日本銀行新潟支店が2025年7月に公表した新潟県の金融経済動向について、原材料高の影響を受けながらも持ち直しを続ける県内経済の現状を詳細に分析したものです。
主要なポイント
1. 景気の総合判断と回復の特徴
- 新潟県内景気は「原材料高の影響などを受けつつも、持ち直している」との基調判断
- 設備投資の増加と個人消費の回復が景気を牽引、一方で生産は横ばい圏内
- 輸出は電気機械の持ち直しあるも全体では横ばい、原材料コスト上昇が重石
- 業種間・部門間で回復度合いに差があり、二極化傾向が鮮明に
2. 設備投資の積極化と将来への布石
- 2025年度設備投資計画(短観・全産業)は前年比6.9%増と高い伸び
- 能力増強投資に加え、人手不足対応の省力化・自動化投資が活発
- DX関連投資、脱炭素関連投資も企業規模を問わず拡大傾向
- 建築着工床面積(非居住用)は5月に前年比14.3%減も、計画ベースでは堅調
- 中小企業も生産性向上投資に前向き、各種補助金の活用も進む
3. 個人消費の回復と消費行動の変化
- 百貨店・スーパー販売額は前年比4.5%増(5月)、食料品が堅調に推移
- 衣料品は持ち直しの動きに一服感、高額品への慎重姿勢が継続
- 乗用車新車登録は前年比1.4%増(5月)と緩やかに持ち直し
- 家電販売は前年比2.0%増(5月)も弱めの動き、買い替えサイクルの長期化
- 旅行取扱高は回復、客室稼働率42.7%(4月)と観光需要が徐々に正常化
4. 生産活動の業種別明暗
- 食料品(米菓・練り製品)は堅調推移、地域ブランド力と安定需要が下支え
- 電子部品・デバイスは緩やかに持ち直し、在庫調整の進展が寄与
- 一般機械(建設機械・工作機械・産業機械)は回復の動きに一服感
- 金属製品(作業工具)・鉄鋼は弱い動き、海外需要減退と原材料高が影響
- 輸送用機械(自動車関連部品)は弱めの動き、半導体不足の影響残る
- 繊維は低調な生産継続、構造的な需要減少に直面
5. 雇用・所得環境と企業収益
- 有効求人倍率1.43倍(5月)と高水準維持も前月比低下、求人の一服感
- 雇用者所得は改善の動き、春闘での賃上げ効果が県内にも波及
- 2024年度経常利益は前年比12.3%増益、価格転嫁の進展が寄与
- 2025年度は同11.3%減益計画、原材料高継続と競争激化を織り込む
- 中小企業の収益改善は大企業に比べ遅れ、コスト吸収力の差が顕在化
6. 金融環境と今後の注視点
- 実質預金は前年比0.5%増、個人預金の積み上がりが継続
- 貸出金は同0.8%減、大企業の資金需要一巡と社債シフトが影響
- 企業倒産は件数10件と前年を下回るも、負債総額は増加
- 原材料価格の高止まりと円安進行による輸入コスト上昇が最大のリスク
- 米中貿易摩擦の再燃、中国経済の減速など外需環境の不透明感も懸念材料
記事は、新潟県経済が内需主導で持ち直しを続けているものの、原材料高の長期化と外需の弱さが製造業を中心に重石となっており、構造的な競争力強化が急務であると結論づけています。