令和8年版国土交通白書の概要|第7章令和8年版国土交通白書:交通・物流・産業基盤の強化
概要
令和8年版国土交通白書は、競争力のある経済社会の構築に向け、道路・鉄道・航空の交通ネットワーク整備、物流革新、鉄道・自動車・海事・航空関連産業、不動産、公共工事、建設産業の現状と施策を整理している。高速道路や新幹線、空港アクセスの整備に加え、ETC2.0、物流DX・GX、モーダルシフト、自動運転などによる生産性向上を推進する。担い手不足や高齢化には、賃金・労働環境の改善、外国人材の受入れ、技能・経験の可視化で対応し、国際情勢や災害に備えてサプライチェーンと海事産業の強靱化を図る。
要点
- 交通網の未接続区間を解消し、既存ネットワークの機能を高める。
- 物流は令和12年度までを集中改革期間とし、効率化と持続可能性を同時に進める。
- 担い手不足に対し、処遇改善、デジタル化、自動化、人材育成を一体化する。
- 国際競争力と経済安全保障を支えるため、港湾・造船の基盤を強化する。
概要
本章は、競争力のある経済社会を支える基盤を、交通ネットワーク、物流、関連産業、公共工事、建設産業の連続した政策課題として捉えている。道路・鉄道・航空の整備を地域間の移動、医療、災害対応、交流、経済活性化に結び付け、物流では輸送力制約と担い手不足を克服しながら、標準化、DX・GX、産業構造改革を進める構成である。
道路では未接続地域の解消とネットワーク全体の機能発揮、新幹線では北海道・北陸・九州の未整備区間を含む整備、航空では首都圏空港の年間約100万回の発着容量を目指す取組が示されている。
産業政策では、需要回復だけでなく、人口減少・高齢化、自然災害、国際情勢、脱炭素化への対応を成長力と安全保障の条件として位置付けている。
主要数値
- ETC2.0の路側機設置数
- 全国の高速道路上に約1,800か所
- 北海道新幹線事業費増加のおそれ
- 最大1.2兆円増加
- 成田空港の目標年間発着容量
- 年間50万回
- 国際旅客定期便数の比較
- 平成22年時点の2,649便/週から令和7年10月末時点の5,679便/週へ増加
- 訪日外国人旅行者数の政府目標
- 令和12年に6,000万人
- 物流革新の集中改革期間
- 令和12年度まで
- 農林水産物・食品の輸出額目標
- 令和12年に5兆円
- 自動物流道路の先行運用目標
- 2030年代半ばまでに東京―大阪間の一部で運用開始
- 建設業分野の特定技能外国人在留者数
- 51,122人(令和7年12月末時点)
- 造船業再生基金の支援規模目標
- 今後10年で総計3,500億円規模
影響
住民にとっては、道路・新幹線・空港・港湾の整備により、移動時間の短縮、医療や観光へのアクセス、災害時の代替輸送、地域間交流の改善が期待される。一方、空港の機能強化では騒音・落下物対策、地域への情報提供、地域との共生が継続的な条件となる。
企業には、物流の効率化、国際基幹航路や航空ネットワークの確保、港湾・空港周辺の拠点形成によって、輸送の安定性と立地競争力を高める機会が生じる。反面、輸送制約、燃料費、人材不足、取引慣行、国際情勢への対応を事業運営に組み込む必要がある。
政策運営では、インフラ整備だけでなく、料金・税制・補助・認証・監督・情報公開を組み合わせ、官民や地域、産学官、関係省庁の連携を継続することが求められる。人材確保と賃金改善を実現できる制度運用、災害・有事への強靱性、脱炭素化と生産性向上の両立が政策評価の焦点となる。
詳細
道路では、昭和29年の第1次道路整備五箇年計画以来、幹線道路を整備してきた。今後は「WISENET2050・政策集」の下、ETC2.0で大量の情報と経路情報を把握し、首都圏・近畿圏・中京圏の賢い料金、速度・加減速データを使ったピンポイント渋滞対策を進める。既存幅員内の付加車線等は14か所で運用を開始し、13か所で対策を実施している。
新幹線は安全性と環境性能を生かし、北海道新幹線新函館北斗・札幌間、北陸新幹線敦賀・新大阪間、九州新幹線新鳥栖・武雄温泉間を整備する。基本計画路線は全国で11路線ある。北海道新幹線では事業費最大1.2兆円増加のおそれを受けて精査し、青函トンネルでは条件付きで時速260km走行を行う。
航空では、羽田空港が令和2年3月から新飛行経路を運用し、国際線発着容量を年間約4万回拡大した。成田空港はB滑走路延伸とC滑走路新設で年間50万回を目指す。関西国際空港は年間30万回の実現に向け、令和7年3月から新飛行経路を運用し、中部国際空港では代替滑走路と完全24時間運用を進める。
物流では、令和6年4月にトラック運転者の時間外労働上限規制が適用されたことを契機に、令和12年度までを集中改革期間とした。新モーダルシフト、中継輸送、ラストマイル配送の効率化、自動運転トラック、商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容を進め、物流DX・GXと標準化を通じて供給制約に対応する。
地域物流では、重要物流道路への区間追加、40ft背高国際海上コンテナ車の特車許可不要区間、ダブル連結トラック、ドローン配送、スマートICを活用する。共同住宅の荷さばき駐車施設の附置規定は令和7年3月末時点で90都市に適用され、自動物流道路は2030年代半ばまでに東京―大阪間の一部先行運用を目指す。
国際物流では、京浜港・阪神港を国際コンテナ戦略港湾として、集貨・創貨・競争力強化を進める。大型船に対応するターミナル、CONPAS、遠隔操作RTG、「ヒトを支援するAIターミナル」を整備し、資源・エネルギー・食料の安定輸送、輸出向けコールドチェーン、代替輸送ルートの実証と官民連携を進める。
産業面では、令和6年度の鉄道旅客輸送量は約210億人、人キロは約3,528億人キロ。鉄道新造車両の生産金額は1,855億円、車両部品は3,929億円、信号保安装置は1,502億円だった。航空の令和6年度輸送実績は国内1億877万人、国際2,116万人である。
担い手不足への対応として、バス運転者は令和4年度から5年度に約10.8万人から約11.4万人、タクシー運転者は約21.5万人から約21.7万人へ増加した。平均年間給与はバスが令和4年399万円から令和6年463万円、タクシーが361万円から418万円へ増加した。トラック事業者は約63,000者で99%が中小企業である。
海事産業では、事業基盤強化計画48件67社、特定船舶導入計画105件107隻を累計認定した。造船業再生基金は今後10年で総計3,500億円規模の支援を目指す。内航海運は令和6年度に1,531億トンキロを輸送し、国内貨物輸送の約4割、産業基礎物資の約8割を担う。
不動産では、令和6年度に全産業の売上高3.5%、法人数12.9%を占め、既存住宅の成約件数は20.5万件だった。不動産資産額は約3,399兆円、令和12年までのリート等資産総額目標は約40兆円である。公共工事では、ダンピング対策未導入団体が令和元年11月の95団体から令和7年6月の58団体に減少した。