令和8年版 水循環白書|第4章令和8年版 水循環白書 第4章 水の適正かつ有効な利用の促進等
概要
令和7年度の政府施策を、水の安全確保、上下水道の基盤強化、渇水・災害への備え、施設の維持管理、水利用、水環境、生態系、水辺・水文化、地球温暖化への対応に分けて記述する。気候変動や施設の老朽化などを背景に、施設整備と管理、情報共有、関係者の連携を組み合わせて水の安定供給と水循環の維持・回復を図る。
要点
- 水の安全確保から生態系・水文化の継承までを、流域と関係者の連携を通じて進める。
- 渇水・災害と施設老朽化への備えとして、ハード・ソフト両面の対策を推進する。
- 水利用の効率化と水環境の保全を、施設運営や地域の取組に組み込む。
- 気候変動への適応と温室効果ガス削減を、水循環政策の各分野で進める。
概要
章「水の適正かつ有効な利用の促進等」は、安全で良質な水の確保、持続可能な上下水道、危機的な渇水への対応、災害対応、水インフラの維持・更新、水の効率的な利用、水環境と生態系、水辺空間、水文化、地球温暖化への対応を扱う。水道・下水道、農業水利、河川、森林、地下水などに関する令和7年度の政府施策を記載する。
背景として、人口減少や施設の老朽化に加え、気候変動に伴う少雨や大雨の変化が示される。白書は、水供給の安全度、災害対応、施設管理への課題を説明し、国、地方公共団体、利水者、事業者、住民などの情報共有と協働を求めている。
水循環を森林、河川、農地、都市、湖沼、沿岸域をつなぐものとして扱い、水量・水質の管理と生態系保全を関連付ける。施設整備や点検、制度・技術支援、雨水・再生水・地下水の利用、自然の浄化・貯留機能の活用などを分野横断的に記述している。
影響
オゾン処理などの高度処理技術の導入や水質管理の向上等により、カビ臭などの異臭味被害対象人口は平成2年度の約2,200万人から減少し、令和6年度は300万人程度となった。
令和7年1月の埼玉県八潮市の下水道管路破損事故では、トラック1台が巻き込まれ、運転手が死亡し、約120万人に下水道の使用自粛が求められた。令和7年8月からの大雨では住家被害や河川氾濫、土砂災害が生じ、水道施設で最大42,343戸の断水が発生した。
令和7年の少雨・高温を受け、農業用水の配水調整やポンプ・給水車の手配、経費補助などが行われる中、水稲はおおむね順調に生育した。
詳細
安全で良質な水の確保では、水道事業者等に「水安全計画」の策定または準じた危害管理を促し、水源から蛇口までの一体的なリスク管理を進めた。工場排水規制、地下浸透防止基準の遵守・点検、土壌汚染・農薬の管理、PRTR制度の届出集計・公表も実施した。PFOS・PFOAについては調査研究や情報提供を進め、令和7年12月に水質基準に準じた検査等を要請。令和8年4月1日の基準項目追加を前に、暫定目標値を超えた場合の濃度低減などの対応事例を提供した。
上下水道の基盤強化策として、施設再編、官民連携、DX、複数地方公共団体による事業運営の一体化を進め、地域事情や災害時の復旧を考慮した集約型・分散型システムの組合せ、省エネルギー化も推進した。ウォーターPPPの導入検討費補助や改築・更新費の支援、官民の情報交換、職員の知見を活用するマイスター制度を実施。検討会は令和8年1月に第2次とりまとめを行い、2050年を見据えた政策の方向性を検討している。
渇水対策では、水供給の安全度・リスクを評価し、関係者が情報を共有する体制と「渇水対応タイムライン」の策定を推進した。需要主導型からリスク管理型へ水資源開発基本計画を見直し、令和8年3月末時点で6水系5計画が完了、木曽川水系は令和7年11月に着手。令和7年度は新たに10水系のタイムラインを公表し、累計42水系となった。渇水対策本部の設置、ポータルでの状況公表、ポンプ・給水車の手配や応急費用の補助も行った。
水害・土砂災害対策では、河川・ダム・砂防施設の整備、ダムの事前放流、流域の貯留・浸透機能向上を進めた。ハザードマップやマイ・タイムラインの活用、要配慮者利用施設の避難体制支援、情報提供も実施。農業用ダムの事前放流、田んぼダム、ため池の雨水貯留、排水施設整備を推進し、府県単位の線状降水帯情報を継続。新たな防災気象情報は令和8年度出水期からの運用に向け準備した。
大規模災害時の水供給・排水機能を保つため、耐震化、系統間の送水、貯留施設、汚水処理施設のネットワーク化、相互応援、応急給水、BCP、地下水などの代替水源利用を推進した。令和7年度は17災害に延べ約3,000人・日のTEC-FORCEを派遣。能登半島地震を踏まえた耐震化計画、復旧手順やマニュアルの見直し、可搬式浄水施設の活用なども進めた。
老朽化対策として、個別施設計画や点検・修繕、更新、統廃合、広域化を通じた維持管理を進める。水道法に基づく資産管理、下水道の維持修繕基準、工業用水道の更新・耐震・アセットマネジメント指針を活用した。令和7年3月時点で水道事業者等の約95%がマッピングシステムを整備。基幹的農業水利施設は令和5年度時点で、標準耐用年数を超過した施設が全体の5割を超えていた。
水の効率利用では、漏水防止、農業水利施設の遠隔監視・制御、ICTを用いた水管理を進めた。雨水利用施設の整備・普及啓発、再生水の雑用水・農業用水等への利用、節水情報の発信も実施した。水環境では生活排水処理、排水規制、地下水汚染対策、浄化・浚渫、閉鎖性海域の窒素・リン管理などを行った。河川のBOD環境基準達成率は95%付近で推移する一方、湖沼のCOD達成率はおおむね50~60%程度と記載する。
生態系施策では河川、湖沼、湿原、沿岸域などの調査・モニタリング、外来種対策、自然再生、渡り鳥の保全、地域活動への支援を実施した。民間等の活動区域を認定する自然共生サイトは令和8年3月時点で累計569か所。水辺空間では「かわまちづくり」や湧水保全、親水施設を進め、水文化では水源地域整備、上下流交流、地域の歴史や農業用水を語り継ぐ活動を支援した。
地球温暖化への対応として、再生可能エネルギー導入、省エネルギー、森林整備による吸収源対策と、渇水・水害等への適応を進めた。水力・小水力発電、ダム運用の高度化、水上太陽光、下水汚泥のエネルギー・肥料利用などを支援。気候変動を踏まえた河川整備、浸水対策、水質モニタリング、農業用水管理も実施し、気候変動の水資源・水質への影響評価を検討した。