する計画を掲げ、省エネルギー化、バイオ炭、中干し期間の延長、畜産由来メタン削減を進める。電動草刈機と自動操舵システムは2030年に普及率各50%を目標とする。

化学農薬使用量(リスク換算)は、2024農薬年度に2019農薬年度比で約19.9%低減した。化学肥料は2023年に68万t(NPK総量、生産数量ベース)となり、2016年比で約25%低減した。

有機農業の取組面積は2023年度に3万4,500ha、耕地面積比0.8%で、2030年目標は6万3千haである。オーガニックビレッジは2025年度に154市区町村、学校給食で有機食品を利用する市区町村は2024年度に328となった。

食品ロスは2023年度に464万tで、家庭系233万t、事業系231万tとなった。事業系は2000年度比58%削減され、2025年10月時点で納品期限の緩和に取り組む事業者は377事業者である。

環境負荷の見える化では、「みえるらべる」の対象が2026年3月末時点で24品目となり、米では生物多様性保全も表示できる。商品を通年購入可能な店舗等がある都道府県数は2026年2月時点で24都道府県である。

バイオマス利用率は2023年度77%で、2030年に約80%を目指す。バイオマス産業都市は2025年度に累計107市町村、農山漁村再生可能エネルギー法の基本計画作成市町村は2024年度末に112市町村となった。

農業水利施設等を活用した再生可能エネルギー発電施設は2025年3月末に313施設で、土地改良区の使用電力量に占める割合は32.2%。営農型太陽光発電の取組面積は2023年度に1,362haで、営農への支障がある取組は存続件数の2割以上となった。

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