令和8年版国土交通白書の概要|第9章国土交通白書2026:脱炭素・循環型社会と環境保全の取組
概要
国土交通白書2026は、気候変動への緩和・適応、脱炭素化、循環型社会、生物多様性、水循環、海洋・生活環境の保全、観測・予測を体系的に整理している。2050年ネット・ゼロと温室効果ガス削減目標の実現に向け、住宅・建築物、道路、公共交通、物流、鉄道、船舶、航空、港湾、上下水道、建設など幅広い分野で制度、補助、技術開発、計画策定を進める。併せて、再生可能エネルギー、水素、ブルーカーボン、資源循環、自然再生、水質改善、水道・下水道の基盤強化、環境監視を推進し、地域の暮らし、産業、インフラの持続可能性を支える政策展開を示している。
要点
- 脱炭素化を住宅、交通、物流、港湾、建設など国土交通分野全体で推進する。
- 再エネ、水素、循環資源、自然再生を組み合わせて環境政策を展開する。
- 水循環と上下水道では、流域連携、更新、広域化、官民連携を重視する。
- 観測・監視・予測により、気候変動対策と環境保全の基盤情報を整備する。
概要
気候変動により自然災害の激甚化・頻発化が進み、地球温暖化対策は世界的な緊急課題と位置付けられている。白書は、緩和策と適応策、生物多様性の確保、Well-beingの向上を相互に関係する政策課題として整理している。
我が国は2050年ネット・ゼロを掲げ、2013年度比で2030年度温室効果ガス46%削減、さらに50%の高みに向けて挑戦し、2035年度60%削減、2040年度73%削減を目標としている。
世界気象機関の報告では、2025年の世界の年平均気温は工業化以前の1850〜1900年平均を1.43℃(±0.13℃)上回り、2023年から2025年は観測史上最も温暖な3年間となった。
政策の実施単位は、都市や建築物から道路・交通・物流、海運・航空・港湾、上下水道、河川・海岸まで広がり、排出削減だけでなく、資源循環、生態系、水環境、生活環境の改善を同時に扱う構成となっている。
国土交通省は、令和7年6月に「国土交通省環境行動計画」を改定し、住宅・建築物、公共交通・物流、インフラを活用した再生可能エネルギー、輸送・インフラ分野の非化石化を推進している。
主要数値
- 2050年の目標
- 2050年ネット・ゼロ
- 2030年度削減目標(2013年度比)
- 46%削減
- 2035年度削減目標(2013年度比)
- 60%削減
- 2040年度削減目標(2013年度比)
- 73%削減
- 2025年の世界平均気温上昇
- 1.43℃(±0.13℃)
- 2030年の本邦航空会社SAF使用目標
- 燃料使用量の10%をSAFに置き換え
- 2040年の浮体式洋上風力案件形成目標
- 15GW以上
- エコレールマーク認定(2026年1月現在)
- 商品180品目、153件、取組企業97社
- エコシップマーク認定(2026年3月末現在)
- 荷主259者、物流事業者284者
- 水循環アドバイザー制度の支援対象
- 7地方公共団体
影響
国民や地域に対しては、省エネ基準への適合、公共交通の利便性向上、都市の緑地・オープンスペースの確保、暑熱対策、水質改善などを通じ、安全・快適な生活環境や健康増進、良好な子育て環境を目指す政策が示されている。
企業には、排出量取引制度、環境性能車への補助、SAF・ゼロエミッション船・水素車両などの技術開発支援、グリーン調達、ライフサイクルカーボン評価への対応が関係する。物流では荷主、事業者、消費者、労働者の連携や行動変容も政策対象となる。
地方公共団体には、道路脱炭素化推進計画、港湾脱炭素化推進計画、空港脱炭素化推進計画などについて、制度に基づく計画策定や策定支援の枠組みが示されている。また、流域水循環計画では、地域の実情に応じた計画の策定・実施に対する技術的な助言や提案が行われ、広域連携や官民連携を進める役割が広がっている。
政策運営では、国際目標への対応と地域の実施体制を接続し、インフラの更新・強靱化、環境負荷の低減、自然環境の再生、観測データに基づく予測を継続的に組み合わせることが中心的な課題となっている。
詳細
まちづくりGXでは、コンパクト・プラス・ネットワーク、「居心地が良く歩きたくなる」空間、エネルギーの面的利用、環境配慮型の民間都市開発、グリーンインフラを進める。自動車ではエコカー減税や燃料電池車・電気自動車等への補助を行い、道路では充電・水素充てん設備、歩行・自転車空間、LED照明、低炭素材料を導入する。
公共交通・物流では、MaaS、公共交通ネットワーク再編、バリアフリー化、モーダルシフト、共同輸配送、EV・FCVトラック、港湾の低炭素化を推進する。トラックは国内物流の輸送トンキロベースで5割を超え、鉄道・内航海運の活用が課題とされる。
鉄道では省エネ車両、水素燃料電池車両、再エネ導入、船舶では水素・アンモニア・LNG・メタノール・バッテリーなどの導入を進める。内航船省エネルギー格付制度は2026年3月末時点で268隻を認定している。航空では2050年カーボンニュートラルに向けSAF等を推進し、空港では2026年3月末時点で51空港が脱炭素化推進計画を策定した。
住宅・建築物では、2025年4月から原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務化し、遅くとも2030年までに基準をZEH・ZEB水準へ引き上げる目標を掲げる。省エネ住宅・改修、ZEB、税制、融資、ライフサイクルカーボン評価制度の検討も進めている。
上下水道・建設では、省エネ機器、下水汚泥のバイオガス化・肥料利用、再エネ発電、GX建設機械、低炭素コンクリートやグリーンスチールを推進する。建設機械は2030年度を目途に、普及する油圧ショベルについて直轄工事で認定型式の使用を原則化する。
再生可能エネルギーでは、港湾区域や一般海域の洋上風力、ハイブリッドダム、小水力、下水道バイオマス、インフラ空間の太陽光を活用する。全国6港で事業者選定済みの洋上風力があり、基地港湾は7港指定され、既設ダムでは3ダムで発電施設の新増設公募を実施する。水素燃料船は2028年までの実証運航開始を目指す。
循環型社会では、建設廃棄物の水平リサイクル、建設発生土の有効利用、下水汚泥の肥料利用、リサイクルポート22港を核とする循環資源物流を進める。2024年度に自動車リサイクル法に基づき解体確認・永久抹消登録等がなされた自動車は999,076台で、船舶リサイクル条約は2025年6月に発効した。
生物多様性・自然環境では、河川、都市緑地、海岸、港湾の生息・生育環境を保全・再生・創出する。多自然川づくり、外来種対策、総合土砂管理、干潟・藻場の再生、ブルーカーボン、海辺の自然学校、道路緑化などを組み合わせる。
水循環では、2026年3月時点で流域水循環計画を合計85計画公表し、水循環アドバイザー制度により7地方公共団体への支援を実施した。水質調査は2024年に一級河川109水系の1,086地点で行われ、一級水系の水質事故は592件発生した。
水資源の安定供給では、雨水利用施設が2024年度末に4,563施設、年間利用量は約1,278万m3で、渇水対応タイムラインは2025年度末に国管理の42水系で運用を開始した。水道普及率は2024年度末で98.3%、汚水処理施設普及率は93.7%、下水道普及率は81.8%となった。