本間ゴルフ(東京都港区)のEPA活用事例を通じて、RCEPの累積制度を活用した原産地規則の達成方法と社内体制構築の実践例を解説したものです。
同社はゴルフクラブやゴルフウェアなどのゴルフ関連製品の製造・販売を行い、日本国内のほか、アジア・欧州・米国など海外へも輸出しています。輸出金額ベースでは韓国が最も多く、中国、東南アジア、米国、欧州と続きます。主要製品のゴルフクラブは山形県酒田市の自社工場で組み立て、ソフトグッズ製品(ゴルフウェア、キャディバッグ、ヘッドカバーなど)は中国でOEM生産を行っています。
EPA活用の取り組み
EPA利用のきっかけはタイの輸入者からの依頼で、当初は知識がなかったものの、取引先の商社やフォワーダーから学びながらノウハウを蓄積してきました。現在は韓国向けにRCEP協定、タイ・インドネシア向けにAJCEP協定を活用し、通常より低い関税率を享受しています。原産地規則については、ゴルフクラブは部分品と完成品のHSコードが4桁レベルで変わらないため、関税分類変更基準ではなく付加価値基準を採用しています。
RCEPの累積制度活用
中国から輸入するヘッド部品について、RCEPの累積規定を効果的に活用しています。中国がRCEPの締約国であるため、ヘッドを原産材料として扱い、原産付加価値の計算に入れ込むことで原産地規則を満たしています。さらに、ヘッドを香港経由で輸入する際には、原産性を保つために未再加工証明書を取得しています。証明制度については現在も第三者証明制度を利用していますが、年間80~100個の新商品に対する原産地証明書の発給手数料がかさむため、将来的には認定輸出者自己証明制度や自己申告制度への切り替えも検討しています。
社内体制の課題と改善
長年、宮川芽位子氏が一人でEPA利用手続きを担当してきましたが、原産地証明書の発給件数増加により対応が困難になり、新製品について即時対応できず遡及発給するケースも多い状況でした。この課題に対し、他の輸出担当者もEPA利用手続きができるよう社内研修を進めており、今秋の新商品からは輸出と同時に原産地証明書を発給できる見込みです。即時対応体制の確立により、EPA利用を交渉材料として手数料徴収や取引量増加につなげることが期待されています。
記事は、RCEPの累積制度を活用することで原産地規則を満たし、段階的な社内体制整備によってEPA活用の効果を最大化できることを実例で示しています。