農畜産業振興機構が欧州委員会による次期共通農業政策(CAP)の大幅な見直し提案について報告している。
欧州委員会は2028年以降の新たな共通農業政策において、気候変動対策の強化、生物多様性の保護、農業のデジタル化推進などを重点項目とした大幅な政策見直しを提案している。これは従来の生産性重視から持続可能性重視への転換を意味する。
環境・気候変動対策では、農業による温室効果ガス削減目標の設定、土壌炭素貯留の促進、再生可能エネルギーの農業利用拡大などが盛り込まれている。また、農薬使用量の削減と有機農業の拡大も重要な柱となっている。
デジタル化推進では、精密農業技術の普及、データ活用による生産最適化、デジタルプラットフォームを活用した流通改善などが提案されている。これにより、環境負荷を抑えつつ生産性を向上させることを目指している。
経済支援の仕組みでは、環境配慮型農業への支払いを拡充し、従来の面積支払いから成果支払いへのシフトが検討されている。また、小規模農家への支援強化と若手農業者の参入促進も重視されている。
貿易政策では、農産物輸出の促進と同時に、第三国からの輸入農産物に対するカーボンフットプリント基準の導入なども検討されている。これにより、EU域内農業の競争力確保を図っている。
加盟国間での調整や予算確保など、実現に向けた課題は多いが、EUの農業政策の方向性を示す重要な提案として注目される。