令和8年版国土交通白書の概要|第10章令和8年版国土交通白書:インフラ海外展開と国際連携の強化

概要

政府は、世界的なインフラ需要を取り込み、日本の経済成長と国際競争力の強化につなげるため、相手国との共創、経済安全保障、GX・DXを柱とする海外展開を推進している。国土交通省は、上位計画段階からの関与、PPP案件形成、官民ファンド、国際標準化、人材育成、受注後のトラブル対応などを官民一体で実施する。さらに、アジア、アフリカ、欧米、中南米等で交通、都市、水、防災、住宅、観光などの協力を進め、EPA/FTA、国際機関、G7・G20等を通じたルール形成と技術協力にも取り組む。

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要点

  • 相手国との共創を軸に、インフラ海外展開を経済成長と国益の確保へ結び付ける。
  • 案件形成から受注後まで、官民一体の支援を一貫して強化する。
  • 多地域・多分野の協力を通じ、日本の技術と知見の国際展開を進める。
  • 国際標準化と多国間ルール形成を、企業の競争力向上に活用する。

概要

政府は平成25年3月に経協インフラ戦略会議を設置し、政府一体でインフラ海外展開を進めてきた。国際社会では気候変動、秩序の分断、人道危機、カントリーリスク、経済安全保障上のリスク、サプライチェーン途絶が複合化している。

令和6年12月に策定されたインフラシステム海外展開戦略2030は、①相手国との共創による稼ぐ力と競争力の向上、②経済安全保障等への対応と国益の確保、③GX・DXを機会とする機動的対応の3本柱を示した。

国土交通分野の国際展開は、企業の案件獲得だけでなく、相手国の国土計画、交通、都市、水、防災、住宅、観光等の課題解決と、日本の技術・産業基盤の強化を同時に目指す政策として展開されている。

主要数値

経協インフラ戦略会議の設置時期
平成25年3月
インフラシステム海外展開戦略2030の策定時期
令和6年12月
海外展開戦略の柱
3本柱
国土交通省の主な施策数
7施策
JOINの支援決定事業数(令和8年3月末時点)
46事業
発効済み・署名済みのEPA/FTA等(令和8年3月現在)
22件
ITF加盟国数
72か国
衛生面等に課題がある水源を利用する人(令和6年時点)
約4.1億人
アフリカ官民インフラ会議の開催実績(令和7年度まで)
14か国
途上国6か国への巡視船・作業船供与事業(令和7年3月末現在)
計15隻

影響

企業にとっては、政府間対話、官民ファンド、協議会、調査、マッチング、人材制度、国際標準化が、海外案件への参入障壁や資金・情報・人材面の負担を下げる手段となる。特に中堅・中小企業、地方企業、スタートアップの参加機会を広げる効果が見込まれる。

相手国や地域に対しては、交通・都市開発、水・上下水道、防災、住宅、観光等の技術協力、人材育成、制度整備を通じ、社会経済発展、災害への強靱性、環境負荷低減、持続可能な都市形成を支援する。

政策運営では、EPA/FTA、WTO、APEC、ASEAN、OECD、国連、G7、G20、世界銀行、TICAD等を活用し、自由で公正な競争、脱炭素、安全、包摂性、レジリエンスに関する国際ルールと協力枠組みを日本の強みと結び付けている。

詳細

国土交通省は「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画」に基づき、相手国の上位計画段階から働きかける「川上」関与、PPPの法制度・リスク分担の環境整備、日本の長寿命・低ライフサイクルコスト、技術移転、契約履行、環境・防災・安全の強みを生かした案件形成、コンサルタントの調査品質向上、現地企業との連携や拠点整備・M&A、海外人材の認定・育成、中堅・中小企業支援、受注後のトップクレームや相談窓口を主な7施策として進めている。

海外展開の実施手段として、政務レベルのトップセールスと政府間対話、JOINによる出資・人材派遣等の事業支援、官民合同協議会による情報提供・技術PR・ビジネスマッチング、ISO・IECや国連機関等での標準獲得、国際規格のデファクト化、未取得規格への対応を組み合わせている。JOINは平成26年に設立され、令和8年3月末時点で46事業を支援した。

地域別には、東アジア・大洋州、ASEAN、南アジア、北米・欧州、中南米、トルコ、アフリカ、中央アジアで、鉄道、道路、港湾、都市、スマートシティ、水、防災、復興、造船、観光等の案件形成、覚書、専門家派遣、セミナー、官民ミッションを実施している。ウクライナではJUPITeRを通じ、遠隔施工や住宅復興を含むインフラ復興への企業参画を支援する。

経済連携では、令和8年3月現在、22のEPA/FTA等が発効済みまたは署名済みで、運輸・建設業等の国際競争力向上に向け、サービス分野の自由化や政府調達への参加機会拡大を進めている。WTOでは貿易自由化・ルール形成、協定履行の監視、貿易紛争解決の機能に関与する。

国際機関等では、APECで輸送システムや観光、気候変動に強い都市を議論し、ASEANとは陸海空の交通協力、スマートシティ、観光を推進する。OECDでは交通、造船、地域政策、開発、観光に参加し、PLATEAUを含むデジタルツインや災害復興の知見を共有する。国連では、IMOの「2050年頃までにGHG排出ゼロ」目標、ICAOの航空標準、UN-Habitatの都市政策、UN Tourismの持続可能な観光等に取り組む。

分野別協力では、上下水道、防災、道路、住宅・建築、鉄道、自動車、海事、港湾、航空、物流、地理空間情報、気象・地震津波、海上保安、観光を対象とする。世界では衛生面等に課題がある井戸・地表水等を約4.1億人が利用しており、AWaP等を通じて汚水管理と水インフラの改善を進める。

国際標準化では、自動車のWP.29、鉄道のISO/TC269・IEC/TC9、船舶のSOLAS・MARPOL・STCW、地理情報のISO/TC211、ITSのISO/TC204、上下水道のISO/TC282・TC275・TC224、物流のJSA-S1004、都市のOGC・ISO/TC268、水防災のIWA50等で、日本の安全・環境・デジタル技術や制度の普及を後押しする。ベトナムでは港湾の国家技術基準10項目の発行に至った。

海事・航空等では、途上国6か国に計15隻の巡視船・作業船供与に向けたODA事業が令和7年3月末時点で進行中であり、航空安全・保安、環境、人材育成、新技術対応の国際協力も進める。観光では、令和6年11月の仙台声明を踏まえ、危機・自然災害の影響を予防・最小化するガイドラインや事例集を作成し、地域間のレジリエンス協力を強化している。

国連人間居住計画では、期間2026年から2029年の戦略計画に国土・都市計画を適切な住宅、土地、基礎的サービス確保の解決策として位置付けた。G7交通大臣会合では交通サプライチェーン強靱化の作業部会を設置し、G20観光大臣会合では持続可能で包摂的かつレジリエントな観光に向けた国際協力と官民連携の強化を確認した。

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