株式会社日本バイオプラスチック研究所が2025年8月に執筆したバイオプラスチックの基礎知識と大阪・関西万博での活用状況について解説したものです。
バイオプラスチックの基本構造
バイオプラスチックは従来のプラスチックが抱える二つの課題解決のために開発され、「植物由来プラスチック」と「生分解性プラスチック」の総称です。石油由来プラスチック製造時の二酸化炭素排出問題に対しては、地表付近で循環する二酸化炭素を吸収した植物由来原料の使用により新たなCO2発生を抑制します。海洋プラスチックごみ問題については、一定条件下で微生物により最終的に水と二酸化炭素に分解する生分解性プラスチックが対応策となります。
ポリ乳酸の特徴と製造プロセス
代表的なバイオプラスチックであるポリ乳酸(PLA)は、トウモロコシ、キャッサバ、サトウキビなどの植物由来糖・でん粉を原料とし、植物由来かつ生分解性の両特性を持ちます。製造工程では、でん粉から酵素分解により得た糖分に乳酸菌を加えて発酵させ乳酸を生成(ヨーグルト製造と同工程)し、その後化学重合によりポリ乳酸を生成します。改良により耐熱性が向上し、現在はグラス、衣類、ノートパソコン筐体、シェールガスのフラッキング補修材、3Dプリンターフィラメントなど幅広い用途に使用されています。
大阪・関西万博での実用例
万博では複数の革新的なバイオプラスチック活用が展示されています。日本館では「双鶴」共創プロジェクトが三菱ケミカル社製バイオマスポリカーボネートDURABIOþに藻類を加えた材料で3Dプリンター製スツールを展示し、使用後は3部品に分解して再利用可能な設計となっています。株式会社カネカは全工程バイオによる製造で海洋でも生分解するGreen Planet®を展示しており、これは植物油を原料に微生物により生産され土中・海水中両方で生分解を実現しています。
大阪府ヘルスケアパビリオンでは、西日本中小企業の合作による巨大バイオプラスチック製パイプオルガンが8月19-25日に展示され、パイプには帝人のバイオポリカパンライト®(長さ最大1630mm、直径101mm、53本)、鍵盤には三菱ケミカルのDURABIO™、歌口にはポリ乳酸3Dプリンター製品が使用されています。また、万博スタッフのインナーシャツには株式会社ピエクレックス製の「電気の繊維」(ポリ乳酸の圧電性を活用した抗菌繊維)が採用され、使用済み製品は堆肥化される「P-FACTS」システムとして運用されています。
記事は、目的に応じた材料選択の重要性を指摘し、生分解目的なら100%生分解性材料、温室効果ガス削減目的なら植物由来50%配合でも有効であり、バランスの取れた材料選択と利用拡大が必要と結論づけています。