国立国会図書館の最新レポートによると、ニュージーランド議会における一括法案(omnibus bill)の取扱いについて、その歴史的経緯、現行規制の概要、運用実態を詳細に分析している。
ニュージーランドでは、複数の法律を一括して改正する一括法案が19世紀末頃から使用されてきたが、1980年代以降、法律改革(諸規定)法案のような議論を招く内容を含む一括法案が濫用され、議会審議の不当な短縮が問題視されるようになった。これを受けて、1995年12月20日に議決された現行の議事規則において、一括法案の提出を制限する規定が初めて設けられた。
現行制度では、法律案は原則として一つの主題分野のみに関するものでなければならず、一括法案の提出が認められるのは、①議事規則に掲げる7つの類型(制定法改正法案、徴税法案、承認法案、マオリ目的法案等)に該当する場合、②単一の広範な政策又は類似の性格の改正を内容とする場合、③議事委員会の同意又は議院の許可等を得た場合に限定される。ただし、ある法律案の規定によって影響を受ける既存の法律の必然的改正を併せて行うことは可能とされ、必然的改正のみを含む法律案は一括法案には該当しない。
運用実態を見ると、第53議会期(2020年11月25日~2023年9月8日)に新規提出された政府提出法律案の32.3%が一括法案であり、その内訳は、議事規則の類型に該当するものが22.6%、単一の広範な政策又は類似の性格の改正を内容とするものが71.0%、議事委員会の同意によるものが6.5%となっている。これは1996~2003年の状況と比較して傾向に顕著な違いは見られず、一括法案の提出規制が一定の機能を果たしていることを示している。
一括法案の分割手続も整備されており、特別委員会、全院委員会、又は議事委員会の決定に基づき代議院書記官長により複数の法律案に分割できる。かつては改正後の最新条文の把握を容易にする目的で広く行われていたが、法令情報がオンラインで公表されるようになった2015年以降は激減している。また、2011年には一括法案の代替手段として、関連法案の一括討論の手続が導入された。
国立国会図書館は、ニュージーランドの制度は議会による法律案審議の充実化と効率化の両立を図る試みとして、一括法案の濫用防止と立法の効率性確保のバランスを保つ仕組みとして機能していると評価している。