総務省統計局が策定した消費者物価指数（CPI）の2025年基準改定計画案で、経済構造の変化と消費パターンの多様化に対応した指数算定方法の見直しについて詳細な改定方針を示した重要な統計制度改革文書です。本改定は、5年ごとに実施される基準改定として、2020年国勢調査と家計調査の結果を反映し、より実態に即した物価動向の把握を目指しています。
改定の背景として、デジタル化の進展、サービス経済化の進行、新型コロナウイルス感染症による消費行動の変化、高齢化の進展等により、家計の消費構造が大きく変化していることが挙げられます。また、インターネット通販の普及、定額制サービスの拡大、シェアリングエコノミーの浸透等、従来の統計では捕捉困難な新しい消費形態への対応が急務となっています。
品目構成の見直しでは、現行の522品目から約540品目に拡大し、デジタル関連サービス、健康・医療関連、環境配慮商品等の新分野を追加します。具体的な新設品目として、動画配信サービス、音楽配信サービス、電子書籍、オンライン学習サービス、宅配ボックス利用料、電気自動車充電料金、スマートフォン決済手数料等が含まれます。一方、利用実態が大幅に減少した品目（公衆電話料金、ファックス用紙等）は削除されます。
ウエイト（重要度）の更新では、2020年家計調査の結果を基に各品目の消費支出に占める割合を見直します。主な変化として、情報通信費のウエイトが約1.2ポイント上昇し、交通費が約0.8ポイント低下することが予想されています。また、テレワークの普及により光熱費や通信費の家計負担が増加する一方、外食費や交通費は減少傾向にあることが反映されます。
価格調査方法の改善では、インターネット価格調査の拡充、POS（販売時点情報管理）データの活用拡大、ビッグデータの試験的導入等により、より迅速で正確な価格情報の収集を実現します。特に、家電製品、衣料品、日用品等では、実店舗調査に加えてインターネット価格も調査対象に含め、消費者の実際の購買行動により近い価格動向を把握します。