金融庁と日本銀行は、3メガバンクと連携して気候関連リスクに係る第2回シナリオ分析を実施し、その結果を2025年6月20日に公表しました。本分析は、第1回(2022年8月実施)に続く取り組みであり、気候関連リスクの定量的把握ではなく、分析手法の課題把握と改善を主目的としています。
今回の分析では、銀行の財務への影響が大きい貸出金等の与信への影響(信用リスク)を対象とし、従来のNGFSシナリオに加えてストレスを加えた独自シナリオも設定しました。これにより、従来の30年間ではなく、より短期間の7年間での移行リスク分析を実施し、実務的な観点からの検証を強化しています。
第1回分析以降の進展として、参加行のセクター専用モデルによる分析可能範囲の拡大やモデル関連文書の整備が確認され、分析態勢の充実が図られました。特に、鉄鋼、電力、海運、航空、自動車などの炭素集約的セクターにおいて、より精緻な分析が可能となりました。これらの改善により、参加行間での分析結果の比較を通じて、シナリオ分析の活用に向けた課題について、より深度のある対話が実現されています。
分析の主要な成果として、気候政策の強化による炭素価格上昇が企業の収益性に与える影響の定量化手法が向上し、業種別・地域別のリスク特性がより明確になりました。また、移行リスクと物理的リスクの相互作用についても、従来より詳細な分析が可能となっています。
今後の展開として、金融庁・日本銀行は第1回・第2回分析を通じて明らかになった課題への対応方向性を含め、シナリオ分析の手法や活用方法について金融機関との議論を継続していく方針です。これには、データ整備、モデル高度化、リスク管理への統合などの技術的課題に加え、開示の充実や投資家との対話促進といった実践的な活用面での改善も含まれています。