労働政策研究・研修機構(JILPT)による、インドのギグワーカーの法的保護に関する連邦法と州法の現状分析レポートです。2020年社会保障法典とカルナータカ州法を中心に、ギグワーカー保護の法制度整備の進展と課題を詳細に報告しています。
主要なポイント
1. インドのギグエコノミーの重要性と課題
- 2047年までの先進国入りを目指すインドでギグエコノミーが経済成長の牽引役と位置づけ
- 現行法ではギグワーカー保護に多くの欠陥が存在
- 1970年契約労働法や1923年雇用補償法などの既存法規制ではギグワーカーは適用対象外
- プラットフォーム型労働の流動性、一時性、分散性に既存法が対応できていない
2. 2020年社会保障法典による定義
- インド法で初めてギグワーカーとプラットフォームワーカーを法的に定義
- ギグワーカー:従来の雇用主・従業員関係の枠外で収入を得る者(第2条35項)
- プラットフォームワーカー:プラットフォーム企業の業務に従事する者(第2条61項)
- 非組織労働者:プラットフォームに属さないギグワーカー(第2条86項)
3. 連邦法の限界と実施の遅れ
- 2020年社会保障法典は連邦議会で可決されたが、各州の施行令手続きが未完了
- ギグワーカーを「労働者」として認めず、誤分類問題を棚上げ
- 国家社会保障委員会の設置を義務付け(第6条)も実現せず
- 条文の曖昧な文言により実効性が欠如
4. 州レベルの法整備の進展
- ラジャスタン州:2023年7月24日に最初のギグワーカー法を制定
- 中央取引情報管理システム(CTIMS)による報酬支払い監視制度を確立
- カルナータカ州:2025年5月27日に条例を公布し法律を施行
- ジャールカンド州、テランガーナ州でも法案審議中
5. カルナータカ州法の特徴と問題点
- ギグワーカー福祉委員会の設置を規定
- プラットフォーム企業から各取引の1~5%を福祉手数料として徴収
- アルゴリズム管理に関する規制と説明責任の義務付けが前進
- 対面苦情処理窓口の設置を義務化
- 州議会再開後6週間以内に承認が必要(承認なければ失効)
6. VVGNLIの提言と今後の方向性
- 全国登録簿の設立による社会保障の確保
- 「労働者」と「独立請負業者」の区別基準の確立
- ギグワーカーへの労働団結権・団体交渉権の付与
- アルゴリズムの透明性確保による公正な報酬・労働条件の実現
- 2047年までにギグエコノミーを高収入の組織化セクターへ転換
記事は、インドのギグワーカー保護法制が連邦・州レベルで整備されつつも、実効性や労働者としての権利保障に課題が残されており、より包括的な労働関係法制の整備が必要であることを明らかにしています。