令和8年版 水循環白書|第5章令和8年版 水循環白書 第5章 健全な水循環に関する教育・人材育成の推進等
概要
第5章「健全な水循環に関する教育・人材育成の推進等」は、水の公共性と国民生活との関わりを踏まえ、教育・普及啓発、人材育成、国際人的交流を記述する。学校教育では発達段階に応じた教材の活用や講座を行い、地域では展示、体験活動、施設見学などの学習機会を設ける。水インフラ分野の人材育成では、研修、資格制度、産学官民連携を進め、国内外の交流や専門家派遣を通じて人材を育て、水関連の知見を共有・発信する。
要点
- 教材、展示、現場体験を通じ、学校と地域の双方で水循環を学ぶ機会を設けた。
- 水インフラを担う人材の育成・確保に向け、研修や資格制度、産学官民の連携を進めた。
- 国際機関や各国との交流、専門家派遣を通じ、国際的に活動する人材の育成と水関連の知見の発信を図った。
概要
水は国民共有の貴重な財産で、公共性が高く、人の生活の様々な面に深く関わる。国民が健全な水循環の維持又は回復の重要性を理解し、自ら取り組める環境づくりを進めるため、こどもの頃から水の大切さや水を大事に使う考え方・行動を学ぶ学校教育を推進する。また、「水の日」「水の週間」関連行事などを通じ、こどもを含む全ての国民が水と触れ合う機会を設け、水や水源への理解を深める普及啓発・広報を行う。
人材育成は水循環施策の基礎とされる。日本には、ダムの統合管理、水道管の漏水対策、膜処理による海水淡水化などの高度技術と、農業用水や生活用水を適切に管理する運用経験が蓄積されている。これらを実務経験の積み重ねを通じて次世代へ継承することが必要とされる。人口規模など社会構造の変化の中で、水インフラの運営、維持管理・更新、調査・研究、技術開発を担う人材が不足し、適切な管理水準を確保できなくなる懸念が示されている。技術の高度化・統合化に伴い、研究者や技術・情報を使う実務者の資質・能力も高度化・多様化するため、国内外や分野を越えた人材の循環・交流を促す方針である。
詳細
(1)水循環に関する教育の推進(学校教育での推進)。平成29・30年告示の学習指導要領を踏まえ、発達段階に応じた教育を進め、関係省庁が教材等を学校へ周知した。令和2年度作成の学習教材は全国の小学校の理科、社会、総合的な学習の時間等で活用され、「水循環教材の活用事例集」に実践例をまとめた。令和5年度には教材内容を収めた展示セットを制作し、巡回展示の事例を追加した事例集を令和6年度からウェブサイト等で公表している。中学校向けの副読本・動画等も令和6年度から公表した。令和7年度には学校教員、水インフラ管理者、社会教育施設職員、地方公共団体等の教育関係者を対象に「水循環教育スキルアップ講座」を宮ヶ瀬ダム及び宮ヶ瀬ダム水とエネルギー館で開催した。
(連携による教育推進)「水の日」関連行事はポスター掲示や水道事業者等への情報提供で周知した。団体と連携して作成した教材を、学校のほか、自治体の出前講座、川や水の資料館、ダムなどで活用した。令和5年度作成の展示セット「めぐる水を考えよう!」は令和7年度に水関連イベント、図書館、浄化センター等13か所を巡回し、日程をウェブサイトで公開した。若年層が水道の歴史や現状を学び、将来あるべき水道を議論して同世代へのメッセージを作る水道啓発セミナーも実施した。
栗田工業株式会社のKurita Innovation Hubでは、東京学芸大学の学生が施設見学で水処理の基本を学び、水処理技術と生活・産業との関わりを確認した。イオン交換試験とRO試験を体験して処理プロセスへの理解を深め、体験を学校教育に取り入れる意義や課題を考えた。持続可能な開発のための教育(ESD)の視点を取り入れた環境教育プログラム等を通じ、水循環への理解促進と地域の多様な主体の連携を図った。
(現場体験を通じての教育推進)農地の多面的機能や必要な整備への理解・関心を高めるため、農林漁業体験等を推進した。森林では体験活動の場の情報提供、国有林での林業体験や森林教室を実施し、森林環境教育関係者の発表・意見交換の場として「こどもの森づくりフォーラム」を開催した。治水・利水・環境に関する現地見学会や出前講座も行った。
(2)産学官民が連携した人材育成と国際人的交流(産学官民が連携した人材育成)。法令・施策・取組の研修、「地下水マネジメント研究会」「水循環企業連携フェア」の開催、水循環アドバイザー派遣を行った。民間事業者の森林を活用した防災・減災技術をグローバルサウス諸国で展開するため、情報ハブ構築等で案件形成を促進した。気象防災アドバイザーの委嘱、気象予報士研修、自治体防災課題の抽出・解決策の試行検証、首長への活用働き掛けを行い、研修・訓練を通じ自治体職員の育成も支援した。
第4回アジア・太平洋水サミットを契機とする「ユース水フォーラム」では、令和7年8月に「水未来会議2025」を開催し、世代間連携による水問題解決へのメッセージを取りまとめた。国内外の高校生世代から募った動画作品のうち6点を、同年9月の大阪・関西万博の政府展示ブースで上映した。工業用水道事業に関わる自治体等職員には基本、政策方向、災害時対応を含む研修を行った。水道行政担当者や事業者等の会議・研修で情報・課題を共有し、知識習得と技術力向上を図った。森林インストラクター等の登録資格制度も周知した。
河川環境の専門知識と川づくりへの熱意を持つ人を河川環境保全モニターに委嘱し、環境の保全・創出や秩序ある利用に関する業務、普及啓発を行った。河川愛護モニターは不法投棄や施設異常等の情報を集め、河川愛護の普及啓発を担う。平成25年6月の河川法改正で、河川環境の整備・保全等に自発的に取り組む民間団体等を河川協力団体に指定し、河川管理者と連携する団体と位置付け、自発的活動を促して地域の実情に応じた河川管理を推進した。
(国際人的交流)かんがい排水分野では、国際かんがい排水委員会(ICID)、国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)の活動や、インドネシア、タイ、ベトナム等との二国間技術交流を通じ協力関係を強化した。FAO、メコン河委員会、アジア開発銀行、OECDへの職員派遣や、開発途上国へのJICA専門家派遣も行い、国際的に活動できる人材の育成を進めた。
令和7年8月の横浜開催「第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)」で採択された横浜宣言は、アフリカで自然災害が増加する状況を踏まえ、リスク情報に基づく開発の災害リスク軽減上の役割を確認した。テーマ別イベントでは国際機関と人的交流を行い、アフリカの水関連リスクの課題解決への貢献を表明した。同月の「ストックホルム世界水週間 2025」では日本の水防災の取組を発信した。令和7年10月の「カイロ水週間 2025」では「国連水会議 2026」に向けた議論を主導する考えを表明し、同年12月の「OECD ハイレベルリスクフォーラム」では水防災投資の重要性等を発信した。
上下水道分野では、開発途上国にJICA専門家を派遣して組織体制や法制度の整備を支援した。JICA草の根技術協力事業を通じ、日本の地方公共団体等が運営管理に関する人材を育成した。日本サニテーションコンソーシアムと連携し、令和7年12月にタイで開かれたアジア・太平洋水フォーラム執行審議会等の国際的議論に参加し、日本の汚水管理の知見を発信した。平成30年から世界水パートナーシップのテクニカル・コミッティに参加するJICAは、令和7年度も統合水資源管理分野の交流を続けた。