金融庁、暗号資産等のAML情報共有実証実験の結果を公表
概要
金融庁は、暗号資産等のマネー・ローンダリング対策として、複数の民間事業者が疑わしいアドレスや取引情報を共有し、共同で分析する枠組みを検証した実証実験の結果を公表した。業界横断の情報活用、リスト照合とAIの組み合わせ、事後・即時・トークンの各モニタリング機能に一定の可能性が確認された一方、アラートだけで届出や取引制限等を判断せず、追加調査と事業者の責任ある判断が必要とされた。個人情報保護、データ品質、訂正・削除、アクセス管理などのデータガバナンス整備も課題として示された。
要点
- 民間事業者間のAML情報共有に業界横断で活用できる可能性を確認した。
- リスト照合とAI分析の併用で、既知リストに載っていないリスク兆候を補完的に把握し得る可能性が確認された。
- 事後、オンライン即時、トークンの各モニタリング機能に実務的可能性があった。
- アラートのみでの判断を避け、追加調査とデータガバナンスが必要とされた。
概要
金融庁は、フィンテック企業や金融機関が前例のない実証実験に取り組む際の躊躇や懸念を払拭するため、平成29年9月21日に「FinTech実証実験ハブ」を設置した。
今回公表されたのは、本スキームで支援を決定した第13号案件で、令和8年2月27日に公表された実証実験である。実験は令和8年3月から5月まで実施された。
暗号資産等は国境を越えて瞬時に移転できる一方、ブロックチェーンアドレスだけでは保有者の身元を特定できない。この課題を背景に、民間事業者の共同情報連携の有効性と法的論点が検証された。
主要数値
- 公表日
- 令和8年7月24日
- FinTech実証実験ハブ設置日
- 平成29年9月21日
- 支援決定案件番号
- 第13号案件
- 実施期間
- 令和8年3月から令和8年5月まで
- 企業名非公表の参加企業数
- 3社
影響
疑わしいアドレスや取引情報を業界横断で共有できれば、個社だけでは把握しにくいリスクの兆候を活用し、暗号資産等のマネー・ローンダリング対策を高度化・効率化できる可能性がある。
一方、誤検知により顧客等の権利利益が不当に害されることがないよう、アラートの根拠が分かる仕組みを整え、事業者が個別具体的に判断することが求められる。
今後は、暗号資産等の分野でも事業者同士の「共助」によるAML対策の高度化・効率化が期待される。
詳細
申込者は株式会社日立製作所。参加金融機関等には、株式会社あおぞら銀行、JPYC株式会社、GMOコイン株式会社、Chainalysis Japan株式会社、株式会社DCP、Digital Platformer株式会社、日本電気株式会社、日本ブロックチェーン基盤株式会社、株式会社finoject、ビットバンク株式会社、楽天ウォレット株式会社、Laser Digital Japan株式会社、有限責任あずさ監査法人、株式会社デジタルアセットマーケッツ、企業名非公表3社が含まれる。
共有対象は、疑わしいアドレス、トランザクション情報、リスクカテゴリ、リスクスコア、検知理由、情報源、確認日時などである。評価では、事業者間共有情報、制裁・犯罪関連性、詐欺関連アドレス、取引行動類似度、使い捨てアドレス等を組み合わせた。
モニタリングシステムは、継続的な顧客管理や取引監視に使う事後モニタリング、取引実行前に移転先アドレスを確認するオンライン即時評価、電子決済手段の保有・移転状況を把握し凍結・消却に用いるトークンモニタリングを検証した。
アラートだけでは疑わしい取引の届出、取引制限、電子決済手段の凍結・消却の判断に不十分な場合があり、資金の流れ、公開情報、関連アドレス等の追加調査が必要と確認された。
金融庁は、アラートの根拠を把握可能にし、データの関連性・正確性・最新性、訂正・更新・削除・権利行使の手続を整えるよう助言した。同意に基づく個人データの第三者提供では、提供時点で有効な同意が存在すれば、過去に収集した個人データの提供も認められると整理された。一方、財産保護例外の適用では、本人の不利益、提供の必要性、本人が詐欺等に関連している蓋然性、データと提供先の範囲の合理性などを踏まえ、個別具体的に利益衡量する必要がある。
参加者は、共有範囲・条件、データ品質、管理責任者、保存期間、訂正・削除、検知ロジックの改善、アクセス制御、権限管理、監査ログ、苦情・異議申立てへの対応を検討し、法的検討とプライバシー影響評価を踏まえて社内規則、契約、運用ルールを整備する必要を確認した。