北海道財務局は、北海道経済の構造的特徴と最近の特徴的な動向について、全国財務局長会議での報告資料として詳細な分析を行いました。本報告では、広大な面積と豊富な自然資源を有する北海道経済の独特な構造と発展可能性について包括的な検討が行われています。
北海道経済の最大の特徴は、農林水産業の比重が全国平均を大幅に上回る約6％となっていることです。農業産出額は全国の約12％を占め、小麦（全国の約60％）、大豆（約30％）、じゃがいも（約80％）、てん菜（約100％）などで圧倒的なシェアを誇っています。また、酪農業では生乳生産量が全国の約55％を占め、牛乳・乳製品の安定供給において極めて重要な役割を果たしています。
水産業では、全国の漁獲量の約25％を占め、サケ・マス、ホタテ、カニ、昆布、イカなどの主要魚種で高いシェアを維持しています。特に、ホタテ貝の養殖業は世界的にも高い技術力を有し、国内生産量の約90％を占めています。これらの豊富な水産資源は、加工・流通業の発達にも寄与しており、高付加価値水産加工品の生産基地としての地位を確立しています。
林業では、全国森林面積の約22％を占める554万haの森林を有し、木材生産量は全国の約30％を占めています。広葉樹・針葉樹ともに豊富で、建築用材、合板・集成材、製紙原料などの供給基地として機能しています。近年では、木質バイオマス発電の燃料としての需要も拡大しており、森林資源の循環利用が進んでいます。
製造業では、食料品製造業が最大の比重を占め、乳製品、水産加工品、農産加工品の生産が中心となっています。明治、森永乳業、雪印メグミルクなどの大手乳業メーカーの主力工場が立地し、全国の牛乳・乳製品需要の重要な供給源となっています。また、製紙・パルプ工業も重要な位置を占め、王子製紙、日本製紙などの大手メーカーが大規模工場を運営しています。
観光業は近年急速に成長している分野で、年間観光入込客数は約5,400万人に達しています。雄大な自然景観（大雪山系、知床、阿寒・摩周）、豊富な温泉資源、高品質な食材、さっぽろ雪まつりなどのイベントが主要な観光資源となっています。特に、アジア系外国人観光客の誘客に成功しており、ニセコ地区のスキーリゾート、道東の自然観光などで国際的な評価を得ています。
エネルギー分野では、豊富な自然条件を活かした再生可能エネルギーの導入が全国をリードしており、風力発電設備容量は全国の約40％を占めています。太陽光発電、バイオマス発電、小水力発電も積極的に導入されており、将来的には本州への電力供給基地としての役割も期待されています。
地理的特徴として、本州との間に津軽海峡があり、独立性の高い経済圏を形成している一方、ロシア、韓国、中国などの近隣諸国との結びつきも強く、環日本海経済圏の一翼を担っています。新千歳空港は東アジアの航空ハブとしての機能を持ち、物流・人流の拠点として重要な役割を果たしています。
今後の課題と展望として、人口減少・高齢化への対応、農林水産業の担い手確保、観光業の通年化、再生可能エネルギーの更なる拡大、食品産業の高付加価値化、交通インフラの維持・整備などが重要な政策課題として位置づけられています。