令和8年版国土交通白書の概要|第5章地域未来戦略を軸にした地域活性化施策の推進
概要
人口減少や東京一極集中が続く中、国土交通省は「地域未来戦略」に基づき、地方の就業機会、生活サービス、移住環境、産業クラスターの形成を支援する。地方公共団体の自主性を重視した交付金、民間投資やPPP・PFIの活用、コンパクト・プラス・ネットワーク、交通・物流基盤、地域資源を生かした拠点整備を総合的に進める。併せて、離島・半島・豪雪地帯など特定地域への支援、北海道の食料安全保障・観光・脱炭素化、アイヌ文化の振興にも取り組み、地域の暮らしと安全を守りながら、地方から日本全体を成長軌道に押し上げることを目指している。
要点
- 地域の暮らしと安全を守り、地方から日本全体の成長を目指す。
- 自治体の自主性と民間の創意を組み合わせ、地域ごとの成長基盤を整える。
- 交通、都市、空港、港湾、鉄道、道路を結び、拠点と交流を強化する。
- 離島・半島・豪雪地帯や北海道など、地域特性に応じた施策を展開する。
概要
急速な少子高齢化と人口減少に加え、東京圏への人口集中が続き、従来の地方創生の取組だけでは流れを変えるまでに至っていない。地方部では人口減少に伴う消費減少を通じて地域経済の縮小が懸念されている。
こうした状況を踏まえ、政府は「地域未来戦略」を推進し、就業機会の創出、出産・子育て支援、生活必需サービスの維持、移住支援に加えて、強い経済の実現を重視している。世界をリードする成長分野のクラスターと地域発のクラスターを全国に形成し、地方の伸び代を生かす構想である。
国土交通省の施策は、地域の自主性を引き出す財政・伴走支援、官民連携による都市・インフラ整備、生活交通の確保、地域資源の活用、広域連携、特定地域振興を組み合わせた総合的な地域づくりとして進められている。
主要数値
- 地域未来交付金・令和7年度補正予算
- 1,000億円
- 地域未来交付金・令和8年度予算
- 1,600億円
- 地域づくり表彰・令和7年度推薦件数
- 全国32件
- 地域づくり表彰・令和7年度受賞団体数
- 10件
- 立地適正化計画の具体的取組・令和7年12月末時点
- 947市町村
- 立地適正化計画の作成・公表済み・令和7年12月末時点
- 650市町村
- 地域公共交通計画の公表済み・令和7年度末
- 1,244件
- 完了期間宣言路線・令和7年4月現在
- 55事業主体132路線
- バスタプロジェクトの事業推進・令和7年度
- 全国7か所
- バスタプロジェクトの調査・令和7年度
- 15か所
影響
住民にとっては、医療・教育・買い物への移動、公共交通、住宅、防災、生活必需サービスへのアクセスが維持・改善される可能性がある。拠点への機能集約と交通網の再構築は、日常の利便性向上と行政サービスの効率化につながる。
企業や地域経済に対しては、空港・港湾・鉄道・高規格道路などの基盤整備が、物流効率化、産業立地、観光、雇用と所得の維持・創出を後押しする。民間投資や地域金融との連携は、地域内の事業機会とエリア価値を高める効果が期待される。
地域社会では、道の駅、河川、海岸、港湾、離島などが交流・観光・防災の拠点として活用され、住民参加による管理や地域文化の発信が進む。豪雪地帯や離島など条件不利地域への支援は、安全な居住と地域の持続可能性を支える。
政策運営では、自治体の裁量、官民連携、関係府省庁・地域間の協働を重ね、モデル事業や実証の成果を横展開する進め方が重視されている。地域ごとの課題に即した施策を組み合わせることで、人口減少下でも活力ある社会の維持を図る。
詳細
自治体向けには、地域未来交付金を通じて、従来型の地方創生に加え、産業クラスター計画や地場産業の成長戦略を支援する。国土交通省は案件形成や事業実施の伴走支援を行う。地域づくり表彰は昭和59年度から、手づくり郷土賞は昭和61年度から実施され、優れた地域づくりを普及する。民間都市開発推進機構の出資、まちづくりファンド、クラウドファンディング、寄付などにより民間資金を呼び込む。
スモールコンセッションは、廃校や自治体所有の古民家などを対象に、民間事業者の創意を生かす小規模PPP・PFIで地域課題とエリア価値の向上を図る制度である。プラットフォームでイベント、課題共有、ワーキンググループを行い、自治体には構想策定の専門家を派遣する。都市では、道路・公園・広場・沿道建物の一体活用、首都高速道路日本橋地区の地下化、立体道路制度などを進める。
コンパクト・プラス・ネットワークでは、立地適正化計画と地域公共交通計画を軸に、医療、福祉、住宅、公共施設再編、防災を連携させる。ハザードエリアの開発抑制や移転、公共交通軸の形成、拠点内の回遊性・滞在快適性の向上を進める。交通結節点では品川駅、神戸三宮駅、虎ノ門ヒルズ駅などで乗換え、駅機能、市街地の一体化を整備する。
交通・物流基盤では、バスタプロジェクトによるモーダルコネクト、空港の国際貨物・ターミナル機能、港湾の国際物流ターミナル、鉄道の旅客・貨物輸送、高規格道路を整備する。道の駅、カーシェア、シェアサイクル、道路協力団体、かわまちづくり、海岸協力団体、みなとオアシス、みなと緑地PPP、海の駅など、地域資源を生かす制度も活用する。
地域交通では、バス、デマンド交通、離島航路・航空路、地域鉄道の確保・維持、安全設備、車両更新、DX、キャッシュレス化を支援する。令和5年度創設の日本版ライドシェアは、地域の自家用車・ドライバーを活用し、天候・イベント時の拡大や電話・現金利用に対応した。二地域居住では、令和6年11月施行の改正法を基に、特定居住促進計画、支援法人、住まい・なりわい・コミュニティを整備する。
地域密着型の主な登録・指定状況は、道の駅1,231駅、かわまちづくり303か所、道路協力団体42団体、海岸協力団体25団体、港湾協力団体45団体、みなとオアシス170か所、みなと緑地PPP6件、海の駅179駅である。
広域連携では、40府県が35の共通目標を掲げ、延べ83の広域的地域活性化基盤整備計画を作成し、官民連携による事業化検討を16件支援した。連携中枢都市圏は令和7年4月1日時点で38圏域が形成されている。
特定地域振興では、豪雪地帯が532市町村、国土の51%を占める。半島振興対策実施地域は令和7年4月時点で23地域、22道府県、194市町村である。離島航路は276航路、輸送人員需要は3,900万人で、補助対象航路は127航路、離島航空路線は62路線、そのうち国庫補助対象は20路線である。
都市再生緊急整備地域は令和8年3月末時点で55地域、特定都市再生緊急整備地域は15地域である。都市再生特別地区は令和7年12月末時点で135地区、うち民間提案が96地区、民間都市再生事業計画の認定は令和8年3月末時点で176件である。
北海道では第9期北海道総合開発計画の下、食料安全保障、観光立国、ゼロカーボン北海道、生産空間の維持・発展、デジタル活用、人流・物流ネットワーク、強靱な国土づくりを進める。奄美群島・小笠原諸島、離島、半島の産業、観光、移住、環境保全を支援し、ウポポイでは令和6年3月策定の誘客促進戦略に基づき、アイヌ文化の理解促進と地域連携を進める。