令和8年版 水循環白書|第2章令和8年版 水循環白書 第2章 地下水の適正な保全及び利用
概要
令和8年版 水循環白書の第2章は、生活・産業・農業、消雪、エネルギー、災害対応などに使われ、湧水が生物多様性保全や環境学習にも寄与する地下水について、保全と利用を両立する地下水マネジメントの取組を報告する。政府は、地域の観測データを共有する地下水データベース、研究会、情報提供、相談窓口、アドバイザー派遣などを通じ、地方公共団体の課題解決を支援した。令和7年10月時点で地下水協議会等を設置した地方公共団体は363、採取規制条例は269条例であり、外国人等による採取事例を把握した団体は12、事例は49件だった。令和6年能登半島地震を踏まえ、災害時の代替水源としての地下水利用も推進し、ガイドラインの改訂、自治体向け説明、井戸の実態調査などを実施した。
要点
- 地下水の用途と地域課題が多様化する中、保全と利用を総合的に扱う地下水マネジメントの重要性が高まっている。
- 政府はプラットフォームやデータベース、研究会、相談・助言を通じ、地方公共団体の取組を支援している。
- 令和7年10月時点で地下水協議会等を設置した地方公共団体は363、採取規制条例は269条例だった。
- 災害時の代替水源として地下水等を活用するため、ガイドラインの改訂や自治体支援が進められた。
概要
地下水は生活用水、工業用水、農業用水に加え、消雪やエネルギー源などに利用される。地下水が育む湧水は、生物多様性を保全する場、安らぎの場、環境学習の場としても役割を果たす。近年はミネラルウォーター生産の拡大、先端・次世代半導体製造工場や関連企業の集積、災害時利用などを背景に、企業を含む利用が多面的になっている。
地下水や湧水の保全・復活を地域文化や地場産品と組み合わせ、観光振興や特産品のブランド化に活用する動きも見られる。こうした需要の多様化を受け、地下水の適正な保全と利用に着目した総合的な管理・利用、すなわち地下水マネジメントが重要になっている。地域の課題は賦存量・利用可能量の推定や水質改善などの技術面に限らず、協議会運営、条例づくり、利用者への指導方法にも及ぶ。
詳細
地下水マネジメント推進プラットフォームは、関係府省庁、先進的な地方公共団体等の公的機関、大学、研究機関、企業、NPOなどの協力の下で、取り組もうとする地方公共団体を一元的に支援する。ポータルサイトで基礎情報、代表的な地下水盆の概況、条例策定状況や先進事例を提供し、相談窓口で関係者の知見を紹介する。水循環アドバイザー制度を使った紹介・派遣、基礎知識や先進事例を共有して意見交換する地下水マネジメント研究会も実施する。国や地方公共団体が集めた地下水位、水質、採取量、観測所情報を相互利用する地下水データベースを構築・運用し、活動で得た知見をガイドライン等の充実に反映する。
地下水の賦存量や挙動には未解明部分が多いため、地域の実情に応じた観測・調査、データ整備、保存、分析を支援している。令和7年度には研究会を3回開催し、地方公共団体に共通する課題や令和6年能登半島地震を踏まえた災害時利用について意見交換した。また、これから取り組む自治体向けに地下水マネジメントの概略を記したパンフレットを作成した。大規模災害や渇水リスクの軽減を見据え、BRIDGEではSIPで開発された3次元水循環モデルを基に、モデル地域の地下水流動解析手法と、地盤の詳細な物理特性を要しない簡易モデルの開発を進めた。
地下水協議会等の設置状況は令和7年10月時点で、34都道府県と329市区町村、計363団体(20%)だった。種類別では地下水協議会49団体、地方公共団体の諮問等機関83団体、流域水循環協議会102団体、地下水利用対策協議会103団体、地盤沈下関係26団体などである。政府は設置状況や種類、各協議会等によるマネジメントの取組状況を情報収集し、プラットフォームのウェブサイトで公開して設置検討の参考に供した。
地方公共団体による採取制限などを支援するため、都道府県と市区町村を対象に条例等の制定状況と外国人等による採取事例を調査した。令和7年10月時点で、採取を規制する条例は26都府県・236市区町村に計269条例あり、外国人等による採取事例を把握した地方公共団体は12団体、事例は49件だった。調査結果は「地下水採取を規制している条例及び外国人等による地下水採取事例に関する調査結果」として取りまとめ、公表した。関係府省庁の地下水情報や先進事例をウェブサイトで一元公開し、必要に応じて水循環アドバイザーを紹介・派遣して助言を受ける機会も設けた。
(4)代替水源としての地下水の活用では、令和6年能登半島地震の直後に被災地の一部で地下水等が生活用水に利用されたことを踏まえ、災害時の活用を推進する。令和7年3月に策定した「災害時地下水利用ガイドライン~災害用井戸・湧水の活用に向けて~」は、令和7年12月、新設井戸の整備に関する考え方を含めて改訂し、プラットフォームで公開するとともに自治体向け説明会を開いた。地下水データの少ない地域では、災害用井戸等による代替水源確保の取組を始め、地域防災力向上に向けた活用促進パンフレットも作成した。
改訂ガイドラインは、災害用井戸の取組を検討する自治体向けの手順書で、対象水源に個人・企業所有の既設井戸、湧水、公共の新設井戸を含める。使用目的は洗濯、風呂、掃除、トイレなどの生活用水である。既設井戸・湧水の把握や登録、公共による新設井戸の検討・整備、登録要件と手続、平常時・災害時の管理と利用上の留意点を扱う。新設井戸の候補地区は、災害時の生活用水需要と確保済み代替水源量を確認し、段階別・地区別に比較する。早期の上水道復旧が見込まれる地区を除き、確保水量が不足する地区を候補とする手順例が示されている。
全国の市区町村における災害用井戸の取組を進めるための基礎情報とし、ガイドラインを踏まえた確認事項や取組状況を把握する目的で、令和7年12月から令和8年1月にかけて災害用井戸の実態調査を実施した。