【8月消費者物価動向】
アルゼンチン国家統計センサス局(INDEC)が9月10日に発表した8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、全国平均で前月比1.9%となった。これは7月と同水準で、4カ月連続で2%台を下回る安定した推移を示している。前年同月比(年率)は33.6%で、16カ月連続の減速を記録した。
【累計インフレ率と為替影響】
2025年1~8月の累計インフレ率は19.5%上昇となり、2020年同期以来の低水準を達成した。7~8月の2カ月間で対ドル公式為替レートが約10%下落したため、これがCPIの押し上げ要因となることが懸念されたが、物価の安定は持続している。項目別では、季節変動要因のある財・サービスがマイナス0.8%(前月は4.1%)、エネルギーや公共サービスなどの規制価格は2.7%(同2.3%)、コアインフレ率は2.0%(同1.5%)となった。
【費目別動向と消費冷え込み】
費目別では衣類・靴類が前月比0.3%減と2カ月連続の減少を記録した。現地エコノミストは、消費冷え込みと季節の変わり目の特価販売が価格上昇抑制要因としている。一方、外食・ホテル(3.4%)、酒類・たばこ(3.5%)、交通(3.6%)など平均上昇率を上回る費目も存在した。
【9月の見通しと政治的要因】
現地エコノミストは9月のCPI上昇率を2.0~2.4%と予測し、これまでと比べて加速する見通しを示している。主要因として、対ドル公式為替レートの継続的下落、9月7日のブエノスアイレス州議員選挙で正義党(ペロン党)がミレイ大統領率いる自由前進(LLA)を上回った政治的不透明感、10月26日の国会議員中間選挙を控えた先行き不安などが挙げられている。ただし、賃金伸び悩みと消費意欲冷え込み、輸入品増加による競争激化により、大幅な売価引き上げは現実的でないため、9月は2%台前半にとどまるとの見方が強い。