令和8年度年次経済財政報告―成長型経済への本格的移行に向けた課題―第3章 物価環境の変化と成長資本の蓄積 — 第1節 現れ始めた企業行動の変化
概要
日本経済では長期にわたり企業の投資・人件費抑制と製造業の生産・輸出の伸び悩みが続いた。一方、2020年代には価格転嫁の進展と企業景況感の改善がみられる。持続的成長には、企業の成長期待を高め、予想物価上昇率を物価安定の目標である2%近傍へ安定させることが重要とされる。
要点
- バブル崩壊後、企業の設備投資と人件費は総じて抑制され、成長の鈍化につながったと分析する。
- 2000年から2024年にかけ、実質GDPは米国が約1.69倍、日本が約1.17倍となった。
- 2020年代には販売価格への転嫁が進み、企業の景況感と物価上昇予想に変化がみられる。
- 成長期待の上昇と予想物価上昇率の安定が、持続的で力強い成長の基盤と位置付けられる。
概要
我が国経済は2020年5月を谷に緩やかに回復してきたが、米国の関税措置を中心とする通商問題や中東情勢悪化を発端とした供給ショックなど、下押し圧力にさらされてきた。本章は、外的ショックがあっても持続成長できる経済の実力を高める観点から、企業行動を分析する。
主要数値
- 2000年比の2024年実質GDP(米国)
- 約1.69倍
- 2000年比の2024年実質GDP(日本)
- 約1.17倍
- 物価安定の目標
- 2%
影響
企業が投資を拡大して生産性・供給力を高めることは、日本経済全体の成長力の上昇に直結する。企業の収益力向上は賃上げ原資の確保を通じ、賃金上昇の持続と、賃金・物価が緩やかに上昇する経済メカニズムの強化につながる。
製造業の生産活動の伸び悩みは、関連する非製造業にも波及し、日本経済全体の成長を下押ししてきた可能性がある。反対に、製造業が力強さを取り戻せば、他産業への波及を通じた経済全体の活性化が期待される。
詳細
潜在成長率は1990年代初頭のバブル崩壊以降低下し、2000年代以降は1%台から0%台へ低下した。製造業では、鉱工業生産が2008年の世界金融危機直前をピークに横ばい又は小幅な減少傾向となり、生産能力も1990年代後半以降、緩やかに減少した。化学・鉄鋼・輸送用機械では生産縮小や海外生産の拡大がみられる一方、電子部品・デバイスは堅調ながら諸外国比で輸出の伸びが鈍い。
2022年頃から企業の1年後・3年後・5年後の予想物価上昇率はいずれも2%を上回ったが、見通しにはばらつきもある。官民が連携して成長分野へ積極投資できる環境・体制を構築し、安定的な内需の下で物価と賃金が相互に緩やかに上昇する環境を維持することが重要とされる。