北陸財務局は、管内4県(新潟県、富山県、石川県、福井県)の経済構造の特徴と地域特性について、全国財務局長会議での報告資料として詳細な分析を行いました。本報告では、北陸地域の産業構造の特色、地理的優位性、近年の構造変化について包括的な整理が行われています。
北陸地域の経済構造の最大の特徴は、製造業の比重が全国平均を上回る約30%となっていることです。特に、化学工業、金属製品製造業、繊維工業、精密機械工業が地域経済の柱となっており、これらの産業は長い歴史と高い技術力を背景に競争力を維持しています。富山県の医薬品製造業は全国シェアの約20%を占め、「薬都富山」として全国的に知られています。
繊維工業では、福井県が合成繊維の生産で全国トップクラスのシェアを誇り、東レ、帝人、クラレなどの大手化学メーカーの主力工場が立地しています。また、石川県の金沢では伝統的な織物技術を活かした高付加価値繊維製品の生産が行われており、伝統と革新が融合した独特の産業構造を形成しています。
精密機械工業では、工作機械、産業用ロボット、計測機器などの分野で高い技術力を有する企業が集積しており、特に石川県のコマツ(小松製作所)は建設機械分野で世界的な地位を確立しています。また、富山県ではアルミ産業が発達しており、豊富な水力発電を活用したアルミ精錬から高付加価値アルミ製品まで一貫した産業チェーンが形成されています。
地理的優位性として、日本海側に位置し、中国・韓国・ロシア等の環日本海諸国との貿易において重要な拠点としての役割を果たしています。新潟港、富山港、金沢港、敦賀港などの港湾インフラを活用した物流ネットワークが構築されており、特に新潟港は本州日本海側最大の港湾として機能しています。
農林水産業も重要な産業基盤となっており、コシヒカリをはじめとする良質米の生産、日本酒の醸造、海産物(のどぐろ、ズワイガニ、ブリなど)の水揚げなど、食料供給において重要な役割を担っています。これらの一次産品は観光業とも密接に結びつき、地域ブランドとして高い評価を得ています。
近年の構造変化として、北陸新幹線の開業(2015年金沢延伸、2024年敦賀延伸)により首都圏との結びつきが強化されており、観光業の振興や企業誘致に大きな効果をもたらしています。特に、金沢を中心とした観光業は飛躍的な成長を遂げており、兼六園、金沢城、ひがし茶屋街などの歴史的観光資源と現代的な文化施設(21世紀美術館など)が融合した魅力的な観光地として国内外から注目を集めています。
エネルギー分野では、豊富な水力発電資源を活用した再生可能エネルギーの導入が進んでおり、特に小水力発電の普及率が高くなっています。また、原子力発電所も立地しており、エネルギー供給基地としての役割も担っています。
今後の課題と展望として、人口減少・高齢化の進展への対応、伝統産業の継承と革新、新産業の創出、インフラの老朽化対応、自然災害への備えなどが重要な政策課題として位置づけられています。