米の価格高騰を検証し、安定供給へ制度・生産政策を再構築|第3章農林水産物・食品輸出の拡大と「海外から稼ぐ力」の強化

概要

人口減少や高齢化が進む中、農業生産基盤と食品産業を維持するため、政府は輸出拡大を基本計画に位置付けている。2025年の農林水産物・食品輸出額は1兆7,005億円となり過去最高を更新したが、2兆円の中間目標には届かなかった。2030年の5兆円目標に向け、31の輸出重点品目、国・地域別目標、マーケットイン型の産地形成、認定品目団体や輸出支援プラットフォームによる支援、規制協議、食品産業の海外展開、訪日客による食関連消費の拡大を一体的に進める。

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要点

  • 輸出を国内市場縮小への対応と供給基盤維持の柱に位置付ける。
  • 2025年の輸出額は1兆7,005億円で過去最高となった。
  • 市場ニーズ・規制に合わせた生産と販路形成を重視する。
  • 2030年に輸出額5兆円を目指す。

概要

人口減少と高齢化が進む中、農業生産基盤や食品産業の事業基盤を維持し、食料供給能力を確保するには、国内市場だけに依存せず海外市場を取り込むことが必要とされている。政府は2020年11月に「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を策定し、2025年5月に改訂した。

2025年の農林水産物・食品の輸出額は前年より12.8%増の1兆7,005億円で、過去最高を更新した。日本食への関心、訪日客の増加による認知度向上、健康志向、新規商流の獲得などが背景にある。一方、2兆円の中間目標には届かず、2030年の5兆円目標に向けて加速化を図る。

品目別では加工食品が5,725億円、水産物が4,231億円、畜産品が1,428億円となった。国・地域別では米国向けが5,283億円で最多となり、香港、台湾、中国、韓国が続いた。米国、台湾、韓国などでは過去最高の輸出額となった。

主要数値

2025年の農林水産物・食品輸出額
1兆7,005億円
2025年の輸出額の前年比増加率
12.8%
2030年の農林水産物・食品輸出額目標
5兆円
2025年の加工食品輸出額
5,725億円
2025年の水産物輸出額
4,231億円
2025年の米国向け輸出額
5,283億円

影響

輸出拡大は、海外需要を新たに生み出して農林水産業と食品産業の収益機会を広げ、生産基盤や関連事業基盤の維持・強化につなげる政策として位置付けられている。輸出向けの低コスト生産、ブランド化、高付加価値化が進めば、国内市場縮小下でも産地や事業者が継続的に生産する条件が整う。

地域への影響は、輸出産地の形成、農山漁村への誘客、食文化や景観を組み合わせた観光によって広がる。訪日前・旅行中・帰国後の情報発信や販売を連動させることで、訪日客の食関連消費、地方滞在、帰国後の日本産食品購入、再訪を相互に促す構想が示されている。

一方、米国の関税措置、輸出先の規制、中国産品・韓国産品との競争、物流や人材の不足などにより、輸出は市場や制度の変化に左右される。特定国への過度な依存を避け、非日系市場や未開拓地域へ販路を広げ、政府間協議と事業者支援を組み合わせることが安定的な輸出の条件となる。

2025年の訪日外客数は4,268万人となり、食関連消費を輸出と同様に農林水産業・食品産業の収益確保へ結び付ける機会が拡大している。

詳細

輸出重点品目は31品目に設定され、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳乳製品、果樹、野菜、米・パックご飯・加工米飯・米粉製品、茶、水産物、酒類、菓子、木材などが含まれる。重点品目ごとにターゲット国・地域別の輸出目標、課題、規制やニーズへの対応策を明確化し、輸出先の多角化を図る。

代表例では、牛肉の輸出額目標を2024年の648億円から2030年に1,132億円へ、米・パックご飯等を136億円から922億円へ引き上げる。牛肉では認知度向上、カット対応、施設整備、販路開拓を進め、フラッグシップ輸出産地25産地を目指す。米では大規模・低コスト産地、有機米、加工施設、認証、非日系販路を整備し、30産地を目指す。

2025年の主な重点品目では、商業用米が138億8千万円、パックご飯等を含む米関連が159億円、牛肉が731億円、緑茶が721億円となった。緑茶では有機同等性の仕組みによる輸出量が2024年に2,999tへ増加した一方、牛乳乳製品は305億円、果樹は262億円となり、それぞれ前年から減少した。

認定品目団体は、生産から販売までの関係者が連携し、市場調査や共同プロモーションなど個別事業者が単独で行いにくい活動を担う。2026年3月末時点で15団体、28品目が認定されている。JETROは制度情報、相談、見本市、商談会を支援し、JFOODOはSNSやデジタル広告、現地PRで需要を形成する。

重要市場では、現地小売店のフェア、店頭・ECプロモーション、卸売業者との商談、新商品の開発やテストマーケティングを支援する。輸出支援プラットフォームは2026年3月末時点で10か国・地域、16拠点に設置され、現地情報、新規商流、ネットワーク形成を包括的に支援している。

輸出事業者には、輸出促進法に基づく融資、輸出事業用資産の割増償却、民間投資主体への資金供給を活用し、施設投資から収益化までの期間を支える。GFPの会員数は2026年2月時点で11,262となっている。2025年12月時点のフラッグシップ輸出産地は全国108産地である。

規制対応では、輸出先国との政府間協議、食品安全管理、知的財産管理、HACCP対応施設の整備、動植物検疫協議を進める。2025年にはクウェート向け牛肉、ブラジル向け精米、豪州向けメロンの輸出条件が改善された。福島第一原子力発電所事故に伴う輸入規制は、2026年3月末時点で5か国・地域が維持している。

食品産業の海外展開では、約1千の企業・団体が参加するGFVC推進官民協議会を通じ、セミナー、ガイドライン、海外ミッション、物流・商流構築への支援を行う。インバウンドでは、SAVOR JAPAN、農泊、ガストロノミーツーリズム、酒蔵ツーリズム、越境ECなどを組み合わせ、国内の人気商品を規制、ハラール、ヴィーガンなどに対応させて輸出へつなげる。

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