国土交通省が実施した令和6年度建設業構造実態調査の結果で、建設業界の経営実態と収益構造の変化について詳細な分析を行った重要な産業統計です。本調査は、全国の建設業許可業者約47万社のうち約15,000社を対象とした標本調査で、建設業界の構造変化と経営課題を包括的に把握することを目的としています。
経営収益性の分析では、建設業全体の売上高経常利益率が5.8%となり、前回調査(令和3年度)の6.4%から0.6ポイント低下しました。これは、人件費や資材費の上昇に対して、受注価格への転嫁が十分に進んでいないことが主因とされています。業種別では、土木工事業が6.2%(前回6.8%)、建築工事業が5.4%(前回6.1%)、設備工事業が5.9%(前回6.5%)と、いずれも利益率の低下が確認されています。
企業規模別の収益格差が拡大しており、資本金1億円以上の大手企業では平均7.3%の利益率を維持している一方、資本金1,000万円未満の中小企業では4.8%に留まっています。特に、従業員20人未満の小規模事業者では3.9%と低水準で、規模の経済効果の違いが明確に現れています。
人材確保の状況について、建設業界全体で約34万人の人手不足が発生しており、特に技能労働者の不足が深刻化しています。年齢構成では、55歳以上の高齢労働者が全体の約38%を占める一方、29歳以下の若年労働者は約12%に留まっており、急速な高齢化が進行しています。職種別の不足率では、型枠工(不足率47%)、左官工(45%)、とび工(42%)、鉄筋工(40%)など、専門技能を要する職種で特に深刻な人手不足となっています。
労働条件の改善状況では、週休2日制を導入している企業は全体の68%となり、前回調査の59%から9ポイント改善しました。年間総実労働時間は平均2,058時間と、前回の2,124時間から66時間短縮されており、働き方改革の効果が現れています。ただし、全産業平均の1,893時間と比較すると依然として長時間労働の傾向が残っています。
資材価格の影響については、調査対象企業の約78%が「資材価格上昇の影響を受けている」と回答しています。特に影響が大きい資材として、鉄筋・鉄骨(89%)、セメント・生コンクリート(82%)、木材(76%)、燃料費(74%)が挙げられています。価格転嫁の状況では、「完全に転嫁できている」企業は28%に留まり、「一部転嫁」が54%、「転嫁できていない」が18%となっており、中小企業ほど価格転嫁が困難な状況にあります。