令和8年版 水循環白書第3章 貯留・涵養機能の維持及び向上

概要

森林、河川、農地、都市等の水の貯留・涵養機能を維持・向上させる施策を扱う。森林整備や森林経営管理、流域治水、農地の多面的機能、都市の緑地・雨水貯留浸透、グリーンインフラの普及・実装について、制度や実施方法、関連する方針を記載している。森林は水を蓄え浄化し、炭素貯蔵や災害防止にも寄与する。農地や都市の機能、グリーンインフラの効果も説明し、分野別の施策と官民連携等を整理する。

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要点

  • 森林の水源涵養機能には、水を蓄える隙間に富み、浸透・保水能力の高い森林土壌が必要とされる。
  • 気候変動による災害の激甚化・頻発化を踏まえ、関係者が協働する流域治水を推進している。
  • 農地の水田や畑土壌は雨水を一時貯留し、農業用水等の地下浸透は下流域の地下水涵養を助ける。
  • 「グリーンインフラ推進戦略 2030」は計画期間と目指す成果を2030年度までに設定した。

概要

第3章「貯留・涵養機能の維持及び向上」は、森林、河川、農地、都市等の水の貯留・涵養機能の維持・向上を、健全な水循環の維持又は回復に不可欠と位置づける。森林は降水を受け止めて土壌に蓄え、地下水として涵養し、水質を浄化する。水源涵養機能には水資源の貯留、水質浄化、洪水緩和が含まれ、森林は炭素貯蔵や災害防止にも寄与する。

章は「(1)森林」「(2)河川等」「(3)農地」「(4)都市」「(5)その他」の順に扱う。各分野の整備・保全や水循環に関する施策を記し、その他ではグリーンインフラの普及、技術調査・研究、資金調達手法の検討、推進戦略を扱う。

影響

森林は大気中の二酸化炭素を吸収・貯蔵し、木材を建築物等に利用することも炭素の長期貯蔵につながる。森林はカーボンニュートラルの実現、災害防止、健全な水循環の維持に寄与するとされる。

農業・農村は食料供給に加え、国土保全、水源涵養、生物多様性保全、景観形成、文化伝承等の役割を持ち、その効果を地域住民を始め国民全体が享受する。水田や畑土壌による雨水の一時貯留と徐々の流下は、洪水の発生を軽減する。

都市化による地表面の被覆化は、雨水の地下浸透を減らし、湧水の枯渇、平常時の河川流量減少と水質悪化、洪水時の河川流量増加をもたらすおそれがある。都市の貯留・涵養機能を維持・向上させ、浸水被害の軽減を図る。

詳細

「森林・林業基本法(昭和39年法律第161号)」に基づく「森林・林業基本計画(令和3年6月15日閣議決定)」や、「森林法(昭和26年法律第249号)」に基づく森林計画制度等により整備・保全を進めた。主伐後の再造林や間伐を行い、自然条件等に応じて複層林化、長伐期化、針広混交林化、広葉樹林化を進め、多様で健全な森林へ誘導する。木材需要の拡大等による森林資源の循環利用も推進し、地方公共団体や森林所有者等に指導・助言した。

「森林経営管理法(平成30年法律第35号)」に基づき、適切に経営管理されていない森林について、所有者から市町村等へ経営管理を委託する制度を推進した。令和7年5月の法改正では、地域関係者が将来像を共有し森林資源の循環利用を進める集約化構想制度の創設、市町村の事務負担軽減等を措置した。令和8年4月施行。

民有林では路網整備、施業集約化を伴う間伐、主伐後の再造林を進め、奥地水源林等では公的主体が、国有林では国が間伐等を実施した。平成24年度以降、新たな森林土地所有者には市町村長への届出を義務付け、平成22年度から外国法人等による森林取得を調査している。令和6年の取得事例は85件、382ha。保安林の指定や伐採・転用規制、治山施設の設置、民有林の林地開発許可制度も運用した。木材需要・国産材供給、担い手育成、地域資源の付加価値向上、森林空間利用も推進した。

河川管理者等の治水事業と、関係者が協働して流域全体でハード・ソフト一体の対策を総動員する「流域治水」を推進した。河川整備基本方針等で河川の適正利用と流水の正常な機能維持を定め、ダム等の下流減水区間で流量を確保した。自然流量が減少した都市河川には下水処理場の再生水を送水するなど、河川流量の維持に取り組んだ。

市街化による雨水流出の増大や浸水リスク地域の人口・資産増加に対応し、河川・下水道等を整備した。調整池等で雨水を貯留し、浸透ますや透水性舗装で浸透させる対策を組み合わせ、流域一体の浸水対策を進めた。新世代下水道支援事業制度で貯留浸透施設等を促進し、「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律(令和3年法律第31号)」に基づく貯留機能保全区域の指定等、流域の貯留機能を活用した治水対策を検討した。

農地では安定的な農業水利システムの維持・管理、農地の整備・保全、農村環境・生態系の保全を進め、地域コミュニティの共同活動等を支援した。農地面積は令和7年時点で約424万ha、国土面積約3,780万haの約11%。水田のかんがい用水や雨水の多くは地下へ浸透して下流域の地下水涵養を助け、涵養された地下水は生活用水や工業用水に再利用される。

都市では多様な主体が緑地等を保全・創出し、民間・公共公益施設の緑化やグリーンインフラの貯留・涵養機能の活用を進めた。民間開発等では雨水貯留浸透施設の設置を促し、浸水被害の軽減や水辺空間の創出を図る。平成27年の「下水道法(昭和33年法律第79号)」改正で浸水被害対策区域制度を創設し、平成27年度に民間等の施設整備費支援制度を設けた。令和3年改正では区域内の整備計画認定制度を創設し、費用支援を拡充できるようにした。

改正「都市緑地法(昭和48年法律第72号)」に基づき、令和6年12月に「都市における緑地の保全及び緑化の推進に関する基本的な方針(令和6年12月)(緑の基本方針)」を策定した。市町村の緑の基本計画等に基づく取組を財政・技術面から支援した。令和7年度には「グリーンインフラ創出促進事業」で防災・減災技術や効果のモニタリング技術の実証を支援し、緑地・森林管理や衛星画像・AIによる評価等で地域実装の効果を見える化した。

令和2年3月設立の「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」で、知見・ノウハウを生かした普及、技術調査・研究、資金調達手法の検討を進めた。「グリーンインフラ技術集(令和7年3月版)」と「令和7年度版グリーンインフラ支援制度集」を公表し、「グリーンインフラに関するファイナンスガイドライン(中間とりまとめ)」を令和8年3月に公表した。

「グリーンインフラ推進戦略 2023(令和5年9月)」を全面改定し、「グリーンインフラ推進戦略 2030(令和8年1月)」を策定した。同戦略は、2025年6月策定の「国土交通省環境行動計画」に係る実行計画で、定義・効果・特徴と国土交通省の取組を整理し、2030年度までに目指す成果を設定した。分野横断の環境整備策は、機運・理解の醸成、効果の見える化、官民の取組環境、資金調達、新技術・DX、国際展開。実装分野は都市・生活空間、防災・減災、暑熱、生物多様性、地域経済、温室効果ガス削減、循環型社会である。「グリーンインフラの活用が当たり前の社会」を図り、2050年に向けて「自然共生社会」の実現を目指す。

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