農畜産業振興機構調査情報部が2025年8月に公表した令和6年度甘味料およびでん粉の仕入動向等調査結果の第2弾として、食品メーカーのでん粉利用形態について詳細に分析したものです。
調査概要と回答状況
調査は令和6年12月~令和7年2月に実施され、でん粉使用食品製造事業者370社に調査票を送付し97社から回答(回収率26.2%)を得ました。回答企業の業種別構成は「菓子・パン」35社(36%)が最多で、次いで「畜産・水産食料品」23社(24%)、「調味料・糖類・油脂」11社(11%)となっています。対象となるでん粉は天然でん粉(ばれいしょ、かんしょ、コーンスターチ、タピオカ)と化工でん粉(デキストリン類、加工でん粉、物理処理でん粉)です。
利用用途と理由
天然でん粉の用途は「菓子・冷菓」40件が最多で、「水産練り製品・ハム・ソーセージ類」19件、「冷凍食品」14件と続きました。化工でん粉でも「菓子・冷菓」25件が突出して多く、「調味料・調味食品」9件、「乳製品」8件が続いています。使用理由では天然でん粉・化工でん粉ともに「食感付与」が最も多く(天然61件、化工47件)、次いで「とろみの付与・粘度調整」(天然25件、化工29件)となっています。
天然でん粉の仕入動向
令和6年度の仕入量は前年度比で減少傾向が顕著で、ばれいしょでん粉では増加22%に対し減少46%、かんしょでん粉では増加30%に対し減少40%となりました。減少理由として「必要量を供給してもらえなかった」が多数挙げられ、国産でん粉の供給不足が深刻化しています。一方、タピオカでん粉のみ増加傾向(増加53%、減少35%)を示し、「新商品開発」「他でん粉からの切り替え」等が理由として挙げられました。
今後の見込みでは、多くの品種で「横ばい」が最多回答となったものの、国産でん粉(ばれいしょ、かんしょ)では減少見込みが2-3割に達し、供給不安が継続する見通しです。
価格動向と満足度
令和6年10月時点の1kg当たり仕入価格は、ばれいしょでん粉で「200円以上240円未満」「240円以上」が各28%、かんしょでん粉で「120円以上160円未満」「240円以上」が各25%と、高価格帯にシフトしています。経年比較では全般的に価格上昇が継続し、特に国産でん粉で「240円以上」の高価格帯が増加傾向にあります。
原料確保への満足度調査では、国産でん粉の不満度が深刻で、かんしょでん粉では「やや不満」「不満」合計55%、ばれいしょでん粉でも46%に達しています。理由として「供給量減少や価格高騰」が大半を占めました。
国産でん粉の供給課題
令和6年産国産ばれいしょでん粉の供給量は前年産同程度の15.7万トンにとどまる見込みで、北海道ではばれいしょシストセンチュウ抵抗性品種への切り替えは完了したものの、気候変動の影響で生産が不安定な状況が続いています。かんしょでん粉は鹿児島県でサツマイモ基腐病の発生は減少したものの、他用途向け原料との競合により1万トンの供給に留まっています。
記事は、国産でん粉が独特の食感付与など代替困難な特性を持つことから、官民一体での抵抗性品種開発や病害対策、増産取り組みへの期待が大きく、機構として価格調整業務と情報発信を通じたでん粉需給安定への貢献を目指すと結論づけています。