労働政策研究・研修機構(JILPT)が2025年8月1日に発行した主要労働統計指標について、日本の労働市場の最新動向を5つの主要分野にわたって詳細に分析したものです。
景気動向の評価 景気は米国の通商政策等による影響が一部にみられるものの、緩やかに回復していると判断されています。先行きについては雇用・所得環境の改善や各種政策の効果が緩やかな回復を支えることが期待される一方、米国の通商政策の影響による景気の下振れリスクには留意が必要とされています。物価上昇の継続が消費者マインドの下振れ等を通じて個人消費に及ぼす影響なども我が国の景気を下押しするリスクとして指摘されており、金融資本市場の変動等の影響についても注意深い必要があります。
生産動向の詳細分析 鉱工業生産指数は季節調整前月比で5月に0.1%の低下、6月に1.7%の上昇となりました。製造工業生産予測指数では、7月が1.8%の上昇見込み、8月が0.8%の上昇見込みとなっており、製造業における生産活動に回復の兆しが見られます。
雇用・失業情勢の現状 6月の雇用者数は前年同月差で66万人増となり、堅調な雇用拡大が継続しています。常用雇用指数(規模5人以上)は前年同月比で1.7%増加し、このうち一般労働者が1.1%増、パートタイム労働者が前年同月比で2.8%増となっています。完全失業率(季節調整値)は2.5%、有効求人倍率(季節調整値)は1.22倍と、雇用環境の改善が数値で確認されています。
賃金・労働時間の動向 5月の現金給与総額(規模5人以上)は前年同月比で1.4%増となり、実質賃金(現金給与総額から消費者物価指数を除く総合で実質化)が2.6%減、実質賃金(現金給与総額から消費者物価指数(総合)で実質化)が2.0%減となりました。総実労働時間(規模5人以上)は前年同月比で1.7%減となり、このうち所定内労働時間が1.8%減、製造業の所定外労働時間(規模5人以上)が前月比で0.4%増となっています。
物価動向の監視 6月の消費者物価(総合指数)は前年同月比で3.3%上昇となり、物価上昇圧力の継続が確認されています。この物価上昇が実質賃金の減少要因となっており、家計への影響が懸念される状況です。
記事は、日本の労働市場が雇用面では堅調に推移している一方、実質賃金の減少や物価上昇圧力など課題も抱えており、今後の政策対応や経済動向を注意深く監視する必要があると分析しています。