レポート一覧

フリーランスへの団結権保障は「集団的物乞い」の承認で足りるか~EUにおける経緯と議論から:ストライキ

井川志郎中央大学教授による論文で、フリーランス労働者の団結権保障をめぐるEUの議論と政策展開を詳細に分析しています。フリーランスなど非雇用労働者の増加に伴い、従来の労働法制度では保護されない労働者の権利保障が重要課題となっています。EUでは、競争法(独占禁止法)との関係でフリーランスの団体交渉権が制約されてきましたが、近年、労働者保護の観点から政策転換が図られています。本稿では「集団的物乞い」とい...

ストライキと労働組合再生の道~アメリカを事例として:ストライキ

新川敏光法政大学教授による論文で、アメリカの労働組合再生事例を通じてストライキの役割と可能性を考察しています。1980年代以降、アメリカでは労働組合組織率の著しい低下が続いていましたが、近年、若年労働者を中心とした新たな労働運動の展開により組合活動が活性化しています。特に、スターバックス、アマゾン、アップルなどの大手企業での組合結成運動や、教師、看護師、運輸労働者などによる大規模ストライキが注目さ...

ストライキと組合活動の経済学的考察~日本の労働組合員の意識データを用いた実証分析:ストライキ

齋藤隆志明治学院大学教授による論文で、日本の労働組合員の意識データを用いてストライキと組合活動の関係を経済学的手法で実証分析しています。労働政策研究・研修機構の「労働組合員の意識と行動に関する調査」データを活用し、組合員のストライキに対する態度、参加意欲、効果認識などを定量的に分析しています。分析結果では、年齢、勤続年数、職種、企業規模などがストライキ意識に与える影響を明らかにしており、特に若年層...

戦後日本におけるストと労使関係~石炭産業の事例:ストライキ

島西智輝立教大学教授による論文で、戦後日本における石炭産業のストライキと労使関係を詳細に分析した事例研究です。石炭産業は戦後復興期から高度経済成長期にかけて日本最大のストライキ発生産業であり、1960年の三井三池争議に代表される大規模労働争議の舞台となりました。本稿では、石炭産業特有の労働環境、坑夫の労働条件、経営側の合理化政策と労働組合の対応を時系列で追跡し、ストライキの発生メカニズムと労使関係...

ストライキの現代的意義と課題~日本の歴史と実態をふまえて:ストライキ

禹宗杬法政大学教授による論文で、現代日本におけるストライキの意義と課題を歴史的視点から分析しています。戦後日本のストライキは1970年代後半から急激に減少し、現在では労働争議の主要な手段としての地位を失っていますが、その背景と現代的意義を検討しています。高度経済成長期の大規模ストライキから、石油ショック後の労使協調路線への転換過程を詳細に追跡し、企業別組合制度、終身雇用制、年功序列制といった日本的...

解題:ストライキ

日本労働研究雑誌2025年5月号の「ストライキ」特集における編集委員会による解題です。戦後日本におけるストライキの歴史的変遷と現状を概観し、本特集の各論文の位置づけと意義を明らかにしています。1970年代をピークに日本のストライキ件数は大幅に減少し、現在では年間数十件程度となっていますが、その背景には労使関係の変化、雇用制度の変容、労働組合組織率の低下などがあります。本特集では、ストライキの歴史的...

提言:労使コミュニケーションのためのストライキ?:ストライキ

野田進九州大学名誉教授による提言論文で、現代日本におけるストライキの意義を「労使コミュニケーション」の観点から再考しています。従来のストライキが労働条件改善や抗議の手段として位置づけられてきたのに対し、本稿では労使間の対話促進ツールとしての可能性を提起します。日本の労使関係が協調的とされる中で、ストライキは対立の象徴とみなされがちですが、実際には労使双方が本音で話し合う契機を作る「コミュニケーショ...

日本労働研究雑誌 2025年5月号(No.778)~特集:ストライキ

労働政策研究・研修機構が発行する「日本労働研究雑誌2025年5月号」(No.778)は「ストライキ」を特集テーマとした学術論文集です。野田進九州大学名誉教授による提言「労使コミュニケーションのためのストライキ?」から始まり、ストライキの現代的意義と課題、戦後日本の石炭産業におけるストと労使関係、労働組合員の意識データを用いた実証分析、アメリカの労働組合再生事例、フリーランスの団結権保障問題など、多...

ハローワークを通じた障がい者の就職件数が過去最高を更新~厚生労働省が2024年度のハローワークを通じた障がい者の職業紹介状況などをとりまとめ

厚生労働省の発表によると、2024年度のハローワークを通じた障がい者の就職件数は11万5,609件(前年度比4.4%増)となり、2年連続で過去最高を更新しました。特に精神障がい者の就職件数が6万5,518件(同8.1%増)と大幅に増加し、全体の押し上げ要因となっています。新規求職申込件数も26万8,107件(同7.5%増)で過去最高を更新し、精神障がい者(11.1%増)と知的障がい者(7.7%増)...

度数率は2.10で前年から0.04ポイント低下~厚生労働省「2024年労働災害動向調査〈事業所調査(事業所規模100人以上)及び総合工事業調査〉」の結果

厚生労働省の「2024年労働災害動向調査」によると、災害発生頻度を示す度数率は2.10で前年から0.04ポイント低下しましたが、4年連続で2を超える高い水準が続いています。災害の重さを示す強度率は0.09で2017年以来横ばい、死傷者1人平均労働損失日数は43.5日(前年比3.5日増)となりました。産業別では「生活関連サービス業、娯楽業」の度数率が6.59で最も高く、前年から1.98ポイントの大幅...