関東財務局は2025年7月29日、管内1都9県(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県、新潟県)の経済情勢報告を公表し、総括判断として「持ち直している」との評価を示しました。これは前月判断から変更はなく、地域経済の改善基調が継続していることを示しています。
関東地域は日本経済の中核を占める地域であり、GDP全体の約45%を占める経済規模を有しています。この広域経済圏における「持ち直し」の判断は、国内経済全体の回復にとって極めて重要な意味を持っています。
個人消費については「持ち直している」と評価され、小売売上高の改善や消費者マインドの回復が確認されています。東京都心部を中心とした百貨店売上高の回復、郊外型商業施設での売上増加、外食産業の業績改善などが消費回復の牽引役となっています。特に、コロナ禍で大きく落ち込んでいたサービス消費の回復が顕著で、旅行・宿泊、娯楽サービス、文化・スポーツ関連の支出が増加傾向にあります。
生産活動は「持ち直している」状況で、製造業を中心とした改善が継続しています。関東地域の製造業は高付加価値製品の生産が中心で、精密機械、電気機械、輸送用機械の生産水準が回復基調にあります。特に、半導体製造装置や工作機械などの設備投資関連製品の需要回復が生産を押し上げています。
雇用情勢は「改善している」と判断され、有効求人倍率の上昇と完全失業率の低下が継続しています。東京都を中心とした首都圏の労働市場は特に逼迫度が高く、有効求人倍率は1.5倍を超える水準を維持しています。IT・情報サービス業、専門サービス業、建設業での人手不足が深刻化しており、賃金上昇圧力も強まっています。
設備投資については「持ち直しの動きがみられる」状況で、企業の投資意欲の改善が確認されています。特に、デジタル化・DX関連投資、環境対応投資、生産性向上投資などが増加しており、首都圏の企業の競争力強化に向けた取り組みが活発化しています。
住宅建設は地域間で格差が見られ、都心部ではマンション需要が堅調に推移する一方、郊外部では建築費上昇の影響により新規着工が抑制される傾向にあります。
公共投資については、インフラ老朽化対応や防災・減災対策に関する投資が継続されており、2024年東京オリンピック・パラリンピック関連のインフラ整備効果も一定程度継続しています。
関東地域の経済構造的特徴として、サービス業の比重が極めて高く、特に情報通信業、金融業、専門サービス業の集積が著しいことが挙げられます。また、多国籍企業の日本本社機能や研究開発拠点の集積により、イノベーション創出の中心地としての役割も果たしています。
今後の見通しについては、デジタル化の進展、グリーン経済への転換、インバウンド需要の本格回復などが成長要因として期待される一方、人材確保の困難さ、インフラの老朽化、自然災害リスクなどが課題として認識されています。