経済産業研究所の最新分析によると、2014〜2018年度に実施された「成長志向の法人税改革」は、法定実効税率を大企業で39.54%から29.74%へ、中小企業で40.87%から33.59%へ引き下げた。本改革の特徴は、税率引き下げと同時に、大企業に対して人件費や資本金を課税標準とする外形標準課税を拡大したことである。
分析では、新規投資プロジェクトから生じる利益への税率を示す「フォワードルッキング実効税率」を用いて改革の影響を評価。結果として、生産性の高い企業や規模の大きな企業が減税となる一方、負債比率の高い企業（負債比率1%上昇で税率0.70%上昇）や労働分配率の高い企業（労働分配率1%上昇で税率0.25%上昇）は増税となった。
企業行動への影響については、減税幅が大きかった企業で設備投資や雇用の増加が確認された。特に中小企業では、外形標準課税の対象外であったため、大企業よりも投資・雇用増加効果が大きかった。一方、大企業では外形標準課税拡大が税率引き下げ効果を一部相殺し、人件費への課税が賃上げの足かせとなっている可能性が示唆された。
経済産業研究所は、法人税改革が一定の効果を有していたものの、外形標準課税の拡大が賃上げへの制約となっている可能性を指摘し、今後の税制設計において考慮すべき重要な知見を提供している。