金融庁が、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)による移行計画に関する2つの重要文書の公表について発表したものです。
NGFSは2025年7月16日に、「移行計画の目標設定に関する文書」(Note on Target setting and Transition plans)と「シナリオ分析と移行計画の相互作用に関する文書」(Note on the Interactions between scenario analysis and Transition plans)を公表しました。
移行計画の目標設定に関する文書
この文書は、移行計画について金融機関と対話を行おうとする金融当局向けに作成されたガイダンスです。主な内容として、金融機関が設定可能な気候変動の緩和(mitigation)および適応(adaptation)に関する目標の概要、目標達成のために金融機関が講じることができる具体的な行動の説明、金融当局が金融機関に対して提示し得るサンプル質問集が含まれています。これにより、金融当局と金融機関の間で効果的な対話を促進し、移行計画の実効性を高めることを目的としています。
シナリオ分析と移行計画の相互作用に関する文書
この文書では、気候変動シナリオ分析と移行計画がどのように相互に作用し、補完し合うかを詳細に分析しています。金融機関がシナリオ分析や移行計画を発展させていく上で考慮すべきハイレベルな推奨事項が提示されており、両者を統合的に活用することで、より効果的な気候変動リスク管理と戦略策定が可能になることを示しています。
NGFSの取組みの背景と意義
NGFSは、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討し、グリーンファイナンスの推進を目的として設立された中央銀行および金融監督当局の国際的なネットワークです。今回公表された文書は、金融セクターにおける気候変動対応の実務的なガイダンスを提供するもので、各国の金融当局が金融機関の移行計画を評価・監督する際の共通的なフレームワークを提供しています。
日本の金融行政への影響
これらの文書は、日本の金融機関が策定する移行計画の質的向上に寄与することが期待されています。金融庁は、これらの国際的なガイダンスを参考にしながら、日本の実情に合わせた監督アプローチを展開していくものと考えられます。特に、TCFDに基づく気候関連財務情報開示の高度化や、トランジション・ファイナンスの推進において、重要な指針となることが予想されます。
記事は、気候変動対応における金融セクターの役割がますます重要となる中、国際的な協調の下で実効性のある移行計画の策定・実施に向けた取り組みが進展していることを示しています。