九州財務局は、管内9県の経済構造の特徴と最近の特徴的な動向について詳細な分析を行い、全国財務局長会議での報告資料として取りまとめました。本報告では、九州地域の産業構造の特色と近年の構造変化、今後の成長可能性について包括的な検討が行われています。
九州地域の経済構造の最大の特徴は、農林水産業の比重が全国平均を上回る約3％となっていることです。特に、米、野菜、畜産、水産業において全国有数の生産量を誇り、食料供給基地としての役割を果たしています。農業産出額は全国の約20％を占め、特に宮崎県の畜産業、鹿児島県の農業・畜産業、熊本県の農業が全国トップクラスの規模を有しています。
製造業では、輸送用機械工業と電気機械工業が主要な柱となっています。輸送用機械工業では、トヨタ自動車九州、日産自動車九州工場、ダイハツ九州などの完成車メーカーに加え、多数の部品メーカーが立地し、九州全体で年間約150万台の自動車を生産しています。電気機械工業では、半導体・電子部品製造業の集積が著しく、ソニーセミコンダクタソリューションズ、ルネサスエレクトロニクス、東芝メモリなどの主要メーカーが生産拠点を構えています。
近年の特徴的な動向として、半導体産業の大型投資が相次いでいることが挙げられます。台湾のTSMCによる熊本工場の建設（総投資額約8,000億円）をはじめ、ソニーとTSMCの合弁による第2工場の建設計画も進行しており、これらの投資により九州は「シリコンアイランド」として再び注目を集めています。
観光業も九州経済の重要な柱となっており、温泉、自然景観、歴史・文化資源を活かした観光地が数多く存在しています。別府・湯布院、阿蘇、桜島、屋久島、長崎の歴史遺産などが国内外から多くの観光客を集めており、年間観光消費額は約3兆円規模に達しています。特に、韓国・台湾・中国からのインバウンド需要が高く、地理的近接性を活かした国際観光の拠点としての地位を確立しています。
エネルギー分野では、再生可能エネルギーの導入が全国をリードしており、太陽光発電、風力発電、地熱発電の設備容量が急速に拡大しています。特に、地熱発電では全国の約8割の設備が九州に集中しており、クリーンエネルギーの供給基地としての役割も担っています。
物流・貿易面では、アジア諸国との地理的近接性を活かし、博多港、長崎港、鹿児島港などがアジアゲートウェイとしての機能を強化しています。特に、博多港は釜山港との航路が充実しており、九州とアジアを結ぶ物流ハブとして重要な役割を果たしています。
今後の課題と成長可能性として、半導体産業の集積効果の最大化、農林水産業の6次産業化推進、観光業の質的向上、再生可能エネルギーの更なる拡大、人材確保・育成などが重要な政策課題として位置づけられています。