令和8年版国土交通白書の概要|第2章国土交通分野の生産性向上に向けたインフラ投資と新技術の展望
概要
令和8年版国土交通白書の第2章は、インフラを経済成長と国民生活の基盤と位置付け、新規投資、既存インフラの再構築、新技術の活用を通じて生産性を高める取組を整理する。リニア中央新幹線、高規格道路、空港・港湾、半導体拠点、データセンターを支える基盤整備に加え、防災・減災、予防保全、都市再生、観光・地域交通DX、自動運転、物流効率化、再生可能エネルギー、水素などを扱う。将来像として、移動・物流・働き方の制約を技術とインフラで減らし、地域の成長余力を引き出す社会を展望する一方、安全性、責任所在、社会受容性、データ標準化、人材確保が課題とされる。
要点
- 新規投資、再構築、新技術を組み合わせて生産性を高める。
- 交通・物流・観光・産業の拠点機能を広域ネットワークで強化する。
- 老朽化対策と防災・減災を民間投資や地域経済の基盤と捉える。
- AI、自動運転、ロボット、DXで担い手不足と機会損失に対応する。
- 技術の社会実装には安全性、責任、標準化、社会受容性が不可欠である。
概要
ハード・ソフトのインフラは、国民生活、社会経済活動、防災を長期に支える一方、老朽化による機能低下が懸念されている。AIや自動運転などの技術進展を踏まえ、維持管理・更新と新技術の活用を同時に進める必要がある。
白書は取組を、成長を加速させる新規投資、安全・安心によって民間投資を呼び込む施策、既存インフラの有効活用・再構築、予防保全、デジタル化・自動化、エネルギー安全保障への活用という相互に関連する政策群として整理している。
望ましい未来では、広域交通と物流の効率化、地域交通の維持、観光消費の拡大、産業立地、防災、脱炭素を個別に進めるのではなく、インフラと経済社会の課題を同時に解決することが重視される。
主要数値
- リニア中央新幹線の最高速度
- 505km/h
- リニア開業時の品川~大阪間移動時間
- 約1時間
- 2030年インバウンド目標人数
- 6,000万人
- 2030年インバウンド消費額目標
- 15兆円
- 2030年外国クルーズ船等の寄港回数目標
- 3,000回
- 成田空港の年間発着容量拡大目標
- 現在の34万回から50万回
- 成田空港の将来年間旅客数
- 約7,500万人
- 成田空港の将来年間貨物取扱量
- 約300万トン
- インフラ海外受注額の2030年目標(モビリティ・交通)
- 10兆円
- インフラ海外受注額の2030年目標(建設・都市開発)
- 6兆円
影響
広域鉄道、高規格道路、空港、港湾の整備は、移動時間や輸送コストを抑え、企業立地、雇用、観光、地域間交流を促す。半導体やデータセンターなど成長産業では、道路、上下水道、電力、通信を一体整備することが立地と操業の前提となる。
災害に強い道路網、ダブルネットワーク、水害対策、耐震化は、生命・財産を守るだけでなく、企業の事業継続とサプライチェーンの安定に寄与し、投資リスクと災害時の経済被害を抑える。地域では、防災施設を観光や交流の拠点として活用する効果も期待される。
交通空白の解消や自動運転、AIオンデマンド交通は、通学、通院、就労、消費、観光を制約する移動上の機会損失を減らし、送迎負担の軽減と可処分時間の増加につなげる。特に人口減少地域では、生活サービスと地域経済を維持する手段となる。
国民は、安全・安心な職場、地方での生活利便性、災害から守られる暮らし、円滑な移動を重視している。自動化・高度化には期待がある一方、事故時の責任、誤動作、サイバー攻撃、プライバシーへの不安もあり、制度整備と説明、社会受容性の醸成が必要になる。
詳細
新規投資では、リニア中央新幹線、整備新幹線、高規格道路、空港・港湾の機能強化を進める。リニア中央新幹線は東京・大阪を結び、品川~名古屋間の工事が進行中である。整備新幹線は北海道、東北、北陸、九州鹿児島、九州長崎の5路線で、北海道新幹線の新函館北斗・札幌間、北陸新幹線の敦賀・新大阪間、九州新幹線の新鳥栖・武雄温泉間が整備対象となっている。
空港・港湾では、インバウンド、国際物流、クルーズ需要を見据え、滑走路、旅客ターミナル、貨物地区、岸壁、防波堤、受入施設を整備する。港湾整備は工場、発電所、物流施設などの民間投資と雇用を誘発し、国際競争力を高める。
成長産業への対応では、熊本県で半導体工場の進出に合わせ、渋滞対策、県道の多車線化、中九州横断道路へのアクセス道路、新たな下水処理場を整備する。北海道では、次世代半導体、GX、データセンター、宇宙関連産業を支える道路、空港、港湾の広域ネットワークを構築する。
既存インフラでは、スマートIC、連続立体交差、立体道路制度、グリーンインフラを活用し、限られた空間からアクセス改善、踏切除却、都市機能の高度化、自然機能の発揮を引き出す。老朽化対策は、施設の集約・再編と予防保全を基本に、自治体間・分野横断の群マネジメントを進める。
デジタル施策では、道路データプラットフォーム、ETC時間帯別料金、人流データ、三次元人流、観光デジタルマップ、AIオンデマンド交通、COMmmmONSを進める。データの可視化、標準化、共同利用により、道路管理、観光誘客、地域交通の利便性と持続可能性を高める。
自動運転では、レベル4・レベル2++の車両、無人移動サービス、自動運航船、自動運転トラックを実証・実装する。建設、物流、造船では、i-Construction 2.0、無人搬送機、自動倉庫、建造シミュレータ、AI・ロボットを導入し、省人化、技術伝承、作業安全、品質向上を図る。
エネルギー分野では、浮体式洋上風力、次世代太陽電池、水素、走行中給電を推進する。洋上風力の案件形成、公共施設や車両への太陽電池設置、港湾の水素受入れ、EV商用車への道路給電を通じ、脱炭素とエネルギー安全保障を結び付ける。
将来展望では、フィジカルインターネット、自動物流道路、完全自動運転、空飛ぶクルマ、フィジカルAI、地産地消型エネルギー社会が示される。実現には、法整備、実証場所、データ基盤、標準化、官民連携、失敗知の蓄積、明確な責任者、安全性評価と社会受容性の確保が求められる。