第110回年金数理部会:令和6年度公的年金財政状況と併給統計

概要

第110回社会保障審議会年金数理部会は、令和6年度公的年金財政状況報告案を審議・承認した。制度全体では運用損益を除く単年度収支残がマイナスとなった一方、積立金は増加した。実績は被保険者数や積立金などで財政検証の将来見通しを上回ったが、出生率や実質賃金上昇率は財政にマイナスの要素となった。併せて、老齢基礎年金と遺族厚生年金などを個人単位で合算する新統計が報告された。

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要点

  • 令和6年度報告書案は、修文意見なく部会の報告として承認された。
  • 短期的な実績の変動ではなく、将来見通しとの乖離を中長期の財政均衡から評価した。
  • 併給を反映した個人単位の年金額分布が、実態把握の新たな基盤となった。
  • 外国人被保険者の属性分布と制度への影響分析が今後の検討課題となった。

概要

年金数理部会は、各制度・実施機関の報告を基に、公的年金の毎年度の財政を横断的に分析・評価し、財政検証との比較を含む報告書を作成する。令和6年度は、令和6年財政検証の前提・将来見通しと実績を比較する初年度に当たった。

制度全体の収入は保険料43.1兆円、国庫・公経済負担12.1兆円、運用損益を除く収入総額55.7兆円だった。支出は給付費55.3兆円を含む55.8兆円で、単年度収支残はマイナス0.1兆円となった。

時価ベースの運用損益はプラス2.0兆円で、年度末積立金は前年度末から2.0兆円増え、306.0兆円となった。

主要数値

対象年度
令和6(2024)年度
制度全体の保険料収入
43.1兆円
制度全体の年度末積立金
306.0兆円
厚生年金の短時間労働者企業規模要件(令和6年10月)
100人超から50人超へ拡大
公的年金全体の被保険者数増加率
前年度から0.2%増加
厚生年金被保険者数増加率
全体で1.6%増加
短時間労働者の増加率
21.2%増加
受給権者の年金総額
59.6兆円
外国人入国超過数(令和6年)
34.2万人(342,000人)
財政検証で最も高い外国人入国超過数の仮定値
25万人

影響

被保険者数と積立金の実績は将来見通しを上回った一方、合計特殊出生率は出生低位の仮定値とおおむね同水準、実質賃金上昇率は全ケースの前提を下回った。こうした乖離が中長期化すれば、年金財政への影響は大きくなる。

令和6年度の積立金乖離は厚生年金計でマイナス12.9兆円からマイナス11.4兆円となったが、評価の基準となる財源との比率ではプラス0.7~0.8%、平滑化後ではプラス1.1~1.2%とされた。

出生、死亡、働き方、外国人の入国超過などの動向は、被保険者構成や将来の制度運営に関係するため、単年度の変化に左右されず継続的な分析が必要とされた。

詳細

報告書は、公的年金の基本事項を扱う第1章、被保険者・受給権者・財政収支・財政指標の実績を分析する第2章、令和6年財政検証との比較や積立金乖離を扱う第3章、付属資料で構成される。厚生年金計は共済組合等を含め、制度内の拠出金・交付金を相殺して全体像を整理した。

被保険者では、国民年金第1号・第3号が減少し、厚生年金が増加する傾向が続いた。短時間労働者の適用拡大後は適用者数が増え、令和6年度末には年齢分布と標準報酬月額分布のピークが高年齢・高等級側へ移った。

新たな「老齢基礎年金の併給状況」統計は、基礎年金番号で個人を名寄せし、老齢基礎年金と老齢厚生年金・遺族厚生年金を合算した。老齢基礎年金と遺族厚生年金の併給者は492万人、うち女性は483万人、平均年金月額は13.7万円だった。

同統計では、老齢基礎年金のみの受給者は398万人、既存統計上の老齢のみの範囲は581万人だった。女性の平均年金月額は既存統計の7.9万円に対し今回9.4万円、遺族厚生年金は8.5万円に対し13.1万円となり、併給を含める集計方法の差が示された。

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