金融機関における生成AIの利用状況とリスク管理―2026年度アンケート調査結果から―
概要
日本銀行金融機構局は、取引先金融機関150先を対象に実施した生成AI利用状況アンケートと、金融機関・ITベンダー等との意見交換を踏まえ、金融業界における生成AI活用の現状、課題、リスク管理上の論点を整理した。9割強の金融機関が利用・試行中で、汎用的な事務処理から顧客情報を利用するコア業務へ活用が拡大している。一方、ガバナンス、サードパーティリスク管理、セーフティ・セキュリティ等には改善余地があり、今後の活用拡大には経営層の関与と適切な体制整備が求められる。
要点
- 生成AIの活用は、汎用的な事務処理から顧客情報を利用するコア業務へ広がっている。
- 生成AIの出力を顧客に直接提示する金融機関は、現時点では少数にとどまる。
- ガバナンス、サードパーティリスク管理、セーフティ・セキュリティには改善余地がある。
- 今後の活用拡大には、経営層の関与とリスク管理体制の整備が重要となる。
概要
生成AIは急速に社会へ浸透し、わが国金融機関でも利用が拡大している。汎用的な事務処理に加え、顧客情報を活用するコア業務へと用途が広がっており、今後も技術進歩を取り込みながら活用の拡大・高度化が見込まれる。
活用に伴う特有のリスクとして、情報漏洩リスクと、出力・挙動の不確実性が挙げられる。これらを理解したうえで、リスクベース・アプローチに基づく管理体制の整備が求められている。
本レポートは、アンケート結果に加え、金融機関およびITベンダー等との意見交換の内容を踏まえ、利用の現状と課題、リスク管理上の論点を整理したものである。
影響
生成AIの活用が進むもとで、金融機関が直面する課題や管理が求められるリスクは、複雑化・多様化すると考えられている。
金融機関には、安定的な業務運営と両立しながら生成AIの活用を進めるため、経営層が便益とリスクを把握して関与・主導し、必要なリソースと体制を整備することが求められている。
詳細
日本銀行は、取引先金融機関のうち150先を対象にアンケートを実施した。これは2024年度以降で3回目の調査である。
調査では、9割強の金融機関が生成AIを利用または試行中であり、全業態で活用割合が増加した。特に第二地銀では、この1年間の増加が目立った。
利用開始後の評価では、「業務に利用できるが、改善の余地がある」との回答が多かった。その背景として、金融機関自身の活用能力向上や、今後の生成AIの技術進歩への期待が示されている。
情報管理および実務ルールは相応の金融機関で整備されている。一方、ガバナンス、サードパーティリスク管理、セーフティ・セキュリティ等では、「改善の余地がある」または「検討中」とする金融機関が多い。
課題への対応では、ガイドライン等やITインフラの整備に改善が進んだとする金融機関が多い一方、事業推進、人材育成、ITインフラ・データの整備、サイバー攻撃対策が今後の課題として意識されている。顧客への出力の直接提示、AIエージェント、フロンティアAIの導入では、リスク管理とガバナンス面の対応が重要となる。
日本銀行は今後も、考査・モニタリングやセミナー等を通じて生成AIの活用状況を把握し、金融機関との間でリスク管理やガバナンスのあり方について対話を続ける方針である。