北海道財務局は2025年7月29日、管内の経済情勢報告を公表し、「管内経済は、持ち直している」との総括判断を示しました。これは前月判断を維持する内容で、北海道経済の改善基調が継続していることを示しています。
個人消費については「持ち直している」と評価され、小売売上高の改善や消費者マインドの回復が確認されています。特に、観光関連消費の回復が顕著で、道内観光地への来訪者数が増加し、宿泊・飲食サービス業の売上が向上しています。札幌、函館、旭川などの主要都市部での商業施設売上の回復に加え、ニセコ、富良野、知床などの観光地でのインバウンド需要の段階的回復も消費押し上げに寄与しています。
生産活動は「持ち直している」状況で、製造業を中心とした改善が継続しています。北海道の主要産業である食料品製造業では、乳製品、水産加工品、農産加工品の生産が堅調に推移しており、特に高品質な北海道ブランド商品への需要が国内外で高まっています。また、製紙・パルプ工業、化学工業においても生産水準の回復が見られます。
雇用情勢は「改善している」と判断され、有効求人倍率の上昇と完全失業率の低下が継続しています。観光業、農林水産業、建設業での人手不足感が強まっており、特に季節労働者の確保が課題となっています。賃金水準も徐々に上昇しており、労働市場の需給逼迫が進んでいます。
農林水産業は北海道経済の重要な基盤であり、「持ち直している」状況です。農業では、米、小麦、大豆、じゃがいも、てん菜、酪農など多様な品目で全国トップクラスの生産量を誇っており、食料自給率の向上と高品質農産物の安定供給に重要な役割を果たしています。水産業では、サケ・マス、ホタテ、カニ、昆布などの水揚げが安定しており、加工・流通の高度化により付加価値向上が図られています。
林業では、豊富な森林資源を活用した木材生産・加工が行われており、建築用材から製紙原料まで幅広い用途に供給されています。近年では、木質バイオマス発電の燃料としての需要も拡大しており、森林資源の有効活用が進んでいます。
観光業は北海道経済の成長分野として位置づけられており、自然景観、温泉、食材、雪まつりなどの豊富な観光資源を活かした誘客活動が展開されています。特に、アジア系外国人観光客の増加により、スキー・スノーボード、温泉、グルメツーリズムなどの分野で大きな成長を遂げています。
エネルギー分野では、風力発電、太陽光発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーの導入が急速に進んでおり、豊富な自然資源を活かしたクリーンエネルギーの供給基地としての役割が期待されています。
今後の見通しについては、農林水産業の6次産業化推進、観光業の質的向上、再生可能エネルギーの更なる拡大、食品加工業の高度化などが成長要因として期待される一方、人口減少・高齢化の進展、労働力不足、インフラの維持・更新などが課題として認識されています。