中東情勢緊迫化が世界経済と国際商品市場に及ぼした影響|第3章2026年前半の中国・アジア経済:内需の弱さとAI需要

|内閣府|元記事

概要

2026年前半の中国経済は、インフラ投資や電子機器・集積回路の輸出が支えとなった一方、消費、不動産、投資の弱さから景気が緩やかに減速した。中東情勢悪化によるエネルギー供給不安は、石炭中心のエネルギー構造や代替調達、政策対応により国内生産を大きく損なわなかった。政府は成長率目標を4.5~5%へ引き下げ、消費支援、設備更新、地方債発行、金融緩和を継続する。韓国・台湾はAI関連の半導体需要を背景に外需主導で回復・拡大し、インドネシア、タイ、インドも内需や資源輸出を背景に成長した。アジア全体では中東情勢の影響は一時的な景況感悪化にとどまり、AI需要が景気を下支えしている。

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要点

  • 中国では生産が消費・投資を上回り、過剰供給傾向が続いた。
  • 中東情勢の影響は、中国の国内生産とアジア景況感を大きく損なわなかった。
  • 韓国・台湾はAI関連需要による半導体・情報通信輸出が成長を主導した。
  • 中国は成長目標を下げ、消費拡大とリスク処理を政策の中心に据えた。

概要

中国の実質GDP成長率は2025年に前年比5.0%となり、政府が掲げた5%目標を達成した。しかし四半期ベースでは、2025年1-3月期の5.4%から10-12月期の4.5%へ低下し、景気は徐々に減速した。2026年1-3月期はインフラ投資に押し上げられて5.0%となったが、消費と不動産投資の弱さは残った。

中国経済の中心的な問題は、供給に比べて需要が弱いことである。小売、住宅、自動車、民間投資が力強さを欠く一方、鉱工業生産や輸出は比較的堅調であり、成長の内訳に偏りが生じている。GDPデフレーターも長期的な下落傾向からゼロ近傍に近づいたものの、内需の弱さを背景とする物価下落基調が転換したとはいえない。

その他アジアでは、AI関連の外需を受けた韓国・台湾と、内需を軸とするインド・インドネシアが成長を示した。タイも投資と電子機器輸出に支えられて持ち直したが、家計債務や消費の弱さが共通の制約となった。

中東情勢の緊迫化はエネルギー価格や輸入価格を押し上げたが、石油備蓄の放出、代替調達、各国の負担軽減策が実施された。アジアの製造業景況感は2026年3月に低下したものの、改善・悪化の境目である50を下回らず、経済全体が急激に悪化する状況は確認されなかった。

主要数値

中国の2025年実質GDP成長率
前年比5.0%
中国の2026年実質GDP成長率目標
4.5~5%
中国の2026年1-3月期実質GDP成長率
前年比5.0%
中国の2026年地方特別債発行枠
4.4兆元
中国の2026年超長期特別国債発行額
1.3兆元
消費財買換え支援の2026年予算
2,500億元
中国の2035年一人当たりGDP目標
2020年比で2倍
中国の研究開発費伸び率目標
年平均7%以上
韓国の2026年1-3月期実質GDP成長率
前期比年率7.5%
台湾の2026年1-3月期実質GDP成長率
前年比14.5%

影響

企業にとっては、AIサーバー、半導体、集積回路などへの需要拡大が輸出と設備投資の機会を広げる一方、中国の内需停滞、不動産不況、若年失業、価格下落は販売と投資判断の重荷となる。韓国・台湾では特定企業や半導体関連産業への依存が強まり、成長の恩恵が家計消費へ広がるかが課題となる。

地域経済では、エネルギー価格の上昇が物価と実質賃金を通じて消費を抑える可能性がある。インドでは減税による負担軽減、インドネシアでは資源輸出増加、タイでは旅行需要の変動が、それぞれ景気の持続性を左右する。アジア全体では供給網と代替調達先の確保が重要になる。

政策運営では、短期的な景気下支えと、中長期的な不動産・地方債務・過剰生産能力の処理を両立させる必要がある。中国のレアアース輸出管理や各国の資源政策は、電気自動車、家電、半導体などの国際的な生産計画にも影響し得る。

詳細

中国の消費財買換え支援は2024年から実施され、2026年は家電を冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコン、給湯器、PCの6品目に絞り、デジタル製品にスマートグラスを追加した。予算は2025年の3,000億元から2,500億元へ減額された。新エネルギー車では、購入税が2026年から5%となり、買換え補助金は車両価格の12%まで、上限2万元となった。

中国では2026年5月の小売総額が3年5か月ぶりにマイナスとなった。2026年5月の16~24歳失業率は15%超、25~29歳は7.2%であり、全体の都市部調査失業率は5.1%だった。不動産開発投資は2026年1-5月期累計で前年比16.2%減少し、固定資産投資全体も春以降に再び減速した。

中国の第15次五カ年計画は2026~2030年を対象とし、2035年までに一人当たりGDPを2020年比で2倍にする目標を示した。デジタル経済の中核産業の付加価値比率は2030年に12.5%、非化石エネルギー比率は25%、都市化率は71%を目標とする。計画では6分野で合計109件の重要プロジェクトを設定した。

韓国の実質GDP成長率は2025年に1.1%だったが、2026年1-3月期には前期比年率7.5%へ高まった。台湾は2025年10-12月期に前年比13.0%、2026年1-3月期に14.5%の成長となり、成長寄与の大部分を外需が占めた。インドネシアは同四半期に5.6%、タイは2%台半ばから後半、インドは前年比7.8%の成長率となった。

インドネシアの無料給食事業は政府予算の10%を超える規模となっている。インドではサービス輸出の比率が2011年度の30.9%から2025年度に48.8%へ上昇し、2026年3月にはガソリン物品税を1リットル当たり13ルピーから3ルピーへ、軽油を10ルピーからゼロルピーへ引き下げた。タイのEV3.0補助金は1台当たり最大15万バーツだったが、EV3.5では最大10万バーツへ引き下げられた。

中国のレアアース輸出管理は2025年4月に7種類を許可制とし、2026年1月には日本向けの軍民両用品への規制を発表した。2026年2月と6月には、輸出禁止対象の管理リストと審査厳格化対象の懸念リストへ、それぞれ20の企業・団体を追加した。レアアースはEVモーターや家電などに使われる中間財である。

中国の政策対応は、より積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策を維持し、消費財買換え、大規模設備更新、民間投資促進、不動産市場の安定化、地方政府債務リスクの解消を進める構成である。景気の急減速を防ぐ余地はあるが、内需回復には雇用、所得、不動産への複合的な対応が必要である。

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