経済産業研究所の最新セミナーによると、第2次トランプ政権の関税政策への対応について、戸堂康之教授（RIETIプログラムディレクター・ファカルティフェロー）が実証研究に基づく戦略を提示した。トランプ関税による日本のGDPへの影響は、IDE-GSMシミュレーションモデルによれば0.2%増と予測され、これは日本の対米輸出シェアが低いことと、中国の対米輸出が日本に振り替えられる貿易転換効果によるものである。
日本の対応策として、第一に生産拠点を米国に移管し対米投資を行うことが必要だが、製造業は政策の不確実性から投資を躊躇する傾向があるため、日米政府の連携による不確実性の除去が重要である。第二に、国際的な知的ネットワークの拡充が必要で、米中デカップリングにより米国が新たなイノベーション相手を探している今がチャンスとなる。TSMCの熊本誘致のような「開かれた産業政策」が成功例として挙げられ、対面での共同研究や多様性を活用できる人材育成が重要となる。
第三に、グローバルサウスとのサプライチェーン拡充が必要である。日本企業の中国依存は解消されておらず、グローバルサウスへの進出も進んでいない。一帯一路で中国が影響力を拡大する中、日本は民間投資の拡大、リスク評価の強化、ODAの柔軟な活用、人権・環境問題への現実的対応を通じて、グローバルサウスとの関係を強化する必要がある。
経済産業研究所は、保護主義的政策への対応として、サプライチェーンの多様化とイノベーションによる対抗が重要であり、過去の中国からの経済的威圧への対応実績を踏まえた政策実施を提言している。