レポート一覧

フィールド・アイ:「自転車大国」、自転車抜きで(ライデンから2)

有泉明ライデン大学客員研究員による「フィールド・アイ」シリーズの第2回で、オランダ・ライデンでの生活体験から見た「自転車大国」の実情を労働と生活の視点から報告しています。オランダは世界有数の自転車利用国として知られていますが、筆者が実際にライデンで生活する中で体験した自転車を使わない日常の様子を描いています。公共交通機関の充実、徒歩での移動可能性、デジタル化による外出頻度の減少など、必ずしも自転車...

論文Today:HRMはキャリア自律と職務行動の関係に影響を与えるのか?

斉藤航平学習院大学大学院博士後期課程による「論文Today」で、人的資源管理(HRM)がキャリア自律と職務行動の関係に与える影響を実証分析した最新研究を紹介しています。現代の働き方改革や雇用の流動化により、従業員の「キャリア自律」(自らのキャリアを主体的に管理する能力)が重視されていますが、その効果は企業のHRM施策によって左右されることが明らかになっています。研究では、キャリア開発支援、能力開発...

読書ノート:経済協力開発機構(OECD) 編著/是川夕・江場日菜子 訳『日本の移住労働者~OECD労働移民政策レビュー:日本』

井口泰関西学院大学名誉教授による読書ノートで、OECD編著「日本の移住労働者─OECD労働移民政策レビュー:日本」(明石書店)を移民政策と労働市場の視点から詳細に紹介しています。本書はOECDによる日本の外国人労働者受け入れ政策の包括的評価で、技能実習制度、特定技能制度、高度人材受け入れなどの現状と課題を国際比較の観点から分析しています。特に、日本の移民政策が建前上は「移民国家ではない」としながら...

読書ノート:大橋重子 著『個人と組織の心理的距離~距離をとる行動のバリエーションと影響』

林祥平中央大学准教授による読書ノートで、大橋重子著「個人と組織の心理的距離─距離をとる行動のバリエーションと影響」(勁草書房)を組織心理学と労働心理学の観点から紹介しています。本書は職場における個人と組織の関係を「心理的距離」という概念で分析した研究書で、従業員が組織に対してとる様々な距離感とその行動パターンを類型化しています。特に、組織コミットメント、職務満足、離職意向などの従来の組織行動研究に...

書評:西村和雄・八木匡 編著『学力と幸福の経済学』

山村英司西南学院大学教授による書評論文で、西村和雄・八木匡編著「学力と幸福の経済学」(日本評論社)を労働経済学の視点から詳細に検討しています。本書は教育と幸福度の関係を実証的に分析した研究書で、学力向上が必ずしも幸福度向上に直結しないという興味深い知見を提示しています。特に、過度な競争的教育環境が子どもの幸福度に与える負の影響、学習時間の長さと学習効果の関係、親の教育期待と子どもの学習意欲の相関な...

インタビュー:企業の組織再編と労働運動~そごう・西武労働組合のストライキをめぐって:ストライキ

2023年に発生したそごう・西武労働組合のストライキをめぐる当事者インタビューで、企業の組織再編期における労働運動の実態を詳細に記録した貴重な証言集です。寺岡泰博そごう・西武労働組合中央執行委員長と西嶋秀樹髙島屋労働組合中央執行委員長らが、セブン&アイ・ホールディングスによるそごう・西武売却問題とこれに対する労働組合の対応について語っています。特に、雇用不安、労働条件変更、事業譲渡に伴う労働者の権...

フリーランスへの団結権保障は「集団的物乞い」の承認で足りるか~EUにおける経緯と議論から:ストライキ

井川志郎中央大学教授による論文で、フリーランス労働者の団結権保障をめぐるEUの議論と政策展開を詳細に分析しています。フリーランスなど非雇用労働者の増加に伴い、従来の労働法制度では保護されない労働者の権利保障が重要課題となっています。EUでは、競争法(独占禁止法)との関係でフリーランスの団体交渉権が制約されてきましたが、近年、労働者保護の観点から政策転換が図られています。本稿では「集団的物乞い」とい...

ストライキと労働組合再生の道~アメリカを事例として:ストライキ

新川敏光法政大学教授による論文で、アメリカの労働組合再生事例を通じてストライキの役割と可能性を考察しています。1980年代以降、アメリカでは労働組合組織率の著しい低下が続いていましたが、近年、若年労働者を中心とした新たな労働運動の展開により組合活動が活性化しています。特に、スターバックス、アマゾン、アップルなどの大手企業での組合結成運動や、教師、看護師、運輸労働者などによる大規模ストライキが注目さ...

ストライキと組合活動の経済学的考察~日本の労働組合員の意識データを用いた実証分析:ストライキ

齋藤隆志明治学院大学教授による論文で、日本の労働組合員の意識データを用いてストライキと組合活動の関係を経済学的手法で実証分析しています。労働政策研究・研修機構の「労働組合員の意識と行動に関する調査」データを活用し、組合員のストライキに対する態度、参加意欲、効果認識などを定量的に分析しています。分析結果では、年齢、勤続年数、職種、企業規模などがストライキ意識に与える影響を明らかにしており、特に若年層...